湯治場にチャーリー現る。
万病に効く霊泉に酒が混入したからさあ大変!

チャップリンの
霊泉

THE CURE

1917  アメリカ

29分  モノクロ   サイレント



<<解説>>

チャップリンの短編も中期の作品になってくると、発想はギャグが最優先であるのは変わらないが、単純にドタバタを描いていた最初期とくらべ、ストーリーの文脈で笑いをとるように努めるようなった。撮影技法も洗練されてきて、本作では適所に移動ショットを用いるともに、役者の表情を捉えるためにクローズアップを多用している。芝居も重視するようになってきたようだ。
さて、今回のチャーリーはジャケット姿で登場。そのせいか普段より若干、品が良い。女性を追いまわすのではなく、悪漢から助けたりするところが、後期のチャーリー像を彷彿とさせる。笑い所は、マッサージのつもりがいつのまにかレスリングになってしまう場面。勢い余って関係のない客と戦い始めてしまうところも、チッャプリンらしい笑いだ。この場面では彼の珍しい水着姿が見られる。オチもいつもならば、酔っ払ったチャーリーが暴れるところなのだが、ここではそれをアベコベにし、他のみんなが酔っ払っていて、チャーリーだけがシラフという状況で笑いを作ってしまうところも見事。結局はチャーリー自身も酔っ払ってしまうのだが、彼が目を回したことを表現するための早回しも画期的だ。



<<ストーリー>>

健康の泉、霊泉の湧く湯治場にやってきたチャーリー。さっそく、慣れない回転ドアのところで、通風の治療にやって来た男と一悶着を起こす。酒のビンがぎっしりつまったスーツケースを部屋に運んだ後、源泉のところへ。ところが、チャーリーの興味は霊泉よりも隣りに座った美女のほう。従業員にすすめられ、しぶしぶ霊泉を口にしたチャーリーはその不味さに飛び上がり、部屋に戻って酒ビンをラッパ飲み。
一方、サロンでは、さっきの美女が通風男に色目を使われ困っていた。そこに現れたチャーリーは美女を助けるが、通風男をからかっていたところをここの主に見つかってしまう。チャーリーはつまみ出されそうになるが、美女に庇われるのだった。美女に免じて、チャーリーをマッサージ室に案内した主は、チャーリーの部屋で酔いつぶれている従業員を発見。すぐに酒を捨てるように命じた。従業員はスーツケースの酒ビンを窓から放り出すが、それらはすべて源泉の中へ。患者たちは食後の一杯のつもりで、酒の入った霊泉を飲んでしまった……。



<<キャスト>>

[酔っ払い]
チャーリー・チャップリン (チャールズ・チャップリン)

[若い娘]
エドナ・パーヴィアンス

[通風持ち]
エリック・キャンベル

[湯治場の従業員]
ジョン・ランド

[湯治場の従業員]
アルバート・オースティン

[湯治場の主]
フランク・J・コールマン

[湯治場の従業員]
ジェイムズ・T・ケリー

[マッサージ師]
ヘンリー・バーグマン

[女性]
ジャネット・ミラー・サリー



<<スタッフ>>

[脚本/監督]
チャールズ・チャップリン

[撮影]
ロリー・トザロー



<<プロダクション>>

[製作]
ミューチュアル・フィルム