瀬戸内海の小島・獄門島で旧名家の跡取りをめぐる惨劇が始まる。
市川崑&石坂浩二の金田一シリーズ第3弾。
獄門島
製作年 | 1977
年
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製作国 | 日本 |
上映時間 | 141
分
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色彩 | カラー |
『犬神家の一族』、『悪魔の手毬唄』に続き、監督・市川崑、主演・石坂浩二のコンビで映像化された金田一耕助シリーズの3作目。1949年に片岡千恵蔵版・金田一の第2作として既に映画されていた作品の再映画化でもある。大きな明朝体のタイポグラフィによるタイトルクレジット。「土ワイ」や「火サス」に影響を与えたと思われるショック演出とラストの大演説。人気シリーズとして乗りに乗っていた頃の作品で、当初は本作でシリーズは終了して三部作となるはずだったが、好評につき、5作目までシリーズは続けられることになった。犯人を原作から変えたことが話題となったが、犯人探しのミステリーよりも、モダンな映像美と不気味な雰囲気が重要な映画なので、原作ファン以外には関係がなかったようだ。
日本の旧家を舞台に、古い因習や伝説にからめて巻き起こる、連続殺人という名の究極のドメスティック・バイオレンスを、目撃者的な立場にある探偵・金田一に語らせるという定番の物語。描かれるのは血なまぐさく悲劇的な事件だが、相変わらずどんくさい金田一や、当てずっぽうの推理で捜査を自ら混乱させる等々力警部のユーモラスな面や、浅野ゆう子ら演じる三人娘のテンションの高さが際立っている。また、家の中のシーンでは照明は落としてあるものの、外のシーンは夏の日差しが強い。さらに、舞台の周囲は海に囲まれ、音楽も南国風であるため、これまでの漆黒の金田一シリーズとは若干、雰囲気が明くるなっているが、エンターテインメント性の高い一作に仕上がり、シリーズ最高傑作との声もある。ちなみに、トリックが明らかになるキーワード「キ違いじゃが仕方がない」は、放送コードの都合で、音声が消されたり、「キが違っているが……」などと言い換えられたこともあるようだ。
終戦からまだまもない昭和二十一年の夏。瀬戸内海に浮かぶ獄門島の旧家・鬼頭家を私立探偵の金田一耕助が訪ねた。彼は本家・本鬼頭家の跡取りである千万太の戦死の通知を預かっていた。金田一が獄門島に到着した時、鬼頭家の分家・分鬼頭の跡取り一(ひとし)の帰還報告も同時に届いていた。実は、金田一の本当の目的は、鬼頭家で起こるかもしれない殺人を未然に防ぐことにあった。千万太は、妹の月代と雪枝と花子が殺されることことを心配しながら死んでいったのだ。
千万太の通夜の晩、姿を消していた花子が逆さ釣りの死体で発見された。金田一は容疑者につながる手がかりを求めて鬼頭家を調べ始めた。だが、かえって怪しまれ、地元の駐在・清水に捕まってしまった。金田一が留置されていたその間、今度は、雪枝が釣り鐘の中から、死体で発見された。雪枝の殺され方が、彼女たちの母親である旅芸人・お小夜の芝居に由来している考えた金田一は、当時を良く知る分鬼頭儀兵衛に話を聞きに行った。だが、その頃、残る月代も祈祷小屋で絞殺されてしまった。
警察による捜査は困窮していた。その時、千万太の従姉妹・早苗は、病気の叔父・与三松が行方不明になった騒ぎ立てた。等々力警部は与三松を容疑者と決め付け捜索しようとした。だが、一方の金田一は早苗が誰かをかばっていると考えていた。三人娘の殺され方が、母親の芝居ではなく、島の寺・千光寺の枕屏風に描かれていた俳句を見立てたものであることに気づいた金田一は、了然和尚が犯人であると推理した。了然は花子が殺された時、「キ違いじゃが仕方がない」と呟いたが、それは、与三松を指してのことではなく、俳句の季語のことについてのことだった。
金田一に追及された了然は、一(ひとし)に鬼頭家の跡を継がせるために花子を殺害したことを自供した。それは、既に没している本鬼頭家の当主・嘉右衛門の意志を継いでのことだった。了然の計画には、彼に孤児として育てられた本鬼頭の使用人の勝野も手を貸していた。その頃、本鬼頭では、早苗が勝野に、彼女が自分の母親であることを一を通じて知っていたことを打ち明けていた。早苗は、雪枝と月代を殺害した勝野をかばい、捜査を錯乱させていたのだった。事件の謎が解けた時、獄門島に一の戦死の報せが届き、復員の報せが詐欺だったことが分かった。計画が無駄に終わったことを知った了然と勝野は崖から身を投げたのだった。
キャスト
石坂浩二
司葉子
大原麗子
草笛光子
大地喜和子
坂口良子
浅野ゆう子
加藤武
大滝秀治
松村達雄
上條恒彦
ピーター
内藤武敏
稲葉義男
三谷昇
辻萬長
池田秀一
小林昭二
一ノ瀬康子
中村七枝子
荻野目慶子
東静子
武田洋和
中野裕
早田文次
三木のり平
東野英治郎
佐分利信
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スタッフ
製作
| 市川崑
田中収
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原作
| 横溝正史(角川文庫版)
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企画
| 角川春樹事務所
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脚本
| 九里子亭(市川崑)
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撮影
| 長谷川清
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美術
| 村木忍
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録音
| 矢野口文雄
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照明
| 佐藤幸次郎
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音楽
| 田辺信一
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音楽ディレクター
| 大橋鉄矢
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オリジナル・サウンド・トラック盤
| 東宝レコード
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監督助手
| 岡田文亮
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編集
| 池田美千子
長田千鶴子
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スチール
| 橋山直己
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合成
| 三瓶一信
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製作担当者
| 徳増俊郎
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錦絵製作
| 竹内邦夫
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舞踏振付
| 西川りてふ
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効果
| 東宝効果集団
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整音
| 東宝録音センター
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現像
| 東洋現像所
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監督
| 市川崑
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