機械の体に憧れる少年が謎の美女と空をかける機関車で宇宙へ旅立つ。
人気漫画の長編アニメーション化。

銀河鉄道999

原題銀河鉄道999
GALAXY EXPRESS
製作年1979 年
製作国日本
上映時間129 分
色彩カラー



解説
宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をモチーフにした松本零士の同名漫画の映画化。アニメ映画としては異例の興行成績(その年の邦画の一位)を記録し、ゴダイゴによるさわやかに主題歌もヒットした。
物語の舞台は宇宙の交通網が発達した未来。主人公の少年が無料で機械の体が手に入る惑星を目指し、ミステリアスな美女と一緒に果てしない旅をする様を描く。終点に至るまでにいくつもの星に立ち寄り、それぞれの星でのエピソードが語られるロードムービー形式である。81年にいったん完結した物語のすべてををまとめた内容になっているが、漫画版や既に放映されていたテレビ・アニメ版で数十駅におよぶエピソードが紹介されたのに対し、本作で紹介されるのはわずか四駅にとどまっている。
漫画版、テレビアニメ版のいずれとも異なるエピソードや設定の変更がなされているが、特に大きな変更となったのは主人公・星野鉄郎のキャラクターである。漫画版、テレビアニメ版でのまだ幼なさの残っていた少年から年齢が引き上げられ、容姿がやや端正になった上に身長も伸ばされている。作品の雰囲気も児童向けのファンタジーだったテレビアニメ版から、少年の旅立ちと成長を主軸にした青春映画へと変化し、対象年齢も上がったようだ。
原作は松本零士がSLに乗って上京してきた実体験をイメージして描かれているとされるが、本作ではそのイメージがより強くなったようだ。999号で地球を旅発つ鉄郎の姿は、夢を抱いて地方から上京して来る若者そのものである。主人公をはじめ登場人物が理想を語る場面が多く見受けられ、その際の台詞が詩的な表現になっているのが特徴的。その分、人物描写が弱く幼稚な部分があるが、青春映画としてはそのくらいの青臭さは必要かもしれない。荘厳なオーケストラよりも70年代フォークが似合う異色のノスタルジックなSFとなった。
続編としては、「東映まんがまつり」版の短編『ガラスのクレア』を挟み、81年に二年後という設定の『さよなら銀河鉄道999 アンドロメダ終着駅』が公開された。また、98年には新シリーズの序章という位置付けの『エターナル・ファンタジー』が公開されている。関連作としては、ハーロックら宇宙海賊の前日壇『わが青春のアルカディア』が82年に公開されている。



ストーリー
宇宙旅行が発展した未来。宇宙に散らばる星々の間には、銀河鉄道と呼ばれる交通網が張り巡らせていた。機械人間と生身の人間が共存する未来の地球。宇宙海賊キャプテン・ハーロックや女海賊エメラルダスは、少年たちの憧れの的だった。孤児の星野鉄郎も宇宙海賊に憧れる少年の一人。彼は銀河鉄道の旅行センターに張り込み、旅行客から銀河鉄道のパスを奪うチャンスをうかがっていた。機械の体が只で手に入るというアンドロメダ星へ行くためである。鉄郎は幼い頃、人間狩りを楽しむ機械伯爵に母親を殺されていた。機械の体が手に入れば、機械伯爵に復讐できると彼は考えていたのだ。
金持ちの機械人間が銀河鉄道999号の無期限無制限パスを発券した瞬間、鉄郎はそれを奪い逃走した。鉄郎は機械人間の警官に追われるうちに、盗んだパスを無くした上、疲れ果てて倒れてしまった。鉄郎が目覚めると、そこは銀河鉄道の発着駅がある大都市メガロポリスのホテルの一室だった。鉄郎を助けた母親そっくりの女性だった。女性はメーテルと名乗り、自分と一緒に旅をする条件で999号のパスを差し出した。かくして、鉄郎はメーテルと共に、大昔の蒸気機関車を模した999号に乗車することになった。999号は発車すると、鉄郎の胸には母親や仲間との思い出が湧き上がったが、地球を振り返る気にはならなかった。今は機械の体を得るという希望だけが鉄郎を突き動かしていた。
999号のはじめの停車駅はの土星の惑星タイタンだった。駅を降立った鉄郎は、突然目の前の人が撃ち殺されるのを見て仰天。さらに、鉄郎が気をとられているうちにメーテルが山賊にさらわれてしまった。山賊を追いかけようとした鉄郎は、撃たれて気を失ってしまった。鉄郎は見知らぬ一軒家のベッドで目を覚ました。鉄郎を助けたのは、この家に暮らす年老いた女性だった。鉄郎は老女から、この星には好きなことを自由にやっても良いという“楽園法”が布かれていることを知った。鉄郎は山賊の隠れ家を老女から聴き出した。老女はどうしてもメーテルを助けに行くという鉄郎に、帽子とコスモガンを手渡した。
鉄郎は山賊の隠れ家に向う途中、幼い少女の悲鳴を聴いた。鉄郎は、少女を掴んでいた飛行機をコスモガンで撃ち落し、さらに飛行機を操作していた機械人間も撃ち抜いた。落下した少女を保護したのは、メーテルをさらっていった山賊一味だった。山賊の頭のアンタレスは鉄郎の持つ銃を見て、それが世界で只一つ機械人間を倒せる“戦士の銃”だと言った。山賊に隠れ家に連行された鉄郎はメーテルと再会。隠れ家には鉄郎と同じように親を機械伯爵に殺され孤児となった子供たちが大勢いた。鉄郎たちは、アンタレスが子供たちの面倒を見ていることを知った。アンタレスは機械伯爵の居どころについて、伯爵の住まいである時間城のある星をエメラルダスが知っていると言った。だが、彼女と確実に会う方法は分からなかった。
鉄郎とメーテルは、鉄郎を助けた老女の家に戻った。鉄郎から銃のことを尋ねられた老女は、それは息子の物であったが、息子は宇宙へ旅立ったまま帰ってこないこと打ち明けた。老女はずっとこの家で息子のことを待ちつづけているのだという。銃と帽子を譲り受けた鉄郎は、もし宇宙のどこかで同じ帽子をかぶっている男と会ったら、母親に会いに行くよう伝えることを約束した。
タイタンを発った999号の次の停車駅は、太陽系のさいはにある氷の惑星、冥王星だった。駅を出ると、メーテルは用事があると鉄郎に告げ、一人で出かけていった。一人で町を歩いていた鉄郎は、町外れでメーテルを発見。メーテルは氷の上に跪き、物憂げにその下を見つめているようだった。鉄郎が周囲を見ると氷の下には無数の人間が埋め込まれていた。ここは、機械人間が捨てた生身の体が納められた墓地だったのだ。鉄郎はこの墓地の管理人である機械人間シャドーに捕まった。機械の体になることで美しい体を捨ててしまったことを後悔するシャドーは、鉄郎を道連れに氷漬けにしようとした。だが、駆けつけメーテルの一喝でシャドーは鉄郎を解放したのだった。
冥王星を発った999号は、海賊船と遭遇した。海賊船にエメラルダスが乗っていると知った鉄郎は、この機会を逃してなるものかと船に向けて発砲した。海賊船は999号と接続し、エメラルダスが乗り移ってきた。エメラルダスは名乗り出てきた鉄郎に銃を受けるが、戦士の銃を見ると、それをどこで手に入れたのか尋ねた。“戦士の銃”の持ち主はエメラルダスの最愛の人物トチローだったのだ。鉄郎に時間城ある星を尋ねられたエメラルダスは、次の停車駅であるトレーダー分岐点だと言った。機械伯爵はそこを宇宙中から集まってくる仲間へのコレクション披露の場としているのだという。エメラルダスは鉄郎に、たった一つの限りある命を大切にするように言うと、去っていった。
トレーダー分岐点のある惑星ヘビーメルダーは、銀河鉄道のあらゆる空間軌道が集まる宇宙の大分岐点で、旅人が一度は訪れるフロンティアだった。鉄郎は時間城の情報を得るため、町のうらぶれた酒場を訪ねた。だが、この星の生き字引を自称するマスターは、機械伯爵のことを訊かれた途端に顔色を変え、鉄郎を裏口に引っ張っていった。機械伯爵を殺すという鉄郎の意志がかたいことを知ったマスターは、伯爵の動きを知っている男がガンフロンテイア山の麓にいることを教えた。
鉄郎はマスターに教えられたとおり、ガンフロンテイア山の麓に向った。そこにあった廃船の中から出てきたのは、鉄郎と同じ帽子をかぶった男だった。タイタンで出会った老女の息子で、エメラルダスの最愛の人トチローに間違いなかった。トチローは長い放浪生活の末に宇宙病にかかり、今はすさんだ生活を送っていた。トチローは鉄郎に、時間城がガンフロンテイア山の峯にあることを教えると共に、機械伯爵の弱点が頭であることを教えた。トチローは鉄郎にすべてを託すと、自分を葬るためのレバーを引いて欲しいと頼み、ベッドに横になった。鉄郎は涙を流しながらレバーを引いた。
トチローの墓を立てた鉄郎は、機械伯爵の手下たちに襲われ、戦士の銃を奪われてしまった。ぼろぼろの体で町の酒場に戻った鉄郎は、伯爵の手下に銃を返すように迫るが殴り倒されてしまった。撃ち殺されそうになった鉄郎は、酒場に現れたキャプテン・ハーロックに助けられ、コスモガンも奪い返してもらった。親友だったトチローの墓を立ててくれた鉄郎へのハーロックからの礼だった。鉄郎がハーロックと一緒にホテルに戻ると、ホテルの前にメーテルと話すエメラルダスがいた。ハーロックはエメラルダスにトチローが死んだことを告げたのだった。
ハーロックたちと分かれた鉄郎は、トチローに教えてもらったンフロンテイア山の峯に一人で向かい、時間城に乗り込んだ。機械伯爵を探して広間にやってきた鉄郎は、部屋に母親が剥製となって飾られているのを見た。怒りと悲しみに震えていた鉄郎は、いつのまにか伯爵とその手下たちにとり囲まれていた。鉄郎は伯爵の手下に化けて城にもぐりこんでいたたアンタレスと共に、伯爵たちと銃撃戦を繰り広げた。鉄郎は伯爵の腕を破壊するが、命乞いをしはじめた伯爵にひるみ、時間コントロール室に逃げ込げこまれてしまった。
アンタレスは歴戦で体残ったエネルギー弾の不発弾を炸裂させ、自らの命を賭して時間コントロール室の壁を破壊。彼の最期の言葉は「メーテルに気を許すな」だった。ついに、鉄郎は伯爵の頭を打ち抜き母の敵を討った。伯爵が倒れた弾みで時間コントロールのレバーが降ろされた。鉄郎は急速な時の経過とともにみるみる錆が広がり崩壊していく時間城から脱出。だが、鉄郎の復讐はこれで終わったわけではなかった。彼は機械の体になることで、あたたかい人の心を失うことの愚かしさに気付いたのだった。鉄郎は外で待っていたハーロックとメーテルに、アンドロメタ星を破壊し、機械帝国を滅ぼすことを宣言した。
鉄郎の長い旅が終わり、999号は終点に到着した。だが、駅に降立った鉄郎はそこではじめてこの駅の名が“惑星メーテル”であることを知った。なぜ、メーテルと同じ名前なのか? 鉄郎の前に機械の駅員が現れ、メーテルに敬礼した。鉄郎は駅員の話から、メーテルがこの星を支える部品にするために自分を旅に連れ出したと知り、愕然とした。鉄郎は機械の駅員にひっぱられ、この星の女王で機械帝国の支配者であるプロメシュームの前に連れていかれた。そこで鉄郎は、生きたままネジにされるという自分の運命を言い渡された。
鉄郎がネジにされるために連れて行かれた手術室にメーテルが駆けつけてきた。メーテルはプロメシュームの娘である機械人間だった。彼女のペンダントのカプセルに精神を移した父ドクター・バンは、機械で宇宙を支配しようとするプロメシュームに反対し、半機械化世界を目指していた。ドクター・バンは、鉄郎を愛してしまったメーテルに、カプセルを星の中枢に投げ込み、この星を破壊するよう呼びかけた。実はメーテルが途方もない時間をかけ、人間たちをこの星に送り込んだのも、同じ志を持つ彼らの力で機械帝国を滅ぼすためだったのだ。鉄郎は、自らの手でこの星を滅ぼせなかったメーテルに変わり、カプセルを解き放った。
カプセルが中枢に投げ込まれた瞬間、地響きが起こり星の崩壊が始まった。この頃、地上と空では、鉄郎を救いに来たハーロックが、機械帝国の軍隊と激闘を繰り広げていた。鉄郎はメーテルの手を引き、999号の停車する駅へと急いだ。駅へと走る最中、鉄郎はメーテルの体が鉄郎の母親を基に作られていたことを知った。鉄郎とメーテルの飛び乗った999号は、星が爆発する直前に飛び立った。鉄郎は999号を追ってきたプロメシュームの亡霊に苦しめられるが、食堂車の機械のウェイトレレス、クリアが命かげで守った。こうしてプロメシュームと惑星メーテルは完全に滅んだのだった。
鉄郎とメーテルの別れの時が来た。メーテルは昔の体を取り戻すため、冥王星へ旅立つことになったのだ。メーテルは、また逢えるかどうか問う鉄郎に、「いつか私が帰ってきてあなたのそばにいても、あなたはそれに気付かないでしょう」と答え、彼にキスをした。鉄郎はメーテルを乗せて発車した999号を、その姿が見えなくなるので追い続けたのだった。



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