三手に別れしまった旅の仲間たち。
その頃、冥王サウロンは、人間を滅ぼすべく大量の兵を送り出していた。
「指輪物語」の映画化第二部。
ロード・オブ・ザ・リング
二つの塔
THE LORD OF THE RINGS
THE TWO TOWERS
2002
アメリカ/ニュージーランド
179分
カラー
<<解説>>
「あの前作が序章に過ぎなかったなんて!」 続編の煽り文句として常套句のこの言葉が、まったく大げさに聞こえない大作が誕生してしまった。確かに前作は、文字通り、壮大が旅がはじまるまでの序章を描いた作品であった。だが、これまでのアドベンチャーとは段違いのスケールの映像を目の当たりにした誰しもが、十二分に満足し、もうこれが限界なのだと思ってしまったことだろう。そんなネガティブな期待を大きく裏切り、それ以上のものに到達した本作を観せられた瞬間、我々観客は、唖然として先の常套句を呟いてしまうに違いない。
さて、主人公たちのフロド(ウッド)たちの旅は順風満帆とはいかず、はじまった矢先に仲間がバラバラになってしまった。第二部は、三手に分かれた旅の仲間たちの旅と冒険、出会いと別れを平行して描いていく。様々な事件を盛り込んだ見応えのある物語は、三部作の中心を支えるのにふさわしい充実の内容だ。まず、強烈な印象を与えるのは、指輪を密かに狙うCGキャラのゴラム。前作でも少しだけ触れられているが、ついに全貌が明らかになったその姿は、不気味ではあるが、どこか哀愁と愛嬌のある仕草が良く、まさに本作の顔といった活躍を見せる。謎めいたゴラムの登場に加え、フロドさえも指輪の魔力にひかれていく様子が描かれ、欲望をテーマとしたドラマが複雑になっていく。その一方で、ついに動き出した冥王サウロンと人間たちの壮絶な戦いが描かれていて、これが後半のハイライトとなっている。前作にも増した劇的な表現の連続で、負け戦を前にした王の悲壮感を、ケレン味の効いた詩的な台詞で盛り上げていく。感情の高揚がピークに達したところで、ついに始まるクライマックスの戦闘シーンは、前人未到のスケール。ここがこの映画の最もスゴイところなのだが、技術的な都合での省略を許さず、見せたいと思うところをすべて見せきってしまうのだ。砦に群がっていく無数の敵と、それを迎え撃つ人間たちの戦いの凄まじさは、観客の想像を軽く越えていて、筆舌に尽くしがたい。ラストは、物語のまとめ役のサム(アスティン)がおいしいところを持ってく。
<<ストーリー>>
旅の仲間と別れ、滅びの山モルドールを目指していたフロドとサムは、指輪を狙う醜い小人に襲われた。フロドたちに取り押さえられた小人は、五百年余り前に指輪を拾ったホビット、ゴラムの変わり果てた姿で、旧名をスメアゴルといった。フロドたちは、ゴラムを道案内に、モルドールに向けて再び歩き出した。だが、ゴラム=スメアゴルは、フロドの持つ指輪を密かに狙っていた。
一方、メリーとピピンを連れ去ったウルクハイを追っていたアラゴルン、レゴラス、ギムリの三人は、エオメル率いるローハン王国の兵士たちと遭遇した。ローハンでは、サルマンに乗り移られて敵味方の区別のつかなくなった国王セオデンが、側近のグリマの言いなりになっていた。セオデンから国を追放されたエオメルたちは、北へ向かっていて、その途中でウルクハイを皆殺していた。エオメルは生存者はいなかったと言うが、アラゴルンたちはメリーたちの生存を信じていた。
ローハンへ向かっていたアラゴルンの前に、洞窟の中で死んだと思われていたガンダルフが現れた。魔物との壮絶な戦いに勝利をおさめ、力尽きた灰色のガンダルフは、いったんは黄泉の国に向かったが、白のガンダルフとして復活したのだ。アラゴルンたちと合流したガンダルフは、ローハンの城に到着すると、セオデンの中からサルマンを追い出し、正気を取り戻させた。ホビットの村からやって来た使いから、村がサルマンのオークたちに襲撃されたことを知らされセオデンは、ローハンにも侵略の危機が迫っていることに気付いた。だが、エオメルたちを呼び戻すには間に合わないため、民をヘルム峡谷の砦へ移動させることにした。
フロド、サム、ゴラムの三人は、死者の沼地を経て、ついに、モルドールに通じる黒の門にたどり着いた。だか、門はウルクハイの厳重な警備が敷かれていて、侵入する余地がなかった。ゴラムの知る別の道へ向かっている途中、フロドたちは、サウロンの兵士たちの移動に遭遇した。ローハンから追放されたグリマが、サルマン側につき、ヘルム峡谷の情報をもらしていたのだ。と、その時、サウロンの兵士たちに弓矢を放つ一団がいた。彼らは、ボロミアの弟、ゴンドールの大将ファラミアの率いる戦士たちだった。
城からヘルム峡谷への移動中、アラゴルンは、セオデンの姪エオウィンの中に、エルロンド卿の館で別れてたアルウェンの面影を見て、物思いにふけっていた。その時、ローハンの民をオークたちが襲撃した。戦士たちはオークを撃退するが、アラゴルンは戦闘の最中に崖から転落し、姿を消してしまった。やがて、ローハンの民は砦に到着した。その頃、ガラドリエルから、指輪が人間の手に渡ることを予言されたエルロンド卿は、この定めに従うべきか、人間を助けるべきか悩んでいた。無事に人間が救われ、アラゴルンが王にとなったとしても、エオウィンには早すぎる夫の死という哀しい運命が待っているからだ。
崖下の川で気を失っていたアラゴルンは、エオウィンの幻により目覚めさせれ、馬の背に乗り砦に向かった。アラゴルンが砦に着いた頃、既にサルマンは、人間を皆殺しにするために数万の兵を砦へ向けて出発させていた。アイゼンガルドからはサルマンの兵が、そして、モルドールからサウロンの兵がやってくる。数万の敵に対し、味方は年寄りと子供が三百人。セオデンは誇りある死を決意したが、夜になると、エルフからハルディア率いる援軍が駆けつけた。ついに、ウルクハイの軍団が砦の前にやってきた。城壁を挟んでにらみ合う敵と味方。戦いの火蓋は人間側の放った一本の弓矢によって切って落とされた……。
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