麻薬課から風俗取締課に転属してきたはみだし刑事が
高級娼婦を監視中に起こった殺人事件を追う。
犯罪サスペンス。
シャーキーズ・マシーン
SHARKY'S MACHINE
1981
アメリカ
122分
カラー
<<解説>>
70年代のアクションスター、バート・レイノルズの『ゲイター』、『ジ・エンド』に続く監督3作目。俳優が主演と監督を兼任した映画で、安心して観れるものというと、イーストウッドの作品くらいしかない。しかし、ごくたまに、本人の思い入れが強すぎるあまりに、愛すべき珍品に化けるものもあって、まさに本作がそれである。
麻薬や売春といった陰惨な事件を題材としたハードな刑事もの、というのが本来のコンセプトなのだろう。しかし、実際の物語は、実になごやかなムードで進行していく。東洋思想にかぶれる同僚や、仲間外れにされる上司などのキャラも個性的。刑事同士の無意味な会話は、刑事ものとは思えないほど緊張感もなくだらだらとしているが、レイノルズのこだわりが感じられる味のある場面となっている。しばらくは事件らしい事件も起こらず、後半のロマンスの伏線となる重要な場面が続く。主人公が監視対象の娼婦に入れ込んでいく様が描かれるのだが、必要以上にじっくり、ねっとりとし、さらに、あまりに主観が強いために、本当にノゾキをしているような妖しさのただよう場面となっている。さらに、それを推し進めた主人公の生家のパートでは、自己陶酔の世界に片足踏み込んでいて、さすがに困惑してしまうが、クライマックスのアクションシーンで面白さが爆発する。殺し屋に扮するのは、西部劇の悪役などが多い怪優ヘンリー・シルヴァ。彼の突き抜けた演技は超必見で、麻薬中毒で幼児的な上、顔面をひきつらせながら出し抜けに奇声を上げてみたりと、前半のなごやかさとからは想像できないほどのキレっぷり。刑事側との好対照となって、映画に異常な盛り上がりを与えている。
結果として、メリハリの利き方が尋常ではない作品となったが、むしろその自由なテンションを評価したい。職業監督が撮った作品にはありえない、めったに観られない珍作だ。
<<ストーリー>>
麻薬課の鬼刑事シャーキーは、麻薬のおとり捜査最中、同僚のスマイリーに声をかけられ、売人に逃げられてしまう。売人を射殺するため、市民を巻き込んでの大騒動を起こしたシャーキーは、その責任をとり、長年の上司シャークのもとを離れ、署の掃き溜めとなっている風俗取締課に転属させることになった。新しい課では、シャーキーが新米の頃に世話になった、課長のフリスコと九年振りに顔を合わせることとなった。
シャーキーの転属の矢先、囮捜査中のCIAの捜査官タッド・ローパが、東洋人の娼婦と共に射殺される事件が発生した。一方、風俗取締課では、シャーキーが町で検挙してきた娼婦が、課内にいたポン引きのパーシーを見つけ、彼が一晩1000ドルの高級娼婦を扱っていることを暴露した。シャーキーたちは、パーシーの手帳の暗号を解き、そこから浮かび上がった7つの電話番号に対して盗聴を実施。そのうちの一人の顧客は、知事候補のドナルド・ホチキンスだった。
年金受領を間近に控えるフリスコは、面倒な事件に巻き込まれることを恐れて反対したが、シャーキーは、同僚のアーチとパパと共に捜査をすることを決め、人事課に属する親友のノッシュもそれに引き込んだ。シャーキーたち四人は、超高級高層アパートに暮らす娼婦ドミノやティファニーを、交代で監視し続けた。やがて、シャーキーたちは、ドミノとホチキンスの関係の証拠を押さえ、ドミノたち娼婦の元締めであるビクターの存在も掴んだ。だがその頃、シャーキーは、スコープ越しのドミノに強い思い入れを抱くようになっていった。
ダンサーを夢見るドミノは、ビクターにこの仕事をやめたいと常々訴えていた。そんなある日のこと、ドミノの部屋に訪問者があった。部屋を監視していたシャーキーが危険を察知した時には、訪問者が発砲して玄関のドアが吹っ飛んでいた。シャーキーは急いでビルに駆けつけるが、ドミノは無残な姿と成り果て、殺し屋にも逃げられてしまった。シャーキーたちは、殺人課に任せるべきだと主張するフリスコを無視し、風俗取締課、人事課、検視課という奇妙な編成で殺人の捜査を開始した。
殺し屋は、シャーキーの隣の部屋でドミノを監視していたのだった。その部屋はすでにもぬけの殻だったが、そこに残された“ディー”(ヘロイン)、そして、指紋が手がかりとなった。アーチは、情報屋のキッティン・ホームズを脅し、ヘロインの線から洗うことに。だが、何かをしゃべりかけたキッティンは、二人組みのカンフー使いに抹殺されてしまった。一方、指紋は、ビリー・スコアことカルロ・スコレッリというイタリア人のものだということが判明した。カルロは、兄のアルバートと組み、少女を誘拐してはヤクやレイプで娼婦に仕立てていた極悪人だった……。
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