第二次大戦前夜、ファシストの式典のためにほぼ無人となったアパート。
そこで出会った主婦と孤独な男の意外な一日を描く心理劇。
特別な一日
UNA GIORNATA PARTICOLARE
1977
イタリア/カナダ
110分
カラー
<<解説>>
長々としたナチス・ドイツの記録映像から始まり、本編も、主婦と反ファシストの男が二人で過ごした一日を描いた物語だといえば、政治的な作品と思われるかもしれない。実際のところ、ファシズムの台頭という背景がなければ成り立たない話であるが、それはあくまで、心理劇の舞台となる特殊な状況を作り出すための一つの手段でしかない。また、この作品は、必要な状況を作るために、始まって早々に大胆なことに打って出る。舞台となるアパートから住民のほとんどを外へ出してしまうのだ。ミステリーのような鮮やかさで限定された空間が完成し、いよいよ、マストロヤンニとローレンの息詰まるような駆け引きが始まる。
無人のアパートで出会った倦怠期の主婦と孤独な男。この状況ならば、成るようにしか成らないだろう。しかし、そうはいかない。男が胸に抱えるある秘密が事態を複雑にし、狂おしい展開となって行くのだ。第二次大戦前後のイタリアのというのは、同盟国の日本でもそうであったように、「産めよ増やせよ」がスローガンだったようだ。七子で報奨金が支給され、単身者には税金が課せられる(これはジョークか?)という雰囲気の時代だったということは、物語の背景として踏まえておくべきだろう。また、イタリアはカトリックの国であるということも付け加えたほうがいいかもしれない。
<<ストーリー>>
第二次大戦前夜、ムッソリーニ支配下のローマ。ドイツのヒトラー総統来訪の式典が広場で開かれるその日の朝、いち早く目覚めた主婦のアントニエッタ・ティベリは、夫のエマヌエールと六人の子供たち、ウンベルト、ファビオ、アルナルド、ロマーナ、リットリオ、マリア・ルイを起こした。夫と子供達を広場へ送り出したアントニッタは、一息つく間もなく後片付けに取り掛かった。ティベリ一家が暮らす大きなアパートの住民たちはほとんどが広場に出かけてしまった。だが、やるべき家事がたくさんあったアントニッタは、家に残ることになった。建物にはほかに人のいる気配がなかった。アントニエッタは、ここ最近、毎日繰り返す家事にうんざりしはじめていた。
アントニエッタが九官鳥のロズムンダに餌をやろうとした時、事件が起こった。開け放していた窓からロズムンダが飛んでいってしまったのだ。ロズムンダが中庭をはさんだ向こう側の六階の部屋の張り出しに止まったのを見たアントニッタは、住人が在宅中であるのを確認し、その部屋に向かった。六階の部屋の住民ガブリエーリは、ラジオのアナウンサーだったが、ある事情でクビになり、現在は宛名書きの仕事でどうにか生計をたてていた。人生に絶望し、思いつめたガブリエーリがピストルに目をやった時、玄関のベルがなった。アントニエッタを部屋に入れたガブリエーリは、彼女から事情を聞いて、窓の外にいたロズムンダを捕獲した。それで用事は済んだが、ガブリエーリは、アントニエッタを引き止め、彼女が目を止めた「三銃士」の小説を借りていくよう強く勧めた。ガブリエーリは、自殺から救ってくれたアントニエッタと会った今日が、特別な日になることを確信していた。
アントニエッタは、ガブリエーリの強引な態度に驚いて、あわてて部屋を飛び出してしまった。だが、彼女は家に戻っても、あの風変わりな男のことが心にひっかかっていた。しばらくすると、玄関のベルが鳴った。アントニエッタは、ドア越しに見えたガブリエーリの姿に動揺した。ガブリエーリはわざわざ「三銃士」を持ってきてくれたのだ。アントニエッタは、コーヒーが飲みたい言うガブリエーリを部屋に入れた。ガブリエーリが豆を挽いている間に訪ねてきたアパートの管理人は、ガブリエーリの姿を見つけ、それとなく警告した。
アントニエッタとガブリエーリは、二人でコーヒーを飲んだ。ラジオからは広場の式典の実況が流れてきていた。アントニエッタは、ガブリエーリがアナウンサーであることを知るが、彼が仕事について語ることはなかった。屋上の鍵を持って戻ってきた管理人は、まだガブリエーリが居ることを知ると、彼のことを“反ファシスト”と言って非難した。アントニエッタは、管理人の言葉をガブリエーリに伝えなかったが、彼を疑いの目を向けた……。
<<キャスト>>
ソフィア・ローレン
マルチェロ・マストロヤンニ
ジョン・ヴァーノン
フランソワーズ・ベルド
ニコレ・マグニー
パトリツィア・バッソ
ティツィアーノ・デ・ペルシオ
マウリツィオ・ディ・パオラントニオ
アントニオ・ガリバルディ
ヴィットリオ・グェッリエリ
アレサンドラ・ムッソリーニ
<<スタッフ>>
[原案/脚本]
ルッジェロ・マッカリ
エットレ・スコーラ
[脚本協力]
マウリツィオ・コンスタンツォ
[撮影]
パスカリーノ・デ・サンティス
[音楽]
アルマンド・トロヴァヨーリ
(アルマンド・トロヴァヨーリ)
[美術/装置]
ルチアーノ・リッチェリ
[衣装]
エンリコ・サッバティーニ
[助監督]
シルヴィオ・フェッリ
クロード・フォウニエ
[編集]
ライモンド・クロチアーニ
[製作担当]
ジョルジオ・スコットン
[製作]
カルロ・ポンティ
[監督]
エットレ・スコーラ
[提供]
カルロ・ポンティ