フィリピン沖に現れた動く岩礁の正体は超古代文明が産み出した巨大怪獣ガメラ。
一万年来の宿敵である飛行怪獣ギャオスと東京で空中決戦!
平成ガメラ・シリーズの第一弾。
ガメラ
大怪獣空中決戦
原題 | GAMERA THE GUARDIAN OF THE UNIVERSE |
製作年 | 1995
年
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製作国 | 日本 |
上映時間 | 95
分
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色彩 | カラー |
六十年代にシリーズ化され、ゴジラと人気を二分した怪獣映画が十五年振りに復活。過去フィルムの再編集で作られた『宇宙怪獣ガメラ』を除けば、二十四年振りの完全新作となる。好評を受けて再シリーズ化され、三作目まで製作。昭和のシリーズと区別されて、便宜上「平成三部作」と呼ばれている。監督は金子修介。特技監督に樋口真嗣。脚本に伊藤和典。このトリオは三部作すべてを手掛けることになる。主演は伊原剛志、中山忍、藤谷文子。
昭和シリーズの続編ではなく、亀型怪獣ガメラの設定から新たに作り上げたオリジナル作品。敵役として、昭和シリーズの第三作『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』に登場した飛行怪獣ギャオスが登場。一万年の時を超えて現代に目覚めたガメラとギャオスの戦いと、怪獣たちの存在の謎に迫る人々の姿をスリリングに描く。昭和シリーズでは、子供の味方・ガメラとして、小学生以下の低年齢向けの内容であったが、本作はで大人の鑑賞にもたえるシリアスなSF映画になった。
本作の予算は怪獣映画としては低すぎるものだったと言われるが、それを逆手にとったような創意工夫が随所にみられる。特撮はミニチュアとマペット中心であるため、安っぽさは否めないが、丁寧な作り込みは目を見張るものがある。また、ローテクに拘ったことには怪獣映画への愛情が感じられ、昭和シリーズへのオマージュとして、往年のファンやマニアにも好印象を与えている。
一貫して怪獣を人間の天敵あるいは災害として捉え、事件に現実味を与える試みも成功している。怪獣の派手な戦いをプロレス観戦的な視点で見せるのではなく、あえて見上げるような構図を多用するこで、怪獣と人間の関係性を明確にした。また、怪獣出現のニュースを本職のニュースキャスターに読ませたり、単に「逃げ惑う人々」を見せるのではなく、「“警察に誘導されながら”逃げ惑う人々」という風に、ひと工夫加えることで説得力を増した。
プルトニウム輸送船“海竜丸”がフィリピン沖を航海中のこと、警護に当たっていた巡視船に、“海竜丸”座礁の報が入る。接触したのは岩礁のように思われたが、それは海流に乗って動いていた。巡視船に乗り合わせていた一等航海士・米森は、事故の責任を感じ、損害保険会社の草薙に、岩礁調査への参加を志願した。
福岡市動物園に勤務する鳥類学者・長峰のもとに、九州大学の恩師・平田教授から電話がかかってきた。だが、長峰が受話器をとったときには既に電話は切れていた。平田は、巨大な鳥の雛が発見されたという五島列島・姫神島で学術調査中だった。
官民の壁を理由に岩礁調査への参加を断られた米森は、もう一度頼むため、酒を手土産に草薙宅を訪た。米森は、そこで草薙の娘の高校生・浅黄と出会った。草薙は、米森の熱意に折れて、特別に調査へ同行することを許した。かくして、米森は調査船“けんざき”で太平洋へ航海に出た。
長峰のもとを長崎県警の刑事・大迫が訪ねてきた。大迫は困惑した表情で、先日消息を絶った船員の最後の通信で「鳥」という発言があったことを、長峰に告げた。いったい五島で何が起きているのか。長峰は平田のことが心配になり、大迫と共に姫神島に向かうが、そこで彼女が見たのは、破壊されつくされた集落であり、住民の姿を消えていた。
長峰は民家の近くにペレット(未消化物の塊)のようなものを発見。その中から平田の愛用していたペンが出てきた。長峰は、平田を襲った“鳥”を見ようと、大迫をともなって森の中へ。夜更けも近くなったその時、長峰は巨大な鳥の影を見た。翼長は15メートルもあろうかという巨大な“鳥”だった。
“鳥”の被害が拡大することを案じた長峰は、海を渡っていく“鳥”をヘリで追跡。大迫は、“鳥”をレーダーで捉えた長崎空港に警戒を呼び掛けるが、取り合ってもらえなかった。長峰はヘリを“鳥”に近づけ、その姿を写真に撮ろうとすると、“鳥”がフラッシュの光にひるんだ。“鳥”は夜行性で光に弱いことが分かった。また、長峰は“鳥”が渡った隣の島に、もう二頭の“鳥”の姿を確認した。
草薙は海流の方向や速さから岩礁の動きを予測することで、岩礁に追いつくことに成功。それは長計60メートルもある楕円系の物体だった。岩礁に上陸して調査を始めてすぐに、米森は手のひらに収まる大きさの勾玉を無数の発見した。さらに、岩礁の表面に石版が顔をのぞかせているのを見つけた。
平田のことでショックを受けた長峰は、“鳥”の調査を切り上げて福岡に帰るつもりだったが、大迫の引き留めで、環境庁の官僚たちと会うことに。審議官の斎藤は“鳥”の捕獲の方法を検討するよう長峰に求めた。長峰は、生態も分かっていない生物を捉えることのリスクの大きさを理由に断ろうとするが、斎藤に「決定事項だ」として押し切られることに。
掘り起こした石版には、謎の文字のようなものが刻まれていた。米森が石版の表面に手を当ててみると体温のような温もりがあった。次の瞬間、石版はばらばらに崩れ、岩礁全体が振動し始めた。岩礁から振り落とされて、海に落ちた米森は、海中で巨大な生物の目を見た。
長峰は、斎藤に命じられた無理難題に応えようと頭をひねっていたが、そもそも、あの巨大な“鳥”を閉じ込めておけるような場所があるだろうか。長峰と一緒にアイデアを出していた大迫は、ふと目を付いたスポーツ新聞から、福岡ドームが使えることに気付いた。福岡ドームは開閉式屋根を持っているからだ。
その夜、福岡ドームで“鳥”捕獲作戦が決行された。三台のヘリが“鳥”の光を嫌う性質を利用し、餌の置かれたドームに向けて、“鳥”たちを順調に誘導していった。その時、もう一台のヘリがドーム上空に現れた。降り立ったのは米森。彼は、巨大生物が一直線にドームへ向かっている、と斎藤に警告した。だが、作戦は継続された。ドームのライトが消されると、三頭の“鳥”がグラウンドに舞い降り、餌に食らいついた。ドームの屋根がゆっくりと閉まり始めた。
ところが、屋根が閉まりきらないうちに、“鳥”に向けて麻酔が発射されてしまった。そして、三頭のうち一頭が閉まりかけの屋根から逃げてしまった。逃げた“鳥”は、福岡港に向かったが、その行く手を阻むように巨大生物が海から現れた。直立した亀の姿をした“怪獣”は“鳥”を叩き落とすと、街を破壊しながらドームに到達。“鳥”は檻の鉄格子を切断して、ドームから脱出。“怪獣”もそれを追うように飛び立った。長峰も米森も、その様子を呆然と見てることしかできなかった。
巨大怪獣騒ぎで日本中が騒然なった一夜が明け、草薙が帰宅した。草薙は、石版に刻まれていた碑文がルーン文字に似た古代文字であること、そして、それの解読に成功したことを米森に知らせた。碑文の意味するところは、「最後の希望ガメラ 時の揺籠に託す 災いの影 ギャオスともに目覚めん」であるという。
勾玉の組成が未知の物質であることも分かった。プラトンがアトランティス伝説と共に語った金属オリハルコンのようなものではないだろうか、と草薙。あの“怪獣”いわゆるガメラは、アトランティスとして言い伝えられた古代文明の作り出した人工物なのかもしれない。米森は、ガメラが海竜丸に近づいたのも、エネルギー原であるプルトニウムを求めてのことだったのだろう、と納得した。米森は無断で持ち出した勾玉の一つを浅黄にプレゼントした。勾玉は浅黄の手の中で光った。
長峰は新しい発見の情報を受けて、再び姫神島へ向かった。森の中で発見されたのは、“鳥”いわゆるギャオスの死骸だった。ギャオスには餌を運んでくる親がいるとは思えず、また、他の二頭の姿を見えないところを見ると、互いに食い合ったと考えざるを得なかった。
環境庁の会議。米森は、あれから姿を消しているガメラについて、瀬戸内一帯の電力が低下していることから、潜伏してエネルギーをチャージしているのではないかという独自の見解を発表。長峰は、死骸の炭素年代測定から、ギャオスが一万年に誕生したこと、また、すべてメスのため、繁殖しないであろうことを報告した。
ガメラが紀伊半島で発見された。自衛隊はガメラを追跡するが見失ってしまった。クラスメイトからガメラ発見の報道を知らされた浅黄は、何かに突き動かされるように学校を飛び出した。
一方その頃、米森と草薙は、ギャオス出現情報のあった木曽山中へと車を走らせていた。先に到着していた長峰は、避難の遅れた子供を抱えて吊り橋を渡ろうとしていた。その背後には、大きく成長したギャオス。米森は長峰のもとに駆け寄るが、ギャオスがすぐ間近まで迫ってきた。絶体絶命のそのとき、火炎がギャオスを木端微塵にした。火炎を放ったのは、消息を経っていたガメラだった。残る一頭のギャオスが現れ、吊り橋に向けて光線を発射。ガメラは米森たちを庇うように、光線を手で受けた。米森はガメラが味方であると理解した。
ガメラはギャオスを追って東海地方へ向かって移動していった。新幹線でガメラを追う浅黄の右手には痣が出来ていた。ガメラがギャオスの光線を受けたとの同じ場所だった。ガメラ出現のために新幹線は三島で運転を取りやめた。浅黄は駅構内のテレビで、ガメラが陸上自衛隊の81式短SAM(誘導弾)により富士山の裾野に撃ち落されたことを知った。浅黄は駅前でタクシーを拾い、既に立ち入り禁止になっている富士山まで行ってくれるよう運転手に頼んだ。
タクシーは富士裾野の検問を強行突破し、ガメラが陸上自衛隊から攻撃を受けているところが見えるところまでやってきた。陸自の執拗な攻撃に耐えるガメラを心配に見守る浅黄。そこへギャオスが現れ、口から光線を発射。ガメラが左腕を負傷すると浅黄の左腕からも鮮血が流れ、彼女は気を失った。病院に運び込まれた浅黄は、草薙からガメラが海に逃げたことを知らされると、安心して眠るのだった。
長峰からギャオスの染色体の調査を依頼されていた九大の後輩・道弥は、驚くべき結果を長峰と米森に伝えた。ギャオスの染色体は一対だけだった。経てきた進化の課程が記録されていない無駄のない染色体であり、それが意味するところは、ギャオスが作られたものだということである。また、メスだと思われていたギャオスの染色体には、XX型の他にYY型もあった。それは、ギャオスがオスに転換あるいは単為生殖で繁殖も可能性も示唆していた。
ギャオスの被害が継続して出ているにも関わらず、ギャオス保護という内閣の決定は変わらなかった。他方、ガメラについては抹殺という方針に危機感を抱いた米森と長峰は、頼みの綱として、浅黄の協力を期待した。彼女には、勾玉を使ってガメラと通信する巫女のような力があるのではと考えたからだ。だが、彼女は富士山で倒れて以来、ずっと眠ったままだった。
米森と長峰は、ガメラとギャオスの存在について語りあった。超古代文明は自ら作ったギャオスに滅ぼされた。そこで慌ててガメラを作ったが、間に合わず、未来の文明のために託したのではないだろうか。超古代文明が滅んだ後、ギャオスは耐久卵で休眠し、自分に適した環境になるまで待った。そして、環境破壊により急激な変化した現在の日本の環境が、ギャオスに最適だったのかもしれない。
その夜、東急都心にギャオスが現れ、多量の被害が出た。長峰は斎藤から、内閣が方針を翻してギャオスへの攻撃の決定したことを伝えられると共に、作戦への協力を求められた。翌日、天王洲のビルの一フロアに設けられた作戦指揮所。米森と長峰は、住民が避難して人気の無くなった都心で眠るギャオスを監視した。長峰は、ギャオスの目に遮光版があることを確認。もう光は弱点ではなくなっていた。
短SAMを打ち込まれたギャオスは、すぐに目覚めて飛び立った。短SAMの第二弾は、ギャオスが巧みに逃げ回ったため、誤って東京タワーに着弾。ギャオスは破壊された東京タワーの上に悠然と居座った。
東京から地方へ避難する人々で、あらゆる交通は混乱した。ギャオスの攻撃を避けて空港の発着は停止。株・証券の取引は停止して株価は暴落。円も暴落して、経済に与える影響も深刻な状況になっていた。東京の住民の避難には一週間はかかる見込みであるが、東京に人がいなくれば、ギャオスは別の餌場に移るだけである。
自衛隊がギャオスへの総攻撃を発表した頃、浅黄が長い眠り目覚めた。草薙に伴われて、天王洲の作戦指揮所にやってきた浅黄は、ガメラが来ると米森と長峰に告げた。そして、地響き起こり、地中からガメラが出現。ガメラはすぐさま、東京タワーのギャオスに向けて火炎を発射。これにより、ギャオスが密かに産んで温めていた卵が破壊された。
ギャオスを追うガメラ。さらにその後を、米森、長峰、浅黄、草薙がヘリで追った。ガメラとギャオスは激しい地上戦を繰り広げた後、急上昇して宇宙空間まで飛び出した。ガメラはギャオスを抱きかかえたまま、石油コンビナートへ真っ逆さま。ギャオスもろとも墜落するかに思われたが、ギャオスが光線で抵抗してガメラの腕から離れたため、ガメラだけが墜落、大爆発を起こした。ギャオスは勝利の叫びをあげた。
浅黄は草薙の手を握り、勾玉に祈りを込めた。すると、爆発の火炎がみるみる小さくなり、瓦礫の中からガメラが立ち上がった。爆発のエネルギーを吸収しつくしたガメラは、そのエネルギーを大きな火球にして、ギャオスにぶつけた。ギャオスは光線で応戦しようとするがまったく通じず、頭を吹き飛ばされて立ったまま絶命したのだった。
ガメラはアイコンタクトで浅黄に感謝すると、浅黄の負った傷はすべて癒えた。そして、ガメラは海の中に消えいった。長峰は、ギャオスが世界中に卵を産み付けている可能性があり、脅威に対する備えの必要性を訴えた。次もガメラが来てくれるとは限らないからだ。だが、浅黄はガメラはきっと来てくることを信じていた。