事故で全身麻痺となった科学捜査のプロが、
挑戦的な連続猟奇殺人の犯人に迫るサスペンス。
ボーン・コレクター
原題 | THE BONE COLLECTOR |
製作年 | 1999
年
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製作国 | アメリカ |
上映時間 | 118
分
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色彩 | カラー |
探偵が現場を見ずに、手がかりとなる情報のみで、事件の真相を推理するものをロッキングチェア・ディテクティブ(安楽椅子探偵)と言い、ミステリーのジャンルの一つとして確立している。その究極の形として、全身麻痺の探偵の活躍を描き、ベストセラーとなった小説の映画化が本作。ロッキングチェア・ディテクティブの醍醐味は、探偵に制約を架すことでそれを読者の立場に近づけ、読者と探偵が同じ条件で事件を推理していくところにあるが、それは映像化するにあたって犠牲にされるところでもでもある。本作も残念ながら、原作小説を読み進めていくような知的興奮は味わえないが、「ジャック・ライアン」シリーズで主人公が活発に行動する作品を撮ってきたノイスが、寝たきりの探偵をどう描くかは見ものだ。
主人公が寝たきりというと、『裏窓』という傑作を思い出すが、本作の主人公は事件のいっさいを目撃することはない。助手を目や手足の代わりにするが、本人は首から下が動けないという状態。演じるのは、技巧派デンゼル・ワシントン。これまでのキャリアでも評価を得ている彼にとって、あえて“体で表現しないことにより表現する”ことへの挑戦はやりがいのあるものだろう。彼は、寝たきりだからといって同情を買ったり、卑屈になったりするのではなく、それを補うために居丈高になっていくという気難しいキャラクターを繊細かつ自然な芝居で見せ、期待に答えてくれた。
サイコ・ブームもとっくに終わっていた頃だが、地味な設定をカバーするためか、『セブン』ばりの猟奇的な場面がたくさん。食事中の観賞は注意。
科学捜査官のバイブル「犯行現場」を著したリンカーン・ライムは、捜査中に鉄骨の下敷きになるという事故に遭い、病院のベッドで寝たきりの状態になっていた。彼が動かせるのは首から上と左手の指一本だけ。いつ襲い掛かるとも分からない発作の恐怖と共に過ごしていた。
警官だった父を継いで婦警になったアメリア・ドナヒーは、有能でありながら自ら青少年課のパトロールに志願していた。ある日、彼女は子供の通報により線路脇に埋められた男の惨死体を発見する。妻と一緒に空港からタクシーで連れ去られた財産家アラン・ルービンのものだった。
不可解な事件の現場検証はライムにゆだねられることになった。はじめは乗り気でなかったライムだったが、自分のセオリーに従い手際よく現場写真を撮ってきたアメリアを見初め、彼女を助手に捜査を開始する。かくして、ライムの病室に捜査本部が設けられ、科学捜査のプロ、ソロモンやエディが出入りすることになった。
死体のそばには二十世紀初めとみられる古い拳銃と古い髪、そして、古い紙片が置かれていた。死体の状態からルービン夫人の生存を確信したライムは、現場に残された有害物質アスベストを手がかりとして、二十世紀初めに事件現場一帯に建っていた工場について調べさせる。
また、ライムはルービン夫人が地下に幽閉されていることに気付き、警察を現場に急行させた。だが、警察が到着した瞬間、スチーム・パイプから蒸気が噴出し、ルービン夫人は焼死してしまった。骨の一部を露出された夫人の死体の近くには血まみれの骨と紙片が置かれていた。事件解決に焦るライムは無線を通じて、アメリアに夫人の手首を切断して手錠を持ち帰るように指示した。アメリアはライムの指示に従うことができなかった。
ライムの失敗を笑う上司チェイニーは病室の捜査本部の解散を指示し、アメリアが持ってきた証拠品も取り上げてしまった。チェイニーは証拠品の指紋から照合されたタクシードライバーの身柄の確保に向うが、容疑者は殺されていた。こっそり証拠品を取り戻したアメリアはライムの病室に向った。その頃、ライムはアメリアのことを調べ、自殺した父の存在が心の枷になって、彼女が出世を諦めてしまったことを知った。
ライムは病室にやってきたアメリアに、無理な指示を出してしまったことを詫びると共に、「自分の信じた道を進むべきだ」と勇気付けた。アメリアと話すうちに、寝たきりになって以来かたくなになっていったライムの心もほぐれていくが、その時、発作に襲われた。ライムが気絶している間、アメリアは担当の看護婦のテルマから意外な事実を知らされる。発作で突然死することを何より恐れるライムが、安楽死を希望しているのだというのだ。
犯罪記録を調べたアメリアは、被害者の骨を露出するという同様の事件が過去にも起きていたことを知る。アメリアからその事実を知らされ、事件の現場写真を丹念に調べていたライムは、そこに紙片を見つけた。パズル好きのテルマの協力で紙片を継ぎ合わせたライムには、それに見覚えがあった。膨大な読書量を持つライムが過去に読んでいた、二十世紀初めの出版社ロゴである。その出版社は実録犯罪もののホラー・ストーリーを専門に出していた。犯人が自分たちに挑戦していることは明らかだった。
図書館にロゴの出版社の本を探しに行ったアメリアは、「ボーン・コレクター」と題された一冊の小説と出会う。本をめくったアメリアは戦慄した。それは今回の事件とそっくりだったのだ。小説のストーリーから犯人の次の犯行を予測したアメリアは、橋の支柱にくくりつけられていた老人と少女を助けようとする。老人は助からなかったが、アメリアの懸命な救助により、少女の命は奇跡的に助かった。
無線で一部始終を聞いていたライムは、現場近くにある使われなくなった地下鉄の駅にアメリアを行かせる。駅の内部は最近、誰が居た形跡があり、警察のバッジと“78499”という謎の数字が残されていた。記憶をたどったアメリアは、その数字がライムの警察でのIDであることを思い出す。犯人の次の狙いがライムであることを知ったアメリアは危険を報せようとするが、無線の電波は届かなくなっていた。
そのころ、ライムにベッドに看護士のリチャードが近づいていた。ライムがテルマの姿が見えないことを不信に思った時にはすでに遅く、リチャードが本性を現した。過去にライムは、ある事件を捜査していた捜査官が証拠を捏造していたことを知り、告発したことがあった。目の前の男リチャードこそ、刑務所に送られた捜査官マーカス・アンドリュースだった。
マーカスはライムに復讐すべく、身動きできない彼をベッドから引き摺り下ろした。絶体絶命のライム。だが、彼はのしかかってきたマーカスの耳元に何かを囁いた。思わず聞き耳をたてたてるマーカス。その隙にライムはマーカスの首筋に噛み付いた。無事に事件を解決したライムはその後、安楽死を行うまでもなく、順調に回復していったのだった。
キャスト
リンカーン・ライム
| デンゼル・ワシントン
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アメリア・ドナヒー
| アンジェリーナ・ジョリー
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セルマ
| クイーン・ラティファ
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ハワード・チェニー署長
| マイケル・ルーカー
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ケニー・ソロモン警部
| マイク・マッグローン
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エディ・オーティス
| ルイス・ガスマン
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リチャード・トンプソン
| リーランド・オーサー
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ハリー・リーマン博士
| ジョン・ベンジャミン・ヒッキー
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ポーリー・セリット警部
| エド・オニール
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リンゼイロ・ルービン
| オリヴィア・バークランド
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フラン・ルービン
| ゲイリー・スワンソン
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スタッフ
監督
| フィリップ・ノイス
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製作
| マーティン・ブレグマン
ルイス・A・ストローラー
マイケル・スコット・ブレグマン
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製作総指揮
| ダン・ジンクス
マイケル・クラウィッター
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原作
| ジェフリー・ディーヴァー
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脚本
| ジェレミー・アイアコン
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撮影
| ディーン・セムラー
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音楽
| クレイグ・アームストロング
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美術
| ナイジェル・フェルプス
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編集
| ウィリアム・ホイ
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衣装デザイン
| オデット・ガドリー
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