クリスマス・イヴのゲレンデで出会った男女の恋の成り行きを描く青春ドラマ。
ホイチョイ・ムービー第1弾。

私をスキーに連れてって

製作年1987 年
製作国日本
上映時間98 分
色彩カラー



解説
ゲレンデを舞台とし、大ヒットした青春もの。仕事や恋は不器用だが、スキーはプロ級の腕を持つサラリーマンが、恋に仕事に奮闘する様を、三上博史、原田知世らの共演で描く。原作は謎のクリエイター集団“ホイチョイ・プロダクション”で、監督は同グループのメンバーである馬場康夫。馬場の第一回監督作であると共に、同氏の監督により『彼女が水着に着替えたら』、『波の数だけ抱きしめて』と続いた“ホイチョイ・ムービー”の第1作でもある。ユーミンの曲を全編で流して、作品の雰囲気を盛り上げたり、終盤だはスキー・アクションという見どころを作ったりなど、同シリーズのスタイルが既に完成している。
バブル景気に沸いていた真っ只中に発表された作品で、その時代の空気を如実に現した映画の代表とも言える作品である。空気を現したとは言っても、スキー・ブームに便乗したのはなく、逆に、スキー・リゾートの楽しみ方を映画というメディアによって提案するという形になっている。今や映画やテレビは流行を後追いしている状態だが、本作は流行を生み出す意図があり、それは“ホイチョイ・ムービー”の特徴でもあった。実際、本作に触発された若者たちの間で瞬く間にスキーがブームとなり、莫大な経済効果を生み出したという。もちろん、今でもその宣伝効果は衰えておらず、観ているうちにスキーがしたくなってくるくらいである。
不況の底の現代において、逆恨みでもされるように批判され、あまり良いイメージのないバブル景気。しかし、本作で描かれる明るく爽やかな若者たちの生き生きとした姿は、なんと清々しいことだろう。そこは犯罪やセックスは描かれない。リゾート気分を盛り上げるための虚像とは言え、最近、こんな気持ちの良い青春映画はあっただろうか。ひたすら好景気を謳歌する若者たちの無邪気な姿は、バブルを経験した人にとっては、懐かしく感じられるだろうし、そうでない人にとっては、おそらくは微笑ましく感じられるだろう。もしかしたら、「バブルもそれほど悪くなかったのでは」と思えてくるかもしれない。



ストーリー
二十六歳のサラリーマン矢野文男は、会社ではいまいちパッとしないが、スキーだけはお手のもの。クリスマス・イヴの夜、文男は大学時代の仲間、小杉正明、泉和彦、佐藤真理子、羽田ヒロコと行ったゲレンデで、スキー初心者の池上優と出会い、一目ぼれ。楽しいひと時を過ごした。別れ際、仲間たちに背中を押された文男は、思い切って優に電話番号を尋ねたのだった。
東京に帰った文男は、優と会うつもりで電話をかけたが、通じなかった。文男を警戒した優がデタラメな番号を教えていたのだ。がっくりしていた文男だったが、優との再会は意外な形で果たされた。実は、優は文男と同じ会社の秘書課のOLだったのだ。文男の仲間たちは、彼と優をくっつけようと密かに手回し。おかげで、文男と優は親しくなり、恋人として付き合うようになった。
その頃、会社では、スキーの名門ブランド“SALLOT”のウェアを販売するプロジェクトが進んでいた。文男は自分の部署で事務をする傍ら、プロジェクトの手伝いをしていたため、優と会う時間がなかなか取れなかった。ブランドの発表会が開かれるバレンタインデーにはプロジェクトから解放されるため、文男はその日に優を誘い、友人たちと志賀高原にすべりに出かけた。
文男たちが志賀でスキーを楽しんでいた頃、発表会の会場である満座では、業者の手違いで別のブランドの商品が届いてしまっていた。商品開発部の部長・田山雄一郎から連絡を受けた真理子とヒロコは、自分たちの着ている“SALLOT”のウェアを届けるため、優を遺してクルマで出発した。その時、文男、正明、和彦の男三人は、まだゲレンデで滑っていたため、満座での事件を知らなかった。
発表会まであと二時間半。真理子たちが間に合うか心配になった優は、満座で直線で行けるツアーコースを見つけ、一人スキーで出発した。そのコースは冬季は危険であるため、閉鎖されているとも知らずに。優の残したメモを見て、ようやく事態に気付いた文男は後を追った。文男は優に追いつくが、コースを外れてしまい、発表会に間に合うことは絶望的になってしまった。
途方に暮れていた文男と優のもとに、正明、和彦が助けにやって来た。正明と和彦は引き返すつもりだったが、文男がどうしても会場に向かうと言って聞かないため、四人は満座に向けて急いだ。やがて会場に到着したが、そこには既に誰もいなかった。間に合わなかったと肩を落した文男たちだったが、外では先に到着していた真理子とヒロコが、群がるカメラマンのフラッシュを浴びていたのだった。