特命を受けてジャングルをゆくコマンド部隊と、
人間狩りを好むエイリアンとの死闘を描くSFアクション。
プレデター
原題 | PREDATOR |
製作年 | 1987
年
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製作国 | アメリカ |
上映時間 | 107
分
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色彩 | カラー |
シュワルツェネッガー主演でマクティアナン監督の出世作となった作品。シュワに『ランボー』みたいなことをやらせたかったことが見え見えで、観客のご機嫌をうかがうかのように、前半はシュワが銃をぶっ放すシーンが中心に描かれる。シュワが目立ちすぎて、肝心のプレデターの影が薄い。加えて、妙にスレンダーなスーツアクトは迫力不足だし、最期も拍子抜けするほどあっけない。やはり、シュワ主演の映画なのである。一見すると、『ランボー』を描きたかったのか『エイリアン』を描きたかったのかが良く分からず、なんともバランスの悪い作品という印象だ。しかし、ベトナム戦争映画とSFアクション映画の奇跡的な融合を果たしたという点では、画期的な作品と言える。実際にはベトナム戦争の話ではなく、登場人物の兵士にベトナムやアフガンやカンボジアの思い出話をさせ、それらから距離を置いているが、背景は明らかにアジアでの近代戦争を意識したものである。
物語の設定も画期的だったが、映像的演出も当時としては画期的だった。熱(赤外線)を感知するプレデターの知覚をサーモグラフィーを用いて表現。また、プレデターが未知のテクノロジーで背景と同化する様もSFXで表現。それは後に“光学迷彩”と名付けられて有名になった。他の作品で“光学迷彩”が登場する際は、決まって本作にならった表現になるといっても過言ではない。プレデターの特殊な知覚や能力をうまく生かしたストーリー展開も良好。プレデターの“光学迷彩”に、シュワは体に泥を塗って対応を下げるという“熱迷彩”で対抗。互いの姿が見えない状態でのクライマックス死闘は、なかなか格好良いのだが、斬新過ぎで当時はまだ理解されなかったようだ。それらの斬新さが時代を越えて評価されてか、続編はひとつしか作られなかったにもかかわらず、プレデターはSF映画を代表するモンスターとして認知されている。その証拠として、エイリアンと共演する映画『エイリアンVS.プレデター』も作られた。
五人の部下たちを伴ない、ジャングルの野営地に降り立ったコマンド部隊のダッチ少佐は、彼を呼び出した将軍から状況の説明を受けた。この国の大臣を乗せたヘリが墜落。連絡のとれなくなった大臣を救出することがダッチに課せられた任務だった。ダッチは野営地でかつての戦友のディロンと再会。彼の指揮の下、ダッチと部下たち七人はジャングルの奥地に向けて出発した。
出発して間もなく、ダッチたちはヘリの墜落現場に到着。ヘリは熱線追尾ミサイルで撃墜された形跡があり、大臣たちの姿はなかった。大臣たちは、敵ゲリラにさらわれたようである。ところが、少し離れたところでダッチたちは思わぬ光景を目の当たりにすることに。全身の皮を剥がれて木に吊るされ死体だった。死体のひとつはグリーンベレーの兵士、ホッパーであることが判明。ダッチの隊の前に、グリーンベレーが派遣されていたのだ。
ジャングルの中をしばらく進んだ一行は、ゲリラの村を発見した。人質が捕らわれていることを確認したダッチたちは、激しい攻撃を仕掛けることでゲリラを撃破した。だが、一歩遅く、人質は全員殺されてしまった後だった。ダッチたちは引き上げることにしたが、ディロンはゲリラの作戦計画に関する書類を発見して歓喜していた。人質の中に、CIAやソ連の人間がいることも不審だった。実は、本当の目的はその書類を入手することであり、大臣の救出の任務はダッチを担ぎ出すための方便だったのだ。「兵士は道具」と考えるディロンと、部下を大切にするダッチの間に対立が生じた。
ディロンは村のにいた現地の女性アンナを道案内役として連行した。一行はジャングルの中をさらに進んでいったが、誰もがただならぬ気配に気付いていた。インディアンの戦士の出身のビリーでさえ、木の上にいる姿の見えない何かの存在に怯えきっていた。一行がホッパーを殺したであろう未知の存在の正体を探ろうと集中している隙を突き、アンナが逃走した。ダッチの部下ホーキンスはアンナを追って藪の中へ。さらにその後をダッチたちが続いたが、その先で見たものは、体を血でぬらしたアンナと、その近くに散乱する人間の内臓だった。ホーキンスの死体はなかった。
ホッパーやホーキンスを殺した未知の存在が姿を表したのは、ダッチの部下のマックとその親友のブレインが二人でいる時だった。その存在は音もなく近づきブレインを殺したが、その瞬間、マックはおかしな影のようなものを確かに見た。マックの絶叫を聞きつけたダッチたちは、彼が指した森に向かい銃を乱射。ダッチたちが徹底して焼け野原と化した森に死体や血痕などの痕跡は見つけることができなかったが、アンナだけは葉についた緑色の体液に気付いていた。
ダッチたちは救助を要請して、この場に待機することを決断した。周囲に厳重な防御線を張り、夜は一人ずつ交代で歩哨に立つことに。はじめに歩哨に立ったマックが、イノシシを未知の存在と間違えて大騒ぎしている間に、ブレインの死体が忽然と消えた。死体をさらって行った存在は、防御線をなんなくかいくぐったのだ。未知の存在の目的は死体に違いなかった。しかも、一度に一人ずつ仕留めるその手口は、まるでハンターのようだった。ヘリの到着を待っても、あの未知の存在が入る限り、ここから脱出することは不可能に近かった。
翌日、ダッチたちに追及されたアンナは、未知の存在が昼間の攻撃の際に怪我を負っていることを打ち明けた。アンナの話では、今年のように暑い夏には、決まって男たちが酷い殺されかたをするのだという。それがこの土地の言い伝えになっていた。相手を倒せる可能性に希望を見出したダッチは、さらに防御線を厳重にするとともに、一部だけ手薄にした箇所で未知の存在がやってくるのを待ち伏せることにし。近くに来ているはずなのに、なかなか姿をみせない敵。ダッチは自ら囮となって進み出た。罠にはまった敵はダッチに向けて攻撃を仕掛けた。
ダッチたちとの先頭の最中、カメレオンのように背景に溶け込んでいた敵が姿を見せた。それは人間のような形をした怪物だった。敵は森の中へ逃げ出ていったが、マックは親友の仇を討つべく、怪物の後を追跡した。救助のヘリが近くまで来ていたが、ディロンはこの時ばかりはダッチとの争いをやめて、彼に先に行くよう促すと、マックと共に怪物を追った。物陰から怪物の姿を捉えたマックは勝利を確信していたが、再び姿を景色に溶け込ませた怪物に頭を打ち抜かれて死亡した。それを目撃したディロンも成す統べなく、怪物の餌食となった。
ヘリの着陸地点に向かっていたダッチたちは、ディロンの叫びを聞いた。ビリーは覚悟を決め、姿見せずに近付いてきた怪物に自ら身を晒した。生き残ったのは、ダッチとアンナと怪我を負ったダッチの部下ポンチョの三人。ポンチョとダッチは追ってきた怪物の発した光線に撃たれてその場に倒れた。かろうじて急所を外したダッチは、アンナに先に行くよう叫び、怪物と対決。ダッチは逃げ場を失い崖から滝壷に転落した。岸に泳ぎ着いたダッチを執拗に怪物が追ってきた。だが、なぜか、怪物は目の前にいるダッチの姿に気付かず、代わりにネズミに向けて攻撃を仕掛けていた。怪物は熱で対象をとらえるため、泥で体温の下がったダッチを認識できなかったのだ。
ダッチは怪物との最後の戦いに備え、入念に罠の準備を整えた。日が暮れた後、ダッチの雄叫びが決戦の合図となった。ダッチは雄叫びを聞きつけてやってきた怪物を松明の熱で誘導して罠に落とそうとしたが、もう少しのところであえなく失敗。ダッチが体温を下げるために体に塗っていた泥のカモフラージュも、ついに怪物に見破られてしまった。怪物はおもむろにマスクを外し、醜い正体を現すと、恐るべき力でダッチを圧倒した。
怪物に突き飛ばされたのは、ダッチが自ら仕掛けた罠の中だった。ダッチは怪物を罠の中へ誘い込み、その頭上に罠の仕掛けの一部であった丸太を落下させた。ダッチは、丸太の下敷きとなり動けなくなった怪物に「お前はなんなんだ?」と尋ねた。怪物は質問に答える代わりに、「お前はなんなんだ?」とダッチの言葉をオウム返しすると、腕のコントローラを操作した。怪物が自殺することに気付いたダッチは、急いでその場から離れた。次の瞬間、ダッチの背後で怪物は大爆発したのだった。