パークのための恐竜の繁殖地“サイトB”で少年が行方不明に。
捜索に向かった両親と古生物学者は野生化した恐竜たちに狙われる。
ジュラシック・パークV
原題 | JURASSIC PARK III |
製作年 | 2001
年
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製作国 | アメリカ |
上映時間 | 92
分
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色彩 | カラー |
「ジュラシック・パーク」シリーズの三作目。監督は全二作のスピルバーグに代わって、ILM出身で『ミクロキッズ』、『ジュマンジ』を手掛けたジョー・ジョンストンが抜擢。前作まではマイケル・クライトンによる原作があるが、本作は映画完全オリジナル・ストーリーである。主演は一作目で主人公で古生物学者を演じ、前作には出演していなかったがサム・ニールがファン待望の再登場。同じく、一作目で主人公の助手役のローラ・ダーンも出演。
SFXはさらなる進化を遂げ、その先駆としての貫録を見せる。動きもが滑らかで俊敏になり、恐竜の皮膚の質感と色も生々しくなった。登場する恐竜は、シリーズではお馴染みのラプトルや、ティラノサウルスを超える巨体のスピノサウルスなど。ハイライトは、シリーズ初(実は前作のラストシーンで小さく出ている)の翼竜であるプテラノドンで、人間との空中戦が見どころ。
原点回帰が謳われた本作は、生物進化SFや生命倫理批判は引き継ぎつつも余計な講釈は抑えられ、捕食者と被捕食者のチェイスという原始的恐怖を描いたパニック・スリラーに比重が置かれている。場面は始終ジャングルだが、どこから恐竜が襲って来るかもわからない緊張感を持続し続け、前述の三種の恐竜が入れ替わりながらテンポよく登場し、ダレることもない。全二作には居なかった、怖がり役の女性を一人も入れたこともベター。極限条件を乗り越えることで、家族や師弟の絆を取り戻すといった、典型的なスピルバーグというかハリウッド的な要素もソツなく入れていている。端的に言ってしまえば、ジェットコースター的アトラクション映画だが、これこそが皆が見たかった「ジュラシック・パーク」であるし、それを高いレベルで実現している。
コスタリカ沖のイスラ・ヌブラル島にかつてあった“ジュラシック・パーク”。絶滅した恐竜を遺伝子工学で復活させた驚異のテーマパークであったが、事故により開演前に閉鎖された。その後、パークのための恐竜の繁殖地“サイトB”も、サンディエゴ事件を機に立ち入り禁止になった。“サイトB”のあったイスラ・ソルナ島は、パークを運営するインジェン社の創設者ハモンドの遺志により、手つかずのまま残されていた。
パークで起きた忌まわしい事故の当事者であった古生物学者グラントは、同じく事故に巻き込まれたかつての助手エリーを訪ねた。現在、グラントは、パークで彼らを襲った中型の肉食恐竜ラプトルの研究に取り組んでいた。ラプトルの頭蓋骨に共鳴腔が発見されたことで、彼らが言葉により仲間と会話をしていたことが分かってきた。グラントは、ラプトルが作戦を立てて組織的に狩りを行い、極めて高い知能を持っていただろう、とエリーに語った。
ある日、モンタナ州のフォートペック湖で発掘調査をしていたグラントのもとに、自分の大ファンだというポール・カービーとアマンダの夫婦が訪ねてきた。大企業のトップで大富豪であるポールは大アドベンチャー好きで、今度の結婚記念日にはイスラ・ソルナ島上空をチャーター機で飛ぼうと計画していた。そして、そのガイド役としてグラントに同行を依頼してきた。発掘調査費の捻出に頭を悩ませていたグラントは、寄付金を申し出たポールのチラつかせる小切手の誘惑に負け、同行を約束をしてしまった。
出発の日、グラントは富豪夫婦の相手を一人でするのに気が引けたため、若い助手のビリーも一緒に連れてきた。飛行機の同乗者はカービー夫妻、チャーター機の会社ユデスキーと部下二人の計七名。グラントは、島を超低空飛行で一回りするだけだ聞いていて、ロクに恐竜は見えはしないだろうと考えていたが、島に向かった小型チャーター機は、滑走路を見つけると、着陸の態勢をとりはじめた。仰天して操縦士を止めようとしたグラントは、ユデスキーの部下のクーパーに殴られて気を失った。
グラントが意識を取り戻すと、飛行機は島に上陸した後で、機外ではアマンダが森に向かって拡声器で誰かに呼び掛けていた。人を探しているようだ。大声を上げてはならない、とグラントが注意したが既に遅かった。森の名からティラノサウルス、否、それを大きさで凌ぐスピノサウルスが現れた。一堂は飛行機に逃げ込み離陸しようとするが、乗り遅れたクーパーをそれを追うスピノサウルスが滑走路に飛び出してきて、離陸が失敗。森に突っ込んで大破した飛行機から脱出する際に、操縦士のナッシュがスピノサウルスの餌食となった。
グラントは、ポールを殴りつけて説明を求めた。遡ること二か月前、ポールの息子のエリックがアマンダの友人のベンと、島の近くでパラグセーリングをしている最中に行方不明になった。二人の捜索をコスタリカ政府や大使館に依頼したが、相手にしてもらえなかった。そこで、戦争のプロだというユデスキーに頼み、個人で捜索をすることにしたのだ。ただし、島に来たことのある人間を同行させることがユデスキーの出した条件だった。ポールは、イスラ・ヌブラルとイスラ・ソルナを間違え、グラントが島に来たことがあると勘違いし、騙して連れてくることにしたのだった。
ポールは大企業のトップでもアドベンチャーの熟練者でもなく、本当はしがない風呂の改装屋であることが分かった。あの小切手は不渡りになるはずである。また、ユデスキーも戦争のプロなんかできなく、ただの旅行代理店だということも判明。素人ばかりで凶暴な恐竜が跋扈するジャングルを行くことになった。グラントの提案で、救助を求めのために海岸を目指すことに。しばらく行くと、グライダーを発見したが、そこあったのは、木に引っ掛かったベンの死体だけで、エリックの姿はなかった。グライダーの墜落現場付近で、カービー夫妻が何かの卵を発見した。卵を検めたグラントは、それがラプトルのものであるこを知った。
やがて五人は、大きな建物を発見。それは恐竜の孵化施設、“サイトB”の拠点だった。施設を探索していたグラントの前に、一頭のラプトルが現れた。グラントたちが力を合わせてラプトルを扉と壁に挟み込む込むと、身動きの取れなくなったラプトルが奇妙な鳴き声をあげた。それは、仲間に助けを求める“言葉”だった。施設の周りから複数のラプトルが集まってきた。グラントたちは施設を飛び出し、一目散に森へ逃げ込んだ。
カービー夫妻は、ユデスキーがひとりで森の中に倒れているのを見つけた。助けに駆けつけようとすると、物陰からラプトルが飛び出してきた。ラプトルの仕掛けた罠だった。彼の知能とコミュニケーション能力のの高さは、想像をはるかに超えていた。グラントは、ビリーが逃げる最中に落としたバッグを拾っていたために、皆から遅れて一人で行動していた。彼は、盛んに“言葉”を交わしているラプトルの様子を観察し、彼らが何かを探していることに気付いた。
ラプトルの“会話”に注意を引かれ、油断をしていたグラントは、気が付くと周りをラプトルに囲まれて、逃げ場を失ってしまった。そのとき、どこからかガス弾が投げ込まれた。グラントは、うろたえるラプトルの間から、何者かに手を引かれるままに脱出。窮地を救ってくれたのはエリックだった。彼はグラントを隠れ家であるトラックに連れて行った。エリックは、インジェン社が残した物資で二ヵ月の間、サバイバル生活を送ってきたのだった。
グラントは予定通り、エリックを連れて隠れ家をを出発し、一緒に海岸を目指した。しばらくして、エリックが父親の衛星電話の発信音に気付いた。エリックは両親を呼びながら音のする方に走った。カービー夫妻もエリックの声に気付いて、声のする方に向かった。こうして、親子は再開を果たしたが、ポールは衛星電話を持っていなかった。電話はナッシュに貸したはずである。そのナッシュはスピノサウルスに……。グラントの背後で発信音が聴こえた。振り向くとそこにはスピノサウルス巨体があった。
五人は近くにあった観察所とみられる建物に逃げ込んだ。スピノサウルスが諦めて去っていくのを確認し、一息つくと、ビリーがグラントにバッグを返すように強く迫ってきた。何かあると察したグラントがおもむろにバッグを開けると、中には卵が入っていた。あのとき、ラプトルの卵を失敬していたのだ。ビリーは、発掘資金のためであって、やましい気持ちはないと主張。グラントはビリーに失望し、「ここを作った連中と同じだ」と彼を厳しく非難した。グラントはその場で卵を処分しようとしたが、切札になると考えてやめた。
観察所の向こうは谷であり、グラントたちは、崖にめぐらされた足場を進んでいった。周囲に糞が落ちているのを見て、ここが翼竜の縄張りに気付くが、引き返す間もなく、エリックがプテラノドンにさらわれてしまった。それを見たビリーはグライダーを使うことを思いたち、グラントの静止の声を無視して崖に飛び込んだ。ビリーは、プテラノドンの巣の中で幼竜の餌になろうとしていたエリックを救い出すことに成功するが、数頭のプテラノドンからの執拗な攻撃を受けた。グラントは、川に落ちたビリーを助けようとするが、プテラノドンを前にして近づくこともままならず、川の中に沈んでいくビリーを見ていることしかできなかった。
崖下の川を進んだグラントたちは船を発見。幸いガソリンが残っていたため、これで海岸までいくことにした。グラントは、ビリーに怒りにまかせて言ってしまった言葉を反省していることをエリックに打ち明けた。ビリーはただ「若かった」だけだったのに。衛星電話の発信音が聴こえてきた。音のする川岸を見ると、糞の山があった。グラントたちは糞の中から電話を探し出した。グラントは電話をかけた。こんな時に頼りになるのは、エリーしかいなかった。その時、スピノサウルスが船に襲い掛かり、衝撃でグラントは電話をとり落としてしまった。
電話を受けたエリーがかろうじて聞いたのは、グラントの「サイトB」という言葉だけだったが、それだけで彼の身に危機が訪れていることに気付いた。グラントたちの船はスピノサウルスの体当たりで大きく傾き、全員、川の中に投げ出された。ポールはアマンダとエリックを逃がすために、船のクレーンにぶら下がることで自ら囮となった。グラントは船から離れると救護用の発光弾を撃った。船の周りにはガソリンがもれだしていたため、スピノサウルスは船もろともに炎に包まれた。ポールはすんでのところでクレーンから飛び降り、彼が焼け死んだと思って嘆き悲しんでいたアマンダとエリックの前に現れたのだった。
スピノサウルスとの闘いを終えたグラントたちは、波の音を耳にした。ついに海岸に辿り着いたと、喜び勇んで駆けていく四人だったが、行く手に数頭のラプトルが立ちふさがり、背後にも回り込まれてしまった。ラプトルはアマンダが卵を盗んだと考え、彼女を威嚇。アマンダがグラントから渡された卵を差し出すと、ラプトルは卵を咥えて去って行った。気が付けばヘリの音が聴こえていた。海岸に出ると、ちょうど海兵隊が救助に駆けつけたところだった。エリーが呼んでくれたのだ。グラントがヘリに乗ると、そこにはビリーがいた。大けがを負っていたが、奇跡的に助かり、先に救助されていたのだった。