K2で遭難した妹を救うため兄がニトロを背負って救助に向う。
危機また危機の連続の山岳レスキュー・アクション。
バーティカル・リミット
原題 | VERTICAL LIMIT |
製作年 | 2000
年
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製作国 | アメリカ/ドイツ |
上映時間 | 124
分
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色彩 | カラー |
最近は下火になってしまっている、SFX頼みのパニック映画。「どうせ映像で脅かすだけ」というイメージはあるが、『ダンテズ・ピーク』しかり、意外と面白いものがあるのがこの手の作品だ。本作は、『クリフハンガー』のクライマックスが全編を占めるといった勢いの内容で、「そこまでするか!」と叫びだしそうなくらい想像を絶するアクションの連続で畳み掛けていく。どのようにして撮影しているのか見当つかないほど危険な映像は、観てるそばから「雪山なんていくものじゃない」と製作者の意図と関係なく戒められるのである。
物語としては、「兄が妹を救助に行く」というそれだけの話。緊迫感を出すためか、登場人物にニトロを背負せて、雪山版『恐怖の報酬』を洒落たりもしてみが、一番の売りであるこの設定が実は一番冗長だったりする。ニトロが無いとなれば、ドラマ性は確かに薄い。しかし、ドラマ性は薄くても、圧倒的な雪山の描写の前では、パニック映画の大きなテーマと言える人命の尊さが、十分にシリアスなメッセージとして伝わってくる。冒頭、父親が自ら犠牲になる場面から、救う者と救われる者の構図を強調。どうせ助からない者を危険を冒してまで救いにいくことについて、ベースキャンプで交わされる議論。自分が助かるために仲間を見殺しにしようとする登山家と、仲間を庇おうとする妹の対決。それらの数々の熱いシーンから、人の命を天稟にかけることの無意味さを教えられるようで、「四人死んで、結局助かったのは一人」という結末も感慨深い。
登山家の父ロイス・ギャレットとその子供たちピーターとアニーの兄妹は、クライミング中に先を登っていた若者の転落事故に巻き込まれ、ロープて宙吊り状態になってしまった。一番下にぶら下がっていたロイスは、子供たちを助けるためピーターにロープを切るよう命令。ピーターはアニーの制止の声を振り切り、父を崖下に落とした。
それから3年後のパキスタンのヒマラヤ山麓。あの事故以来、登山をやめ、現在は写真家として活躍していたピーターは、K2登頂に挑もうとする富豪エリオット・ボーンについて山にやってきた。ベースキャンプでピーターは、エリオットに同行することになっているアニーと久しぶりに再開した。アニーは尊敬する父の後を継いで登山家になっていたのだ。登山家としても知られるエリオットがK2に挑むのはこれが二回目。四年前の登山では、遭難して安否が絶望視されたが、奇跡的に一人だけ生還したのだった。だが、エリオットの今回の登山は、自らが経営する航空会社のピーアールが目的とも囁かれていた。有名な登山家トム・マクラーレンをガイドに迎えたエリオットは、万全の体制を整えたと信じていた。だが、前夜のパーティの席で、ある老人に天候について質問をされ、エリオットは不愉快に。
翌日、エリオットを隊長とした登山隊はベースキャンプを出発。だが、しばらくして嵐の接近の可能性がベースキャンプから知らされた。トムは引き返そうと考えるが、あくまで登頂も目指すエリオットは頑として聞こうとしなかった。その時、嵐が引き起こした雪崩がエリオットたちに襲い掛かった。クレバスに転落したエリオット、トム、アニーの三人は、雪崩から逃れることが出来たが、出口を完全にふさがれてしまった。無線も通じなくなってしまうが、アニーは父から教わったモールス信号でSOSを打った。ベースキャンプはアニーたち三人の生存を確認し喜びに沸いた。
だが、喜びも束の間。二十二時間以内に探しださなければ、敗血症にかかって三人とも死んでしまうのだ。だが、標高が8000メートルもある険しい雪山の中ではヘリを飛ばすことは出来ない。たとえ見つけ出しても、クレバスをふさぐ岩をどうすればいいのか。ピーターは、パキスタン軍に協力を求め、ニトログリセリンを借りることにした。これで岩を吹き飛ばそうというのだ。六人で協力して、三本のニトログリセリンを運ぶことになった。ピーターはベースキャンプで五人の仲間を募り、アニーたちの救助に出発した。
途中でピーターは、昨夜、エリオットに不吉な質問をした老人モンゴメリー・ウィックのことを思い出し、彼にも助けを求めることにした。四年前、この山で妻を遭難で亡くしウィックは、行方不明のままになっている妻の遺体を捜しつつけているのだという。彼はピーターの父の友人でも会った。はじめは、ピーターの話もまともに聞かなかったウィックだったが、自分の命令に従うことを条件に救助に協力することになった。彼は、スキップを下山させ、残る六人で、二人ずつのチームを組ませた。
その頃、クレバスの底ではトムに敗血症の症状が出始めていた。だが、エリオットは無慈悲にもトムは助からないと断言し、本人にもそのことを告げてしまった。彼は自分が助かるため、薬を無駄にしないようアニーに命じたのだった。一方、ピーターたちは三つのチームに分かれ、アニーたちの捜索を行った。だが、医師志望のモニクとチームを組んでいたシリルが足を滑らせ、谷底に転落。一人、崖を這い上がったモニクは、ピーターとウィックのチームと合流した。
嵐が晴れ、ヒマラヤに強い日差しが差し始めた。その時、ベースキャンプで突然、ニトログリセリンが爆発した。すぐにベースキャンプは、ニトログリセリンが熱に弱いことをピーターに報せた。ピーターはシリルの弟マルコムと、彼とチームを組むカリームにニトログリセリンを日陰に入れるように言おうとするが、間に合わず、二人は爆死してしまった。爆心地に駆けつけたピーターたち三人は、砕けた氷山の中から飛び出した冷凍の死体を発見。それは、ウィックが探していた妻だった。その時、ピーターは、ウィックの妻が四年前に登頂を目指したエリオットのガイドを務めていたことに気付く。エリオットは、敗血症にかかったウィックの妻の薬を独占したことで、生き延びたのだった。ウィックはエリオットへの復讐のため、彼を妻と同じ目にあわせようと考えていた。ピーターは、ウィックが協力に応じた本当の目的を知ると、彼をその場に置いて、モニカと共に先を急いだ。
クレバスではトムだけでなく、エリオットとアニーも敗血症にかかっていた。アニーは自分の命が後二時間と持たないと悟り、通じるようになった無線で兄に引き返すよう告げた。エリオットは薬を独占するため、ついに、瀕死のトムに自ら手をかけた。トムが刺し殺されているのを見つけたアニーは、無我夢中でエリオットに飛び掛った。その時、クレバスをふさいでいた岩の一部が崩れ、一条の光が差し込んだ。エリオットとアニーは争うのを止め、自分たちの居場所を外に報せる方法を考えた。二人はトムの体から抜いた血を岩の隙間から外に差しだし、マーキングをした。
ピーターとモニクは、アニーたちの閉じ込められていると思われる地点に到達。だが、目前には無慈悲にも深い断崖があり、二人は途方に暮れてしまった。その時、ピーターが両手にピッケルを掴み、助走をつけて、決死の覚悟でダイブした。ピーターのピッケルは辛くも対岸の崖に突き刺さった。血の目印を見つけたピーターは、ニトログリセリンで岩を爆破。ピーターとモニクは、露わになったクレバスの底にアニーとエリオットの姿を確認した。ピーターとモニクはアニーたちにロープを伸ばそうとして、足を滑らしてしまった。その時、ウィックが駆けつけ、穴に落ちそうになっていたピーターたちを救った。
ウィックは自らクレバスに下りていき、エリオットと向かい合った。だが、ウィックは復讐を遂げず、彼の腰にロープをかけたのだった。ピーターとモニクが、アニーを引き上げようとした時、クレバスの底が崩壊。足場を失ったウィック、そして、エリオットは宙吊りになってしまった。ピーターとモニク二人の力では、アニー、ウィック、そして、エリオット三人の体重を支えることは不可能。このままでは全員死ぬと判断したウィックは、手前のロープを自ら切断し、エリオットと共にクレバスの底に落ちていった。そして、ピーターとモニクは、無事にアニーを救出したのだった。
キャスト
ピーター・ギャレット
| クリス・オドネル
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アニー・ギャレット
| ロビン・タニー
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モンゴメリー・ウィック
| スコット・グレン
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モニク・オーベルティン
| イザベラ・スコルプコ
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エリオット・ボーン
| ビル・パクストン
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トム・マクラーレン
| ニコラス・リー
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カリーム・ナジル
| アレクサンダー・シディグ
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スキップ・テイラー
| ロバート・テイラー
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ラッセル少佐
| テムエラ・モリソン
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ロイス・ギャレット
| スチュアート・ウィルソン
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シリル・ベンチ
| スティーヴ・ル・マルカンド
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マルコム・ベンチ
| ベン・メンデルスゾーン
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ブライアン・ミキ
| ロバート・マモーネ
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スタッフ
監督
| マーティン・キャンベル
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製作
| マーティン・キャンベル
ロバート・キング
マーシャ・ナサティア
ロイド・フィリップス
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製作総指揮
| マイク・メダヴォイ
ロイド・フィリップス
マーシャ・ナサティア
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原案
| ロバート・キング
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脚本
| ロバート・キング
テリー・ヘイズ
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撮影
| デイヴィッド・タッターサル
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音楽
| ジェイムズ・ニュートン・ハワード
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美術
| ジョン・バンカー
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編集
| トム・ノーブル
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衣装デザイン
| グラシエラ・マゾン
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キャスティング
| パム・ディクソン・ミッケルソン
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