冒険家が誘拐された親友の恋人を救うため、秘宝をめぐって邪教団と死闘を繰り広げる。
ジャッキー・チェンの監督・主演、「アジアの鷹」シリーズの一作目。
サンダーアーム
龍兄虎弟
原題 | 龍兄虎弟 |
原題 | THE ARMOUR OF GOD |
製作年 | 1986
年
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製作国 | 香港/ユーゴスラビア |
上映時間 | 98
分
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色彩 | カラー |
ジャッキー・チェンの主演・監督作としては、『プロジェクトA』、『ポリス・ストーリー 香港国際警察』に続く作品。全二作はシリーズ化されたが、本作も続編『プロジェクト・イーグル』が作られている。制作意欲、アイデア、体力共にあぶらがのっている頃の作品で、アクション、コメディ、ストーリーのバランスが安定している秀作である。
共演は香港を代表するスター歌手のアラン・タム。主人公の親友でお調子者で間が抜けている二枚目半を演じる。その恋人(ローラ)に扮するロザマンド・クワンは『七福星』でも共演。また、主人公に協力するもうひとりのヒロイン(メイ)に扮するローラ・フォルネルは『スパルタンX』で共演している。
今回、ジャッキーが扮するのは、世界をまたにかけて活躍するトレジャー・ハンター“アジアの鷹”。すべて集めると世界を支配できるという秘宝“神の武具”のひとつ、宝剣をて手に入れたことをきっかけに、世界制服を企む邪教の教団に狙われることになる。教団は“神の武具”集めに“アジアの鷹”を利用するため、ジャッキーの元恋人をさらい、さらに、美術コレクターの富豪の娘が事件に巻き込まれていく。
キャラクターや世界観は、「インディ・ジョーンズ」のパロディだが、さまざまなギミックが仕掛けられた主人公の愛車は「007」さながらで、ハリウッドの人気活劇のおいしいところをうまくいただいている。
主人公が宝剣を手に入れるアバンタイトルの舞台は不明。本編の舞台は登場人物の台詞でヨーロッパだと分かるものの、やはり国名が明らかでない。しかし、世界のどことも知れない場所で、東洋人と西洋人が入り乱れて活躍する無国籍な雰囲気が、本作の魅力のひとつである。
ストーリーは「インディ・ジョーンズ」や「007」に比してもより漫画的であり、荒唐無稽とご都合主義によって展開させる。しかし、アクションとコメディがストーリーの流れが止めずにうまく織り込まれているため、ジャッキー映画としてよくまとまった脚本と言える。
アクションは、中盤のカーチェイス、クライマックスの四人のアマゾネスとの肉弾戦、ラストのスカイダイビングと見どころ満載である。当時は、格闘アクションからスタント指向に傾いていた頃であり、危険なアクションに自ら挑戦するため、事故がたえなかった。有名なのは『プロジェクトA』の時計台の落下シーンでの事故だが、本作でもアバンタイトルの木から木へ飛び移る場面で失敗し、頭の骨を折る重傷を負っている。恒例のエンドクレジット中のNGシーンに、この事故の瞬間と負傷したジャッキーが運ばれていく衝撃的な映像がおさめられている。
幼馴染のジャッキーとアランは、グループ・サウンズのバンドを結成して人気者になったが、メンバーの女性ローラを巡って仲たがい。バンドを去ったジャッキーは、“アジアの鷹”の異名を持つトレジャー・ハンターに転身して、世界を飛び回るようになった。一方、アランはソロ歌手として、ローラは服飾デザイナーとして活躍していた。
ジャッキーはある古代遺跡から、世界に五つあるといわれる“神の武具”のひとつ、聖剣を奪取。そっさく競売にかけて、その価値を釣り上げようと企むが、ジャッキーの限度額をはるかに上回る金額を提示した白人女性に買われてれてしまった。肩を落としてホテルに戻ったジャッキーを、アランが待ちかねていた。アランは、ローラが何者かに誘拐されたことを打ち明け、ジャッキーに助けを求めた。ジャッキーは、アランとの腐れ縁と、ローラに惚れていた弱みで、手を貸すことにした。
誘拐犯は身代として、神の武具を要求しているのだという。聖剣は売れてしまったが、武具のうちの二つが大富豪の伯爵が所有していることをジャッキーは知っていた。ジャッキーとアランは、武具を拝借するため、伯爵の邸宅を訪ねた。伯爵は、アランの訴えには理解を示したものの、簡単には首を縦にふりそうになかった。そもそも神の武具は、邪教が栄えた紀元前、邪教に戦いを挑んだ正義の神が用いたものである。武具が五つそろったとき、再び世界を支配できると伝えられているため、ローラ誘拐の犯人は邪教であることは疑いようもなかった。
その晩、ジャッキーとアランは伯爵に引き留められ、邸宅に泊まることになった。アランは、武具が貸してもらえないなら盗むまでだと主張し、ジャッキーの反対を押し切って、伯爵の部屋に忍び込んだ。アランはそこで、白人女性に買われたはずの聖剣を発見するが、番犬を見つかり失敗し、警察を呼ばれてしまった。実は、競売の白人女性は、伯爵の娘メイだったのだ。
ジャッキーはアランを庇うため、咄嗟に、犯人は残りの二つの武具を持っているはずだから、武具を貸してくれたら、五つ揃えて返しすことを伯爵に申し出た。その言葉を聞いた伯爵は、武具を貸すことを決断。その場にいたメイは、身代の交換に一緒に行きたいとわがままを言いだした。ジャッキーとアランは仕方なくメイを連れて行くことにし、奇妙な三人旅が始まった。
やがて、三人は犯人が指定してきた町に到着。アランは犯人の要求通り一人で身代の交換場所の広場に向かうが、念のため武具を偽物と入れ替えていたことが、犯人の使いである黒い僧服の男たちにバレてしまった。ジャッキーはピンチに陥ったアランのもとに駆けつけ、追ってきた大勢の黒僧服たちとカーチェイスを繰り広げるのだった。
どうにか逃げおおせたジャッキーとアランは、町のレストランの事情通の給仕に金を渡し、広場に現れた黒僧服の男たちが、山中の伝道所にいる宗教団体の団員であることを聞き出した。彼らは、月に一度、食料と商売女を買いに来るのだという。ジャッキーとアランは僧に、メイはは商売女に化けると、本物の僧や商売女に紛れることで、山中の洞窟内にあった伝道所への潜入に成功。だが、彼らの潜入は、伝道所の教祖たちに勘付かれていた。教祖は、武具をそろえるために“アジアの鷹”を利用することを思いき、彼らを泳がせることにした。
伝道所は麻薬を売ることで得た金を活動の資金源としていて、新しい麻薬の開発にも取り組んでいた。教祖はローラに三日間だけ言うことに従うようになる新薬を注射すると、ジャッキーと一緒にここを出たら、彼にも同じ薬を打つことを命令。そうとも知らないジャッキーとアランに囚われていたローラをすぐに見つけさせ、メイにもわざと鍵を奪わせたのだった。こうして、ジャッキーたち四人はなんなく伝道所を脱出し、町へと戻ってきた。
一行は町のホテルに泊まった。アランはローラがさかんに武具を見たがってるのが気がかりだった。一方、ジャッキーはメイといい雰囲気になっていたが、同時にローラにも付きまとわれて大焦り。アランは、さっきから様子のおかしいジャッキーが何か隠しているのできないかと訝り、彼の部屋にと伸び込んだ。すると、ジャッキーに待ち構えていたローラに、誤って薬を注射されてしまった。翌朝、アランとローラが武具と共に姿を消し、部屋に注射器が残されているのを見たジャッキーは、二人が薬で操られて伝道所に戻ったことを知ったのだった。
ジャッキーは単身、伝道所に乗り込み、囚われていたアランとローラを発見。二人も既に薬の効果は切れていた。ジャッキーは、頼まれていたのはローラの救出だけだと言って、アラン置いて行こうとした。アランは、そのことに抗議もせず、ローラのために自分が犠牲になると熱弁。なるほど、ローラをものにできたのはその口のうまさか、と呆れながらも納得したジャッキーは、アランも一緒に連れて行くことにした。が、さっそくアランは僧たちの捕まり、足手まといに。結局、ジャッキーがその残って僧たちを食い止めている間に、アランとローラを先に行かせたるのだった。
追ってくる僧たちまいて、祈祷所にやってきたジャッキーは、祭壇に置かれていた武具を持って行こうとするが、そこへ教祖が現れた。教祖がけしかけてきたのは、四人のボンテージファッションの黒人女性。彼女たちの繰り出す連続蹴り攻撃に、ジャッキーはきりきり舞いになるが、ひとつずつ相手にする頭脳戦で逆転勝利。
四人が倒されたのを見た教祖は、僧たちに総攻撃を命令した。さしもの“アジアの鷹”も多勢に無勢でき敵わない。そこで、こんなこともあろうとか、あらかじめ体に巻いておいたダイナマイトを見せ、導火線に火を点けた。もちろん脅しのつもりだったが、火が消えなくり大ピンチに。それを見た教祖と僧たちは、恐れをなして一目散に逃げていった。
ジャッキーは引火したものから順にダイナマイトを洞窟内に放り投げていった。そのため、爆発の衝撃で伝道所が崩れていった。武具をあきらめたジャッキーは、出口を探して洞窟内を疾走。ようやく出口らしきものを見つけるが、出てみるとそこは断崖絶壁。遠くにメイに頼んでおいた気球が見えた。そこにはメイの他、先に洞窟から脱出していたアランとローラの姿もあった。ジャッキーは崖から決死のダイビングを試み、無事に球皮にしがみつくのだった。