禁酒法時代にシカゴ・ギャングの頂点に君臨したアル・カポネと
カポネを検挙せんと命をかける特捜チーム“アンタッチャブル”の死闘。
テレビ・シリーズの映画化。
アンタッチャブル
原題 | THE UNTOUCHABLES |
製作年 | 1987
年
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製作国 | アメリカ |
上映時間 | 119
分
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色彩 | カラー |
オスカー・フラリーらによる小説およびテレビ・ドラマのシリーズを原作としたギャングもの。舞台は禁酒法時代のシカゴ。若き連邦保安官がギャングのボス、アル・カポネを倒すために特捜チーム“アンタッチャブル”を結成。汚職にまみれる警察内部での孤立、ギャングに対抗するために非情にならざるをえない自分との葛藤などを交えながら、ギャングとの熾烈な戦い描いていく。
ギャングの代名詞とも言えるアル・カポネに扮するのは、『ゴッドファーザー PARTU』でドンの役がハマッたデ・ニーロ。手振り身振りのアクション付きで貫禄あるギャングを演じる。カポネに対する主人公の連邦保安官には、大作映画の主演はこれがはじめてとなるコスナー。これまで地道にキャリアを積んできただけあり、安定感のある芝居を見せる。その他、コスナーの教師役のコネリー、役柄と同じく俳優としての新鋭のガルシアなど、的確な配役だけでも十分の見応えある作品だ。
描かれるのは男たちの戦いのみであり、主人公に妻がいる以外は女性の影がまったくないという、現代ではまずありえない映画である。従って、男臭く硬派な作品とも思われるかもしれないが、実は、難しい顔をしながら観なければならないようなものではない。『ゴッド・ファーザー』などに代表されるギャング映画の重厚さを出すよりも、あくまで西部劇的な勧善懲悪の活劇でノリで割り切っているのである。しかし、最大の見どころは、やっぱり、ニクいくらいにかっこいい男たちの生き様と死に様だろう。つまり、世の多くの男が求める男の理想像が気持ちよく描かれているのだが、こればっかりは、理屈を抜きにして感じてもらう他はない。
娯楽活劇ではあるが、映画のあらゆる要素が高度な次元で絡み合った傑作である。緊張感みなぎるモリコーネのスコア。30年代のシカゴをディテール豊かに再現した美術と衣装。中でも注目したいのは、マメットが簡潔にまとめあけだ脚本だ。並みの脚本では、余計なエピソードや登場人物を増やすことでリアリティを補おうとしがちだ。しかし、本作の脚本は、短いながらも印象的なセリフを配す代わりに、その他の無駄を一切の省き、男たちの戦いに集中している。劇作家だけあって、二時間という枠の中での盛り上げどころを心得えていて、物語のちょうど真ん中と終盤の二箇所に明確なクライマックスを配置。それと同時に、主人公のモチベーションを、法を守らせるという大儀から、最終的には殺された仲間の復讐へと変化させることで、映画のテンションを落とさずに観客を引っ張るという配慮も欠かしてない。優れた脚本を活かしきったサスペンスの名手、デ・パルマの演出も鮮やかだ。『戦艦ポチョムキン』やペキンパーの借り物ではあるが、それらをうまく拾い上げて娯楽作の枠に組み込めたのは、やはり才能というものだろう。
禁酒法により戦場と化した1930年のシカゴ。密造酒の利権をめぐるギャングの間の熾烈な抗争で多くの血が流されていた。ギャングの頂点に君臨していたアル・カポネは、事実上のシカゴ市長と称される威力を持ち、その悪行について誰も手出しできない存在だった。
酒の密造や密売を厳しく取り締まるため、財務省はシカゴに連邦捜査官のエリオット・ネスを派遣した。法を守らせるという使命とカポネの検挙に意欲をやすネスは、早速、カポネがカナダ・ウイスキーの密輸を行なうという情報を得た。除雪車を使い、派手に倉庫に乗り込んだネスだったが、倉庫内に積まれた木箱を開けて見ると、中から出てきたの番傘だった。
その日の夕刊には、番傘を差したネスの写真と共に「初戦から惨敗」という見出しが躍った。屈辱を味わったネスが、妻子の待つ家に帰らず、橋の上で佇んでいると、パトロール中の中年の巡査が声をかけてきた。むしゃくしゃしていたネスは「財務省の者だ」と巡査に威勢を張った。だが、よくよく話してみると、相手は優れた資質も持った老練の警官であることが分かった。
翌朝、オフィスに出勤したネスのもとに、ギャングの抗争に巻き込まれて娘を失った女性が訪ねてきた。娘の敵を取って欲しいという女性の訴えを受けて再び奮起したネスは、昨夜の巡査ジミー・マローンに力を借りるため、彼が一人で暮しているラシーン通りを訪ねた。カポネの検挙への協力を頼まれたマーロンは、この街の警官たちがカポネに買収されていることをネスに教えた。昨夜の手入れがバレたのも、警察内部の人間が情報を洩らしたせいである。マーロンがこの年になってもパトロールをさせられているのは、彼が“汚れていない”からだったのだ。協力するかどうかについてしばらく悩んでいたマーロンたったが、今の彼には、命を懸けてカポネと対決するよりも生きていることのほうが大事だったため、ネスの頼みを断わった。
ネスがオフィスに戻ると、ワシントンからオスカー・ウォーレスという男が派遣されて来ていた。ネスの部下につくことになったウォーレスの担当は経理であり、カポネを脱税の線で追い詰めようとしていた。ネスがオフィスを出ると、マーロンが訪ねてきていた。考え直したマーロンは、ネスの仕事に協力することにしたのだ。ただし、カポネとの戦いは命を懸けた“シカゴ流”で行なうことになることをネスに覚悟させた。そして、二人は教会に行き、血の契りを交わした。
次に二人が向かったのは警察学校だった。腐敗した警察内部からは仲間は見つけられないというマーロンの判断である。ネスとマーロンは、新人の中から射撃の腕が良く、独身でもあるジョージ・ストーンという若者を選び出した。偶然、それは本名をジョゼッペ・ペトリという元コソ泥で、マーロンと因縁があるようだった。だが、いきなりマーロンに銃をつきけるほど血気盛んなストーンを見込み、チームに加えることにした。さらに、ウォーレスも仲間に加え、チームは計四名となった。
早速、ネスたち四人は銃を携え、マーロンの案内で郵便局へ向かった。実は、郵便局で密造酒が取り引きされているのは、公然の秘密だった。ネスたちは、誰もがカポネを恐れて見て見ぬ振りをしていた郵便局を始めて手を入れた。
初勝利を収めたネスたちは祝杯をあげるが、手入れの成功を快く思わない者もいた。カポネの恩恵に預かる市議会議員のオシェアがオフィスを訪ねてきて、ネスを買収しようとしたのだ。ネスは毅然とした態度で金をつき返した。オシェアはネスたちに「おまららは“アンタッチャブル(手出しできない)”か?」と捨て台詞を残し去っていた。“アンタッチャブル”はいつしかネスのチームの通り名になっていった。
その日はネスの娘の誕生日だった。プレゼントを抱えて自宅に帰ったネスは、家の前に停まっていた車の中から白いスーツの男に不気味な警告を受けた。家族にも危険が迫っていることに気付いたネスは、身重の妻キャサリンと幼い娘を街から逃がした。そんな時、マーロンが朗報を持ってきた。国境で大規模な酒の取り引きがあるという確かな情報を掴んだのだ。
夜のうちにカナダとの国境に飛んだ“アンタッチャブル”は、翌日、騎馬隊を待機させて国境の橋を見張り続けた。しばらくして、橋の上にギャングたちが現われた。“アンタッチャブル”は騎馬隊と共にギャングたちに襲い掛かった。激しい銃撃戦の末に、怪しい帳簿を抱えて逃げようとしていたギャングの一人の身柄を確保した。帳簿には暗号と思われる符牒で金の流れが示されていた。捕まった男は頑として暗号について口を割らなかった。だが、マーロンが“シカゴ流”にギャングの仲間の一人を目の前で射殺してみせると、とたんに男は素直になった。
検事局よりカポネへの召喚状が出された。“アンタッチャブル”が逮捕した男は、カポネの脱税を裏付ける証人として法廷に立つことになった。証人はウォーレスの手で護送されることになったが、二人をエレベータに乗せたことがネスの油断となった。ウォーレスたちと一緒にエレベータに乗った警官は、カポネの殺し屋だったのだ。胸騒ぎを覚えたネスとマーロンが駆けつけたときには既に遅く、二人はエレベータの中に証人とウォーレスの惨死体を見ることになった。
怒りのネスはカポネの泊まっているホテルに取り込むが、マーロンに止められ仕方なく引き下がった。だが、既にネスは仲間を殺されたショックで闘志は失い、カポネとの対決から手を引くことを決意していた。マーロンは家族のいるネスの気持ちを尊重しながらも、「おれのためにもうひとふんばりして欲しい」と彼に頼んだ。
かくして、“アンタッチャブル”は再び動き出した。ネスは検事局に向かい、カポネの裁判を続けるよう検事の説得に当たった。一方、死んだ証人の代わりとして、帳簿係のペインを探していたマーロンは、警官の溜まり場にやって来た。カポネと強いつながりを持つ同僚の警官と取っ組み合いの喧嘩をした末、マーロンはついにペインの居所を突き止めた。だが、ネスが検事局から帰ってくるのを待っている自宅で待っている間、マーロンはカポネの差し向けた殺し屋に機関銃で撃たれてしまった。無数の弾を浴びて倒れたマーロンだったが、最後の力を振り絞り家の床を這い進んだ。
ネスがラシーン通りのマーロンの家に駆けつけると、床には何かを引きずったような血の後がついていた。血を辿り奥の部屋に行くつくと、そこにはマーロンが虫の息で横たわっていた。マーロンはネスの顔を自分に引き寄せると、時刻表を指してペインの乗る列車を教えた。そして、「捕まえるんだ」と振り絞るように叫んだのを最後に息絶えたのだった。
マーロンの意志を継いだネスはストーンと一緒に車で駅に急いだ。午前零時五分のマイアミ行きの列車にペインは乗るはずである。ネスたちが駅に着いたのは午前零時少し前だった。ネスは車にストーンを待たせ、一人で駅構内でペインたちが来るのを待ち受けた。その時、ネスの眼下の階段で女性が一人で乳母車を引っ張り上げようとしているのが目に入った。この瞬間にもペインたちが現われるかもしれなかったが、ネスは女性に手を貸すことにした。ネスが乳母車を階段の中腹まで引っ張り上げた時、駅の入り口からペインたちギャングたちに伴なわれて現われた。彼らはまだネスの姿には気付いていないようだった。
乳母車が階段を上がりきろうとした時、先日、郵便局で検挙した男が現われ、ネスと目が合ってしまった。すかさず銃を取り出したネスは、先手を打って男を撃つが、その弾みで乳母車から手を離してしまった。階段を下り始める乳母車。乳母車を止めようと咄嗟に階段を駆け下りるネス。その結果、ネスはギャングたちに囲まれる形となった。その時、銃声を聴きつけたストーンが駆けつけた。ストーンはネスを援護すると同時に、階段の下に滑り込んで身を呈して乳母車を止めた。銃撃戦で生き残ったギャングの一人は重要な証人であるペインに銃を突きつけ、逃げ去ろうとしていた。秒読みを開始したギャングだったが、数え終わらないうちに、乳母車の下のから狙っていたストーンにより撃ち殺された。
裁判が開かれ、カポネの収賄や脱税の容疑が問われることになった。ペインは130万ドル以上の金がカポネに流れたことを証言するが、なぜか、当のカポネは笑っていた。カポネの様子を原告席から見張っていたネスとストーンは、カポネが白いスーツの男にメモを渡すのを見た。ネスは白いスーツの男が銃を持っていることを確認すると、彼を連れて法廷の外に出た。白いスーツの男はカポネの殺し屋のネッティだった。
ネスはネッティの持っていたマッチに、“ラシーン1634”と走り書きされているのを見つけた。マローンを殺したはネッティだったのだ。そのことにネスが気付いた時、ネッティは警備を撃って逃走。ネスはネッティに追いすがり、彼を屋上に追い詰めた。ネスはその場でネッティを撃ち殺すことも出来たが、正当に逮捕し、法の下で裁かせることにした。ネッティは自分を撃たなかったネスをからかい、マローンのことを「ブタみたいにわめいて死んだ」と言った。その言葉にネスは逆上した。彼はネッティに掴みかかると、彼を屋上から突き落とした。転落死という形でネッティに裁きが下されたのだった。
ネッティの受け取ったメモは、カポネが陪審員の大半を買収していることを示していた。カポネを有罪にするためには、このまま裁判を続けるわけには行かない。だが、陪審員買収の確固たる証拠もなかった。そこで、ネスは、密かに裁判長にある提案をした。
裁判が再開された。審議を始める前に、裁判長は、この法廷の陪審員と隣りの法廷の離婚裁判の陪審員を交替させることを告げた。予想外の展開に慌てたカポネは、思わず立ち上がり、裁判長や弁護士に食ってかかった。もはや成す術がないと悟った弁護士は、無罪の主張を取り下げ、カポネの有罪を裁判長に求めた。カポネは激怒し、法廷は騒然となった。ネスは、取り押さえられたカポネに近付くと、「勝負は最後まで分からない」と徹底抗戦を宣言した。
“アンタッチャブル”は勝利し、カポネに懲役11年が言い渡された。特捜としての役目を終えたネスは、マローンの形見をストーンに渡すと、オフィスを後にした。署を出たネスに一人の記者が近付いてきて、禁酒法が廃止されたというニュースを教えた。記者から感想を求められたネスは、「では、一杯やるとするか」と言うと、シカゴを去っていったのだった。
キャスト
エリオット・ネス
Eliot Ness
| ケヴィン・コスナー
Kevin Costner
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オスカー・ウォーレス
Oscar Wallace
| チャールズ・マーティン・スミス
Charles Martin Smith
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ジョージ・ストーン
George Stone
| アンディ・ガルシア
Andy Garcia
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マイク
Mike
| リチャード・ブラッドフォード
Richard Bradford
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ペイン
Payne
| ジャック・キーホー
Jack Kehoe
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アル・カポネ
Al Capone
| ロバート・デ・ニーロ
Robert De Niro
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ジム・マローン
Jim Malone
| ショーン・コネリー
Sean Connery
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ニッティ
Nitti
| ビリー・ドラゴ
Billy Drago
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ジョージ
George
| ブラッド・サリヴァン
Brad Sullivan
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ネスの妻
Ness' Wife
| パトリシア・クラークソン
Patricia Clarkson
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スタッフ
キャスティング
Casting by
| リン・スタルマスター・アンド・アソシエイツ
Lynn Stalmaster & Associates
マリ・フィン
Mali Finn
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衣装デザイン
Costume Designer
| マリリン・ヴァンス=ストレイカー(マリリン・ヴァンス)
Marilyn Vance-Straker
(Marilyn Vance)
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衣装
Wardrobe by
| ジョルジョ・アルマーニ
Giorgio Armani
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視覚顧問
Visual Consultant
| パトリツィア・ブランデンスタイン
Patrizia von Brandenstein
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製作補
Associate Producer
| レイ・ハートウィック(レイモンド・ハートウィック)
Ray Hartwick
(Raymond Hartwick)
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音楽作曲/オーケストラ/指揮
Music Composed, Orchestrated and Conducted by
| エンニオ・モリコーネ
Ennio Morricone
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製作担当
Unit Production Manager
| レイ・ハートウィック(レイモンド・ハートウィック)
Ray Hartwick
(Raymond Hartwick)
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助監督
First Assistant Director
| ジョー・ナポリターノ
Joe Napolitano
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第二助監督
Second Assistant Director
| ジェイムズ・W・スコッチドポール
James W. Skotchdopole
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編集
Edited by
| ジェリー・グリーンバーグ(ジェラルド・B・グリーンバーグ)
Jerry Greenberg
(Gerald B. Greenberg)
ビル・パンコウ
Bill Pankow
|
装飾
Art Directior
| ウィリアム・A・エリオット
William A. Elliott
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撮影
Director of Photography
| スティーヴン・H・ブラム,A.S.C.
Stephen H. Burum,
A.S.C.
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脚本
Written by
| デイヴィッド・マメット
David Mamet
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製作
Produced by
| アート・リンソン
Art Linson
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監督
Directed by
| ブライアン・デ・パルマ
Brian De Palma
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テレビ・シリーズ/原作小説
Suggested by the television series and based upon the works written by
| 「アンタッチャブル」
"The Untouchables"
オスカー・フラリー
Oscar Fraley
エリオット・ネス
Eliot Ness
ポール・ロブスキー
Paul Robsky
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プロダクション
提供
Presents
| パラマウント映画
Paramount Pictures
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製作
Production
| アート・リンソン
Art Linson
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