火山噴火の恐怖をＳＦＸを駆使して描く、災害パニック・アクション。
ダンテズ・ピーク
DANTE'S PEAK
1997
アメリカ
109分
カラー
<<解説>>
火山活動の恐怖を真っ向から描いた正統派災害パニック映画。実際に起こりうるというより、今まさに世界のどこかで起こりつつある現実の恐怖を描くため、下手なはったりや嘘はかませない。いかにリアルな災害を描くかが本作のモチベーションとなっている。そして完成した映像は、学術的なシミュレーションとしても通用するのでは、と思ってしまうほどの仕上がり。デジタル３Ｄ映像による噴煙や溶岩の再現は見事としか言いようがなく、火砕流が建物を飲み込んでいく場面はすごい迫力だ。ビジュアル面だけでなく、パニックに陥る人間ドラマの方も細かく描かれている。緊急時の人間の行動パターンをよく研究しているようで、災害直後の街の様子などは、下手なホラーよりも怖い地獄絵図となっている。主人公を演じるのはピアース・ブロスナン。「００７」ではあくまでスマートに活躍している彼が、自然相手に火山灰まみれになって奮闘する姿に惚れ直すはず。彼と行動を共にするヒロインを、「ターミネーター」シリーズのリンダ・ハミルトンが演じるという意外なキャスティングも見もの。多少、子供と動物に頼り過ぎているところは評価の別れるところだが、超リアルな災害シーンとえげつない人間ドラマの両面に関しては、災害パニック映画の最高峰といえよう。トミー・リー・ジョーンズ主演の『ボルケーノ』との競作となった。
<<ストーリー>>
アメリカ北西部の静かな田舎町ダンテズ・ピーク。死火山だと思われていたその山に、なぜか異変の兆候が現れていた。アメリカ地質学調査所の地質学者ハリーは、上司のポールの命令でダンテズ・ピークの調査に向かった。ちょうどその頃、町では、「人口二万以下の町で二番に住み良い町」に選ばれた栄誉の表彰式が開かれているところだった。ハリーは、市長のレイチェルと会い、彼女に山まで案内してもらうことになった。レイチェルの子供のグラハムとローレンと一緒に、彼らの祖母のルースが暮らしている湖畔のロッジに寄り道をした時、ハリーは、付近の温泉で死亡している若い男女を発見した。
休火山であるダンテズ・ピークの目覚めが近いと確信したハリーは、レイチェルに臨時の集会を開かせ、避難勧告を出した。だが、企業の工場を誘致したばかりした今、噴火騒動を起こされるのは、住民にとって迷惑な話である。ハリーに呼ばれ、町に駆けつけたポールは、ハリーの独断的な決定を知るや、避難勧告を撤回してしまった。焦って避難した後に噴火が起こらなかった場合の失態を恐れたポールは、ハリーに「君は政治を知らない」と批判した。だが、四年前、噴火のタイミングを読み違え、火山で恋人を失ったハリーに、同じ失敗は繰り返すことは出来なかった。
翌日から、ハリーは、調査所の仲間たちとダンテズ・ピークの調査を行うことになった。ハリーが同僚のテリーと、火口に探査機“スパイダーレック”を設置しに向かったとき、はじめの地震が発生した。震源が近いことを体で感じたハリーは、ポールに、噴火の危険性を示唆した。だが、ポールだけでなく、信頼していた同僚のグレイグたちまでも、ハリーの勘を信じようとしなかった。
火山活動の証拠を得るため、ポールの許しを得て、四十八時間だけ様子を見ることになった。だが、一週間たっても、地震計はフラットを保ちつづけ、調査隊も町から引き上げることになった。町を去る前夜、ハリーは、親しくなったレイチェルの家で、最後の夜を過ごしていた。子供を寝かしつけたレイチェルが、一息つこうと水道の蛇口をひねると、赤茶けた水があふれ出た。レイチェルの案内で水源に行ったハリーは、火山活動特有の硫黄が染み出す現象を確認した。ハリーは、ポールに水道の証拠を見せ、避難勧告の必要を正式に要請した。
翌日、ハリーとレイチェルは、町のホールに住民を集め、火山活動の状況と避難について説明を行うことになった。説明会の最中に二度目の地震が発生した。パニックに陥った住民は、ハリーたちの制止にも耳を貸さず、ホールの出口に殺到した。人の波に押し流されるように、ホールの外に出たハリーとレイチェルは、ダンテズ・ピークの頂上から立ち上る噴煙を目にした。「遅かったか」とハリーつぶやいた。噴火するのは、時間の問題だった。噴煙を目にして恐怖にかられた住民たちで、町は大混乱に陥っていた。住民たちは、車で町から脱出しようとするが、町の外へ通じる唯一の道は、燃え盛る溶岩により崩壊した。
ハリーとレイチェルは、家で留守番をしているグラハムとローレンを迎えに行くが、車と共に彼らの姿は消えていた。グラハムとローレンは、噴火の危険も知りながらも亡き夫との思い出のロッジに留まるルースを連れに、出かけてしまっていたのだ。ハリーとレイチェルは、子供たちを追って、ルースのロッジに向かった。その頃、ロッジは、山から流れ出した溶岩に囲まれつつあった……。
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