某国のクーデターへの協力を強要された元コマンド部隊のエリートが、
人質にとられた娘の奪還に走るバイオレンス・アクション。
コマンドー
原題 | COMMANDO |
製作年 | 1995
年
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製作国 | アメリカ |
上映時間 | 90
分
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色彩 | カラー |
『ターミネーター』で知名度を得たシュワルツェネッガー主演のアクション作。それ以前の主演作というと、『コナン・ザ・グレート』くらいなので、実像に近い人間の役としては、初めての作品ということになる。普通の人間の役とはいっても、その描かれ方はほとんど殺人アンドロイド。故障した車を山の上から落し、勢いのついたその車に乗って敵を追いかけてみたり、離陸する飛行機からパラシュートなしで飛び降りても平気だったり、初手から超人アクションの大盤振る舞い。その後も、電話ボックスを投げ飛ばしたり、横倒しになった車を自力で立て直したりぐらいは朝飯前の大活躍。つまり、マンガでしか見られなかった、ありえないほどのな強さの表現を、スクリーン上で存分に堪能できる作品なのである。
娘を救うためとはいえ、商店から武器を強奪し、邪魔する人は誰でも殺しまくり、という脚本は無茶苦茶だが、そこは、やはり『ランボー』を意識しているようだ。クライマックスは、敵のアジトである孤島でのゲリラ戦。素手でもターミネーター並みに強いシュワが、銃火器を担いで、“キチガイに刃物”もとい“鬼に金棒”の活躍で敵を壊滅に追いやっていく。シュワに撃たれた兵士たちが、紋切り型のリアクションをとりながらバタバタと倒れていく様はまるでシューティングゲーム。本家『ランボー』と違い、戦うことについて本人にまったく痛みが伴っていないところは、良し悪しかもしれないが、ゲーム感覚の痛快さを追及するのならば、それは正しい選択といえる。
監督が『処刑教室』のマーク・L・レスターというところは、B級映画ファンの興味を引くところなのかもしれないが、注目はやはり、製作がシルヴァー&ゴードンであるというところ。おそらく本作が、彼らがはじめてプロデュースしたバイオレンス・アクションということになるのだろう。後半、やや銃に頼り過ぎなところは、肉体派のシュワ主演作として評価の分かれるところだが、この後、シルヴァー&ゴードンが「リーサル・ウェポン」シリーズや「ダイ・ハード」シリーズにより、90年代に一大バイオレンス・アクション・ブームをもたらすことを思えば、その記念碑として本作を記憶に止めるべきなのかもしれない。
元コマンド部隊のメイトリックス大佐は、現役を退いた後、娘のジェニーと二人、山奥で平穏に暮していた。ある日、メイトリックもとに、コマンド部隊の上官であるカービー将軍が訪ねて来た。メイトリックスの部下たちが何者かに次々と殺されていることを教えにやってきたのだ。カービーはメイトリックスに注意を促し、護衛を二人置いて去っていった。
だが、カービーが去った直後、物陰から隠れていた男たちが現われて、護衛の兵士を襲撃してきた。メイトリックスは、ジェニーに隠れるように言いつけると、男たちに対抗するために武器を取りに行った。だが、メイトリックスが目を離した隙に、ジェニーは男たちにさらわれてしまった。メイトリックスは、エンジンを壊されていた車を押しながら男たちを追跡するが、逆に男たちに囲まれてしまった。メイトリックスは、娘をさらった男たちの中に、殺されたはずのかつての部下、ベネットを見つけて唖然とした。次の瞬間、メイトリックスはベネットに胸を撃たれて意識を失った。
ベネットが撃ったのは麻酔弾だった。やがて、メイトリックスは、ベネットたちのアジトで意識を取り戻した。ベネットの黒幕はバルベルト国の元大統領アリアスだった。彼は、かつて、バルベルトを独裁支配していたが、メイトリックスの活躍により、大統領の座から下ろされていた。アリアスが裏切り者のベネットらと、メイトリックスの部下を殺していたのは、カービーに居場所へ案内させるためだった。アリアスは、大統領に返り咲くため、現大統領のベラスケスの暗殺をメイトリックスに命じた。
ジェニーを人質にとれられたメイトリックスは、バルベルトまで空路で連れて行かれることになった。だが、メイトリックスには、たとえベラスケスを殺したとしても、ジェニー共々殺されることは分かっていた。旅客機に乗せられたメイトリックスは、同乗した見張りを殺すと、飛行機後部の貨物室に向かった。そして、離陸し始めた旅客機から飛び降り、湿地の上に着地した。旅客機がバルベルトに着くのは十一時間後。裏切りがばれる前に、ジェニーを救出しなければなかなかった。
その頃、空港では、見届け役のサリーが、メイトリックスが出発したことを、アリアスに電話で報告していた。仕事を終えたサリーは、構内で見つけた美女、シンディに声をかけ、断わられてもしつこく後をつけ回した。サリーをの後を追っていたメイトリックスは、駐車場でシンディを捕まえ、彼女に協力を求めた。メイトリックスはシンディに車を運転させ、サリーを追跡した。
サリーが向かったのはショッピングセンターで、ここで人と会う約束だった。サリーがレストランに入ったのを見届けたメイトリックスは、シンディに、誘惑して連れ出してくるよう頼んだ。だが、シンディは、「娘がさらわれた」などと訳の分からないことしか言わないメイトリックスを信用せず、近くにいた警官に助けを求めた。警官に囲まれたメイトリックスは、凄まじい力で抵抗。シンディの姿を発見して店の外に出たサリーは、警官と格闘するメイトリックスを見つけて、電話ボックスへ。メイトリックスは、電話ボックスを担ぎ上げて、アリアスへの連絡を阻止した。
メイトリックスは、エレベータで駐車場へ向かうサリーを必死で追跡。騒動に巻き込まれ、警察に追われる身となってしまったシンディは、車で逃げたサリーを追うメイトリックスに着いていくことに。サリーの車は夜の町を抜け、郊外へ向かって走りつづけたが、ついにメイトリックスに追い詰められて横転した。メイトリックスはサリーに迫り、ジェニーの居場所を追及した。だが、口を割らないため、崖から放り落としたのだった。
メイトリックスとシンディは、サリーの持っていた鍵を手がかりに、仲間との待ち合わせ場所と見られるモーテルに向かった。メイトリックスたちがモーテルの部屋で、ジェニーの居場所につながる手がかりを探していると、サリーの仲間のクックがやってきてしまった。メイトリックスとクックは格闘になった。そのうち、クックは倒れた弾みで背中を貫き、死んだのだった。
クックの口からは手がかりは得られなかったが、クックの車の中で小型飛行機用の燃料の発想票を発見した。メイトリックスはシンディは、発想票の住所にある倉庫へ向かった。倉庫には既に飛行機はなかったが、そこに残されていた手がかりから、飛行機の目的地がサンタバーバラ沖の孤島で、飛行機が水陸両用であることも分かった。メイトリックスたちは、水陸両用の飛行機が多く停泊するパシフィック埠頭に向かうことにしたが、その前に武器をそろえることに。
タイムリミットまで五時間。メイトリックスは、閉店後の郡放出品ストアに重機を使って押し込み、ナイフや銃を大量に盗み出した。だが、警報を受けて駆けつけた警官に取り囲まれると、抵抗せずに彼らに従った。メイトリックスは警察に連行されて行ったが、シンディは隠れていて警察に気付かれなかった。シンディは、警察車両をロケットランチャーで砲撃し、メイトリックスを救出した。
パシフィック埠頭に向かったメイトリックスはシンディは、そこに停めてあった水陸両用飛行機に乗り込んだ。二人は、銃撃してきた港の警備員に応戦しながら、飛行機を離陸させた。その頃、郡放出品ストアでの騒動をきっかけに、メイトリックスの足取りを知ったカービー将軍も、部下の兵士たちと共に島へ向かおうとしていた。軍の演習区域を横切るメイトリックスたちの飛行機は、軍のレーダーに捕まらないように海面近くの低空を飛び続けた。
朝になり、メイトリックスとシンディは、アリアスのアジトのある島に着陸。その頃、バルベルト行きの旅客機も十一時間の旅を終えようとしていた。メイトリックスは、シンディにカービー将軍に連絡するよう頼むと、完全武装してアリアスのアジトへ向かった。メイトリックスは、ゲリラ戦法と激しい銃撃を繰り広げながら、アリアスの兵士たちを次々と倒していった。
バルベルトでは、アリアスの部下たちは、到着した旅客機の中からメイトリックスが出てくるのを待ち受けていた。だが、代わりに出てきたのは仲間の死体だった。連絡を受けたアリアスは、ベネットにジェニーを殺すよう命令。だが、ジェニーは一足早く、監禁されていた部屋から自力で脱出していた。ジェニーは、ベネットに追われて地下室へ。一方、メイトリックスは、アジトでアリアスと対決していた。アリアスを撃ち殺したメイトリックスは、ジェニーの声が聞こえてきた地下室へ向かった。
地下のボイラー室でジェニーを探していたメイトリックスの前に、ジェニーを人質にしたベネットが現われた。メイトリックスに銃口を向け、引き金を引こうとするベネット。絶体絶命のメイトリックスだったが、ベネットを巧みに挑発し、ナイフでの一騎打ちに持ち込んだ。自ら戦いを教えたかつての部下を相手に、苦戦を強いられたメイトリックスだが、やがて形勢逆転。焦ったベネットが銃を取り出した。だが、メイトリックスはすかさず近くのパイプを引きちぎり、ベネットの腹に突き立てた。
アリアスとベネットを倒したメイトリックスはジェニーを抱きかかえて、シンディのもとへもどった。海岸で待っていたカービーは、コマンド部隊の再生をメイトリックスに持ちかけた。だが、メイトリックスはそれを断わり、ジェニー、シンディと一緒に去って行ったのだった。