大組織に組の乗っ取りを仕掛けられた極道の妻が
復讐のため若いヤクザと組んで一世一代の賭けに打って出る。
シリーズ第2作。

おんな
極道のたちU

製作年1987 年
製作国日本
上映時間119 分
色彩カラー



解説
極妻シリーズの第2弾。主演は前作の岩下志麻から交代し、十朱幸代が極妻を演じる。ストーリーは、極妻が親分である夫に代わって対抗組織への復讐を果たしていくというシリーズの定番のものだが、背景の事情は同シリーズの他の作品と少し様子が違う。極妻が夫に代わって立ち上がるきっかけというのは、他の作品では夫が服役していたり死亡したするというもの。しかし、本作では、夫が頼りないという消極的な理由で極妻が立ち上がるのである。また、極妻が血を一滴も流さずに復讐を遂げようとするなど、ハードな展開を好む同シリーズの中でも異色の作品だ。
極道の妻として超然と構えていた岩下に比べると、十朱はインパクトにかけているように感じるかもしれない。目の前の親分衆に圧されて強がりを言ってしまなど、弱さも見せてしまう極妻だ。しかし、夫を気遣いながらも若いヤクザとの情愛におぼれるなど、極道の妻である前に女としての主人公を描き、人間ドラマとして魅力を出している。すなわち本作は、一人の女であった主人公が、覚悟を決めて一人の女親分として自立していく様を描いた物語なのである。はじめに弱さを印象付けた後、様々な壮絶な体験を経て、いよいよ満を持して吐かれるラストの啖呵は総会。極妻としての成長を表現した十朱の繊細な芝居にも注目。
前作に引き続き出演したかたせ梨乃は、ヤクザを恋人に持つ子連れのヌードモデルというカタギとヤクザの中間のような人物に扮している。ヤクザと縁を切りたくても切ることができずに苦しむ彼女の物語が、十朱の極妻の対比として同時的に語られていく。こちらも極妻の物語と同じくらい見ごたえがあり、特にかたせの文字通りの体当たりの芝居は必見だ。また、出番は少ないものの、極妻の頼りない夫に扮した藤岡琢也のコミカルな芝居も良い味を出している。



ストーリー
大阪港南市に本部を置く極道・重宗組。近頃は、建設が予定されている新空港の利権を狙い地上げ屋に勢力を注いでいた。だが、重宗組の縄張りで勝手に工事を進める“新空港都市開発社”なる組織が現れた。組長の妻・遊紀はそれをシマ荒らしと見て、新空港都市開発社の本部のある和歌山に若い衆を偵察に行かせた。若い衆が、新空港都市開発社が名義だけの会社であることに気付いた頃、大阪の遊紀のもとに夫の孝明が撃たれて重傷を負ったという報せが入った。
和歌山にヌードモデルをしながら女手一人で幼い娘の真由を育てる榎麻美という女がいた。彼女の親は極道、真由の父親も極道だった。極道の子として辛い思いをしてきた麻美は、同じ思いをさせたくないと思い、極道とは縁を切ったのだった。ある夜、麻美は港で身投げをしようとしていた若い女を助けた。女の名は津村悦子。重宗の愛人だった。重宗を撃った彼女は殺してしまったと思い、自殺をはかったのだ。
同じ夜、重宗組組員の牧村がなじみのスナックで飲んでいると、“新空港都市開発社”の名刺を持つ前島という男が店内に居合わせた。牧村は前島を捕まえようとするが、取り巻きの田端というチンピラに撃ち殺された。田端が自首したことで、新空港都市開発社の黒幕に大組織・萬代組系の河東組の影があることが明らかになった。
翌日、悦子が逮捕された。シマ荒らしを危惧していた遊紀は胸をなでおろした。療養中の重宗は女に撃たれたことを遊紀に問われても反省の色なし。だが、牧村が殺されたことを知ると、以前からシマを狙っていた萬代組の仕業と決めてかかった。遊紀に抗争を仕掛けるよう興奮しながら支持するが、相手は一万五千でこちらはせいぜい五十。勢いだけで策のない重宗の頼りなさに、遊紀はあきれ返るのだった。
ある日、遊紀は萬代組傘下の磐城組組長と河東組組長に呼び出された。色々と苦しい立場に置かれた遊紀への助け舟という話だったが、萬代組が重宗組を3億で買収するという持ち掛けだった。遊紀は「金で大紋は売れない」と突っぱね、河東に新空港都市開発社の関係を追及するが、逆に開き直られてしまった。遊紀から報告を受けた重宗も、大紋に拘るどころか買収も辞さないようだった。
遊紀は金の相談のため、福島の女親分・八橋松代のもとを訪ねた。遊紀は八橋の紹介で、先頃出所したばかりのヤクザ・木本燎二と知り合った。木本は磐城の子分であったが、組の方針に背いて抗争を起こしたため絶縁されていた。遊紀は木本や八橋と賭けポーカーに講じて大儲けをするが、それが木本のイカサマのおかげであることに気付いていた。木本は遊紀の様子から金を借りに来たことを見抜き、わざと負けたのだった。遊紀は木本の男気に惚れ、彼に抱かれた。
木本はマニラに旅立つ予定だった。頼りにならない重宗に愛想をつかせていた遊紀は、木本についていくことを決意していた。大阪に戻った遊紀は荷物をまとめて空港へ向おうとするが、重宗が今度は病気で倒れたという報せを受けた。病院に駆けつけた遊紀は、重宗の病状が手の施しようもないほど進んでいて、余命も後わずかであることを知ることになった。
一方、木本は空港へ向かう道すがら、人ごみの中に麻美と真由を発見。麻美は木本の元恋人だった。マニラ行きを取りやめた木本は麻美の後をつけ、アパートを突き止めた。だが、アパートを訪ねた木本は、麻美から帰ってほしいと涙ながらに懇願されることに。麻美に「極道が嫌い」とはっきり言われた木本は極道から足を洗うことを決意。ダンプの運転手としてカタギの人生を歩み始めた。
木本はカタギになる努力を重ね、そのことを麻美に必死にアピールし続けた。だが、理解されるどころから、ますます拒絶されてしまうのだった。そんなある日、木本は海岸で遊紀と再会した。木本は真由のために作った定期預金通帳を遊紀に預けた。遊紀は通帳を持って麻美を訪ね、木本への本当の気持ちを確かめることに。麻美はうつむきながらも、木本とヨリを戻すつもりはない言い切った。遊紀は木本の身柄を引き受けることにした。
ある夜、木本はダンプで寝泊りしていたところを河東たちに見つかった。木本は極道から足を洗うつもりでいると訴えた。だが、河東は萬代組のシマに居続ける木本を許さなかった。河東は木本の大切にしている麻美と真由の写真を見つけると、三人でシマから消えるよう最後通告をした。怒りの木本は河東を討つ覚悟を固めるが、そんな彼の様子を見た遊紀はある提案をした。
来春、磐城は萬代組の五代目となり、韓国の斉州島で襲名披露が行われることが決まっていた。遊紀は木本の博打の腕を使い、韓襲名披露の後に行われる花会(花札賭博)で、血をも流さずに萬代組に一泡吹かせようというのだ。木本は娘のため。遊紀は極道の妻の意地のため。利害の一致した二人は戦う決意を固めると、資金を調達のため全国の賭場をめぐる旅に出た。
そして、迎えた磐城の襲名披露。花会で札を打っていた遊紀が途中で席を立った。賭場を離れた遊紀が向かったのは、磐城の部屋。二人は重宗組の買収の件について話をつめた。話がまとまり機嫌が良くなった磐城に一本の電話がかかってきた。遊紀の代打ちが木本だと知らされ慌てる磐城だったが、時に既に遅かった。イカサマで大金を手にした木本は、遊紀と交代すると足早に会場を後にした。
磐城の追っ手をまいた木本は麻美のもとに行き、手に入れた大金を渡した。逃げなければならない木本に出来る精一杯のことだった。麻美は去ろうとする木本に、自分と真由も連れて行ってほしいと頼んだ。木本は麻美を強く抱きしめた。が、次の瞬間、木本の胸を銃弾が貫いた。追っ手に見つかったのだ。木本の唐突な死に錯乱した麻美は、銃を手にすると、磐城の子分たちの乗る車の前に飛び出した。
車にはねられた麻美は病院に運ばれたがまもなく死亡した。病院に駆けつけた遊紀は、木本と麻美の死に責任を感じ、一人残された残された真由に「堪忍して」と泣き叫んだのだった。その後、遊紀は重宗組の事務所を引き払い、組員を解散させた。萬代組の総本部に一人で向かった遊紀は、磐木に全資産を預ける代わりに、もう一度、重宗組の看板を上げること宣言。「喧嘩を売る気か」と憤る磐木に、遊紀は「血の一滴がかれるまで戦うつもりや」と啖呵を切ったのだった。



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