第二次世界大戦末期の連合軍の戦いを背景に、
味方の兵士からも恐れられた名将パットンの姿を描く戦争スペクタクル。

パットン大戦車軍団

原題PATTON
製作年1970 年
製作国アメリカ
上映時間170 分
色彩カラー



解説
第二次大戦で活躍したアメリカの将軍で中で、伝説的な戦術家として知られるパットン将軍の半生を描いた伝記物。大戦末期のチェニジア戦線から、連合軍の勝利を決定告げたノルマンディ上陸作戦までを、パットンの戦果を追いながら描いていく。当事者であるブラッドリー大将とスペイン軍の前面協力を得て、大勢のエキストラと本物の兵器を使用して再現されたた戦闘シーンは空前のスケール。スペクタクル・アクションとしての見応えのある超大作である。
戦争映画で軍人を題材にした映画はこれまでにもあった。しかし、ここまでひとりの人間について描いた作品がかつてあっただろうか。そして、現代の英雄の一代記を描いているのに、ここまで主人公が変人扱いをされているの作品があっただろうか。この映画でもっとも有名なシーンと言えば、冒頭の大きな星条旗の前での主人公パットンの大演説だろう。過激に熱弁をふるうジョージ・C・スコットの一世一代の芝居は圧巻の一言だ。しかし、本作は、英雄としてのパットンの功績を称えるだけでなく、その奇人としての人物像にスポットを当てていく。ことあるこどに自分の立っている戦場を古代ローマ人の戦に重ねあわせるロマンチストなパットン。戦士者が出る場面で見せる、兵士の死を嘆き称える長いモノローグもユニークだ。その人物像は、脚本を担当したコッポラが、後に自作『地獄の黙示禄』で登場させたキルゴア中佐のモデルと言ってしまって、ほぼ間違いないだろう。
好みの問題もあるだろうが、映画からの印象を得ける限り、単細胞な上に利己的なパットンは、まず観客の感情移入を受け付けないイヤな人間である。しかし、美化されていないからこそ、かえって、その人物を正確に描いているように思え、そのネガティブな部分の魅力も徐々に増してくる。ここで大事なのはパットンの人間性ではない。パットンが戦争という時代に翻弄されたという事実である。パットンはその過激さゆえに英雄になった。英雄というのは往々にしてそういうものなのだろう。しかし、その過激さゆえに彼は反逆者の烙印を押されてしまうことになる。戦争中にはもてはやされるが、戦争が終わると理不尽なつまはじき。奇しくもこの映画自体の辿った評価と呼応する物がないだろうか。公開当時アメリカでは本作が戦意高揚に利用されたと言われてる(それゆえ、戦争映画としては面白い)。しかし、その後は好戦的な内容が非難の対象となってしまった。我々は、パットンの決して幸福とは言えない生涯、そしてこの映画を教訓として、時代の雰囲気によって容易に物の見方を変え、真実に向き合えなくなる人間の浅はかさを痛感しなければいけないのかもしれない。



ストーリー
1943年。北アフリカ・チェニジア戦線。その厳しさから味方の兵士にまで恐れられたアメリカのパットン将軍が、ドイツを前に苦戦を強いられていた兵団の指揮にあたることになった。パットンは戦車部隊を率いて、ライバル視していたドイツのロンメル元帥の兵団を打ち破ることに成功。だが、その手柄はイギリスのモンゴメリー大将に持っていかれてしまうのだった。
続くイタリア・シチリア島上陸作戦では、パットンはモンゴメリーのサポートとして、海岸伝いにメッシナを目指していた。だが、侵攻中の途中で、戦場恐怖症に陥った若い兵士を殴ってしまったことから、パットンへの批判が各方面から高まっていった。さらに、ソ連の立場を無視したイギリスでの演説が決め手となり、パットンは謹慎処分を受けることになった。それは折りしも、フランス・ノルマンディ上陸作戦の直前のことであった。
ノルマンディ上陸作戦の間もパットンは謹慎中だった。だが、パットンの名前は陽動作戦のオトリとして利用され、敵には彼が戦場にいると見せかけされた。作戦は成功したが、上陸後の戦況は思った以上に厳しいものになった。進軍の道を切り開く先鋒の役目を任されたパットンは実際に戦場へ赴いた。最前線で成果を上げたパットンは、親友のブラッドリー少将から役目の終わりを告げられた。パットンは戦場を離れることになったが、その時、ドイツ軍の奇襲により兵団が全滅してしまった。復讐に燃えたパットンは猛進撃を開始し、町を次々と解放していった。
やがて、戦争はドイツの降伏という形で終結し、パットンはバルジ大作戦で英雄となった。だが、戦後、パットンはナチスを擁護していると取られかねない発言や、ソ連に対する攻撃的な発言を繰り返したおかげで、出世の道をたたれ、軍隊から姿を消していったのだった。



キャスト
ジョージ・パットン将軍
ジョージ・C・スコット
オマル・ブラッドリー将軍
カール・マルデン
チェスター・B・ハンセン大尉
スティーヴン・ヤング
ホバート・カーヴァー准将
マイケル・ストロング
ブラッドリー将軍の運転手
キャリー・ロフティン
ヘンリー・ダヴェンポート中佐
フランク・ラティモア
リチャード・N・ジェンソン大尉
モーガン・ポール
エルヴィン・ロンメル元帥
カルル・ミヒャエル・フォーグラー
パットン将軍の運転手
ビル・ヒックマン
アーサー・カニンガム空軍少将
ジョン・バリー
アルフレート・ヨードル大将
リヒャルト・ミュンヒ
オスカル・シュタイガー大尉
ジークフリート・ラオホ
バーナード・モントゴメリー大将
マイケル・ベイツ
アーサー・テッダー空軍大将
ジェラルド・フルード
ハロルド・アレキサンダー将軍
ジャック・グウィリム
ウォルター・ベデル・スミス少将
エドワード・ビンス
フランシス・デ・グィンガンド少将
ダグラス・ウィルマー
ルシアン・トラスコット少将
ジョン・ダウセット

スタッフ
監督
フランクリン・J・シャフナー
製作
フランク・マッカーシー
製作補
フランク・カフィ
原作
ラディスラス・ファラーゴ「パットン、試練と勝利」
オマル・N・ブラッドリー「ある軍人の物語」
脚本
フランシス・フォード・コッポラ
エドマンド・H・ノース
撮影
フレッド・コーネカンプ
音楽
ジェリー・ゴールドスミス
装飾
アーリー・マクリアリー
ギル・パロンダ
編集
ヒュー・ファウラー
メーキャップ監修
ダン・ストリーピーク
特殊撮影効果
L・B・アボット
アート・クルイックシャンク
軍事アドバイザー
オマル・N・ブラッドリー