ハリウッドを舞台に、スランプに陥った脚本家が
創造の女神“ミューズ”に振り回される様子を描くコメディ。
ハリウッド・ミューズ
THE MUSE
1999
アメリカ
97分
カラー
<<解説>>
コメディアンで俳優のA・ブルックスの監督・主演作。もしも、ハリウッドに“ミューズ”が実在したら、というシチュエーションのコメディ。ミューズを演じるのは、近年、スターのオーラを消したヘンな役が多いシャロン・ストーン。俳優や監督のカメオ出演でも話題になった。映画ファンならニヤリとするような小ネタがちりばめられた内容だが、『ザ・プレイヤー』のように、ハリウッドを内幕を描こうという野心はない。やはり、職業コメディアンの監督がその本分に従ったのか、批判や皮肉は最小限にひかえ、肩の力を抜いて観られる余興的な作品に仕上がっている。本作の笑いで特徴的なのは、暴力や下ネタにいっさい頼っていないところ。ストーリーの最初のほうで、ミューズとのロマンスを否定することで、脚本の完成以外の見返りをもとめない主人公の切実さを笑いにつなげている。過激なコメディになれている人にとっては物足りないかもしれないが、ブルックスの人柄が出たようなほのぼのとした笑いはかえって新鮮だ。本人役で登場するのは、映画監督のロブ・ライナー、ジェイムズ・キャメロン、マーティン・スコセッシ。それから、俳優のシビル・シェパード、ロレンツォ・ラマス、ジェニファー・ティリー。そして、シェフのウルフギャング・パック。
<<ストーリー>>
ハリウッドで活躍する脚本家のスティーヴン・フィリップスは最近スランプ気味。授賞式で“博愛賞”という名誉なのか不名誉なのか分からないものを受けた翌日、長年にわたって一緒に仕事をしてきた“パラマウント”の担当者のジョシュから、突然、契約の打ち切りを言い渡された。ジョシュ曰く、自分の脚本にはキレがなくなったのだという。
“パラマウント”のオフィスをデ・パルマ監督に取られてしまったスティーヴンは、仕事を求めてスピルバーグ監督に面会に行くが、出てきたのは従弟のスタン・スピルバーグで、話の要領を得ない。困り果てたスティーヴンは、親友の同業者ジャックに相談に向かった。スティーヴンの苦境に同情したジャックは、秘密めいた口調で創造の女神“ミューズ”の話を始めた。“ミューズ”は実在し、ジャックやロブ・ライナー監督も、彼女からインスピレーションを受けていたのだという。
半信半疑だが、藁にも縋りたいスティーヴンは、ジャックから紹介されたサラ・リトルという名前の“ミューズ”に会ってみることにした。教えられた住所のゲストハウスに彼女は住んでいた。部屋には監督や脚本家から送られた“ティファニー”の箱がどっさり。サラは、スティーヴンの訪ねた理由を知るや、“フォー・シーズンズ・ホテル”のスイートへの予約や、リムジンでの送り迎えを要求。サラのわがままに目を丸くするスティーヴンだったが、背に腹は変えられない。リムジンだけは勘弁してもらうとして、ホテルの予約を約束した。
妻のローラは、サラのためにスーパーで買い物をしているスティーヴンと出くわし、彼の浮気を疑った。サラがホテルに引っ越した後も彼女のわがままは続き、スティーヴンは真夜中に電話で起こされて、部屋にフォルドーフ・サラダを届けさせられたりと、振り回されっぱなし。そんな気の毒な夫の姿を見たローラは、浮気の疑いをあっさり捨てたのだった。
スティーヴンがサラに連れられて、ロングビーチにやってきたときのこと。偶然、出くわしたライナー監督と親しげにするサラの姿を見て、スティーヴンは半信半疑だった“ミューズ”ご利益を信用するようになった。水族館をめぐっているうちに、スティーヴンは、夏休み向けに水族館を舞台にしたジム・キャリー主演のコメディ映画のアイデアを思いついたが、それが“ミューズ”の力なのかどうかは分からなかった。
サラの希望により、彼女とローラの二人で食事をすることになった。サラとローラは思いがけずと意気投合。ローラは、サラの助言をきっかけに、趣味のクッキー作りをいかして、第二の“ミセス・フィールズ”を目指すことにした。また、ローラは、ホテル暮らしに退屈したローラを自宅に招くことをスティーヴンに提案。こうして、スティーヴン一家とサラの同居生活が始まった。だが、サラはローラの新しいクッキーの開発にインスピレーションを与えるばかり。やがて、ローラのクッキーは、サラの紹介で、彼女の友人であるウルフギャング・パックの経営する“スパゴ”に置かれることに。その頃、スティーヴンの家には、ジェイムズ・キャメロン監督やマーティン・スコセツシ監督がサラに助言を求めに訪ねてきたりした。だが、肝心のスティーヴン脚本は滞ったままだった……。
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