平凡な男が拾った不思議な仮面。
それを被るとたちまちハイテンションの謎の怪人“マスク”に変身。
“マスク”が巻き起こす騒動を描くSFXコメディ。

マスク

原題THE MASK
製作年1994 年
製作国アメリカ
上映時間87 分
色彩カラー



解説
「現代人がマスクを着ける」という表現は新聞やテレビなどでよく目にするが、それは「自分を偽って本性を隠す」とか「無関心を装う」などといった消極的な意味に用いられるこが多い。この場合の“マスク”とは、人間が生身で他人と関わる社会生活において、体に服を身につけるように、“心に着ける服”を比喩的に表したものだと言える。この映画に登場する“マスク”だが、主人公がマスクを着けることになったきっかけが、ある心理学者が先の意味で「みんなマスクをつけている」と発言したことであることから、それが心の服としての“マスク”から発想されたものであることは明らかだ。しかし、マスクを着けた効果は“心に着ける服”とはまったく正反対で、欲望が抑えられるどころか、欲望が剥き出しになってしまうのである。
本作の原作はコミックであり、普段は小心者で大人しい主人公が正体を隠して変身すると、たちまち人間離れした力を発揮するというところは、アメリカン・コミックのヒーローの定型だ。しかし、自分の欲望のためだけにしか働かないというところが、社会正義のために働くこれまでのコミック・ヒーローとは大きく異なっている。現代的な個人主義やヒーローの不在の時代へのニヒリズムもあるだろう。しかし、そもそも、本作に登場する“マスク”とは、“心に着ける服”ではなく、“匿名性”そのものであり、顔を隠すことにより簡単に欲望が剥き出しになってしまう人間の本質を鋭く描いているとも言える。簡単に言えば現代版の「ジキル博士とハイド氏」であるが、匿名が当たり前のネットでの顔の見えない人間の交流が身近になっている今だからこそ、公開当時よりも主人公に共感できるかもしれない。
テーマが共通する作品には『インビジブル』があり、本作はそれに先駆ける形となったが、雰囲気はまったく異なり、抑えられていた欲望が剥き出しになっていく様子を軽妙に笑いに変えたコメディである。また、先に述べたように、穿って考えればシリアスに捉えられるテーマではあるが、当時はそれほど深く考えられた作品ではないようだ。というのも、当時は『ジュラシック・パーク』フィーバーで、もっとすごいSFX映画の新作の公開が映画ファンに待たれていた時。そして、そんな時に満を持して登場したのが本作だった。CGを使ってどんなことが出来るかが様々な映画で試されていたが、本作は、カートゥーン(漫画映画)のコミカルな表現を実写でやってみようというワン・アイデアで作られたのである。目が飛び出したり、アゴがはずれたりと、カートゥーンそのままの表現を再現したSFXは、観客の期待に応えた出来だった。
しかし、観客が本当に驚かされたのは、当時最先端のSFXではなかった。SFXを期待して観てみたら、ジム・キャリーの芝居に圧倒されたという、嬉しいサプライズがあったのである。SFXを駆使した映像や特殊メイクに負けないどころか、それを喰ってしまうほどのハイテンションで、日本ではほとんど無名だった彼の名前を轟かせることになった。さらに、単にハイテンションだけでなく、普段の気弱な青年との演じ分けにもメリハリがあり、その演技の質の高さが、変身願望を満たすコメディとして質の高さも押し上げている。また、本作が映画デビューとなるモデル出身のキャメロン・ディアスは、ヒロインとして瑞々しい輝きを放っている。本作で大成功を収めたキャリーと共々、当然のごとくスターの仲間入りに。2005年に11年ぶりの続編がスタッフとキャストを一新して公開された。



ストーリー
エッジ・シティに暮す銀行員スタンリー・イプキスは、優しくて人が良いだけがとりえの平凡な青年。ある日、銀行に男性なら誰もが息を飲むセクシーな女性ティナが客としてやってきた。優しすぎる性格のせいで女性との縁がないスタンリーは、同僚チャーリーからティナの対応を譲ってもらった。ティナは新しい口座を開きにやって来たとスタンリーに語るが、実は本当の目的は銀行の金庫室の偵察だった。ティナの恋人でギャングのドリアンは、エッジ・シティの裏を牛耳るボス、ニコの手下。密かに野心を燃やすドリアンは、目の上のたんこぶであるニコを倒すため、銀行強盗を計画していた。
その日、スタンリーはチャーリーの誘いで女の子の集まるクラブ“ボンゴ・ボンゴ”で夜遊びすることになっていた。ところが、故障していた愛車の修理はまだ終わっておらず、修理工場から渡された台車はポンコツ。そのせいで、黒服に門前払いされ、おまけに、突き飛ばされて服がぐしゃぐしゃになった。このクラブはドリアンがニコから任されている店であり、ティナも歌手としてステージに立つことになっていた。スタンリーは店にやって来たティナに情けない姿を観られてしまうのだった。口惜しい思いをして家に帰る途中、追い討ちをかけるようにポンコツが橋の上でエンコ。その時、スタンリーは川面に浮いている人の影を見つけた。慌てて川に飛び込むが、人に見えたのはゴミの塊。パトロール中の警官に見つかったスタンリーは、ちょうどそこに浮いていた木製の仮面を手にとると、「これを探していたんだ」と叫んで誤魔化したのだった。
びしょびしょに濡れたまま下宿に帰ったスタンリーは、口うるさい管理人ピーンマン夫人に小言を言われた。自分の部屋に入ったスタンリーは、しばらく大好きなカートゥーンのビデオを楽しんでいたが、テレビでニューマン博士の「みんな欲望を抑えてマスクをつけている」という趣旨の発言を耳にし、さっき拾った仮面を冗談で顔にあてがってみた。すると、仮面が生き物のように顔に張り付き、それと同時にスタンリーの体を中心に竜巻が起こった。気がつけば、スタンリーは緑色の顔に派手なスーツを着けた怪人“マスク”に変身していた。
マスクはスタンリーとはまるで別人の大胆不敵な男で、変幻自在の体と想像できることはなんでも実現する力を持っていた。マスクは懐から出した目覚し時計を追いかけ廊下へ飛び出し、騒ぎを聞きつけて部屋から出てきたピーンマン夫人を百面相で脅かした。ピーンマンから銃を突きつけられたマスクは、ぴょんぴょん飛び跳ねると、そのまま窓ガラスを割って表へ。そらに、カツアゲをしようとしてきたチンピラを撃退するなど、町じゅうで大暴れ。最後には昼間の修理工場へ押し込み、ポンコツを押し付けて散々な目にあわせてくれた工員たちに復讐したのだった。
翌朝、自分のベッドで目覚めたスタンリーは、マスクに変身したことは夢だと思って一安心。その時、警察からケラウェイ警部補が訪ねてきて、昨夜の怪人のことを訪ねられた。目覚し時計と格闘した跡が廊下に残っているの見たスタンリーはあれが夢でないことに気付いて青くなった。遅刻して出勤したスタンリーは、マスクのことについて、ペギー・ブラントという新聞記者の訪問を受けた。ペギーはかつてやっていたコラムに、「優しい男」というテーマで投稿してきた男がスタンリーであったことを知り、彼に興味を持ち始めた。一方、ドリアンは、最近の彼の反抗的な態度にたまりかねたニコに呼び出され、一週間以内に町を出るよう脅迫されていた。
スタンリーは、クラブに出かけてティナと会うことを夢想していたが、マスクになればそれが可能であることに気付き、もう一度あの仮面をつけてしまった。マスクに変身したスタンリーは、まず先立つ物を調達するため銀行へ向かった。電気工事を装ったドリアンは手下たちが銀行に乗り込もうとしたその時、現金のいっぱいつまった袋を抱えて出てきたマスクと鉢合わせた。ドリアンは手下は、用意周到な計画があっけなく出し抜かれたことに唖然とした。マスクは盗んだ金をばらまきながらクラブに悠々と入店。ステージで歌っていたティナと一緒に踊り、最後にはキスをした。ドリアンは、強盗計画をマスクに邪魔されたことを手下から聴き、その張本人がステージで踊っていることに気付いた。マスクは銃で狙われるが、ゴムのような身のこなしで銃弾をかわすと、嵐のように去っていったのだった。
翌朝、クラブでの銃撃事件について捜査を開始していたケラウェイは、クラブのステージ上に布の切れ端を発見。それはマスクが銃で撃たれた時に千切れたネクタイだったが、変身が解けてスタンリーのパジャマに戻っていた。布の柄が昨日訪ねたスタンリーのパジャマと同じであることに気付いたケラウェイは、彼を容疑者としてマークすることに。一方、ベッドで目覚めたスタンリーは、物置の中に札束が詰まっているのを見て仰天していた。またその頃、ドリアンは自分をコケにしてきくれたマスクを捕まえるべく、町中のチンピラに生け捕りを呼びかけていた。
今朝も遅刻して出勤したスタンリーのもとに、ティナが口座を解約するために訪ねてきた。スタンリーは、ティナがマスクに興味を示していることに気付くと、友人である彼と今夜会わせる約束をしてしまった。だが、マスクとしてティナと会うべきか悩んだスタンリーは仮面をつけるきっかけを自分に与えたニューマン博士を訪ね、仮面のことを相談。ニューマンは仮面を検めると、それが悪戯の神“ロキ”をモチーフにしたものだと指摘した。だが、学者の立場としてはロキの言い伝えは信じられず、スタンリーの話もノイローゼの一種としか思えなかった。スタンリーはニューマンに信じてもらおうと、彼の前で仮面をつけてみるが何も起こらなかった。呆れたニューマンは、「マスクをつけて会うべきだ」と面倒くさそうに助言したのだった。
スタンリーは仮面を着けずに公園でティナと会うが、自分がマスクであることを言い出せなかった。結局、ニューマンに言われた通り、マスクに変身してからティナの前に再登場。欲望剥き出しにティナに迫っていた時、公園にが部下たちを引き連れて現われた。ケラウェイは、銀行に残された指紋がスタンリーのものと一致したことでマスクの正体を知り、彼を逮捕しに来たのだ。大人しく逮捕に従う素振りを見せたマスクだったが、ケラウェイたちの隙を突いて公園から逃走。その時すでに公園は多数の警官に包囲されていたが、マスクはルンバを踊って誤魔化し、つられて踊りだした警官たちの包囲網から脱出した。路地裏に逃げ込み仮面を剥いだスタンリーは、駆けつけたペギーに呼び止められ彼女の車に乗った。
新聞の印刷所に匿われたスタンリーは、ペギーに慰められて彼女に心を許しかけるが、その時、彼らの前にドリアンが手下と共に現われた。ペギーはマスクにかけられた賞金に目がくらみ、彼をドリアンに売り渡しのだった。スタンリーから奪った仮面をつけたドリアンは凶悪な姿の怪人に変身した。ドリアンはスタンリーを殺しかけるが、考え直し、彼の部屋から金を奪い返した後、彼を探している警察の前に放り出した。
留置所に入れられたスタンリーにティナが面会にやってきた。スタンリーは仮面の秘密を打ち明けた。仮面がそれをつけた人間の欲望を剥き出しにすることをことを知ったティナは、クラブで開かれるチャリティ・パーティでドリアンが恐ろしいことを企んでいると考えた。ドリアンを止めるなければならなかったが、ティナは警察署を出たところで、それを待ちあけていたドリアンの手下に捕まってしまった。留置場の窓からティナのピンチを目の当たりにしたスタンリーは、窓の外まで来ていた愛犬のマイロを呼び寄せた。マイロを使って居眠りをしていた警官から牢屋の鍵と拳銃を奪うと、様子を見に来たケラウェイを人質にとって警察署から脱走した。クラブに向かったスタンリーは、ケラウェイに応援を呼ぶよう頼むと、店内に潜入していった。
店内では、ドリアンの変身した怪人が大暴れし、パーティの主催者であるニコを射殺。ステージ上の木にティナを縛りつけると、その足元に時限爆弾をセットした。ティナのピンチを見たスタンリーは、彼女を救い出す意欲を燃やすが、あっさりとドリアンの手下に捕まってしまった。スタンリーが捕まったのを見たティナは、機転を利かせてドリアンに最後のキスをねだり、彼の顔から仮面を取らせた。ティナは仮面を蹴り上げ、スタンリーにキャッチさせようとするが失敗。スタンリーとドリアンの手下たちの間で仮面の奪い合いに。最後に仮面を手に入れたのはマイロだった。怪犬に変身したマイロは、ドリアンの手下を脅かすと、主人のもとにかけよった。マイロから仮面を受け取りマスクに変身したスタンリーは、ティナを救出すると、プールに水洗便所に変えてドリアンを洗い流したのだった。そして、爆発寸前の爆弾を飲み込み、自分の腹の中で爆発させたのだった。
仮面を取ったスタンリーは警官たちと駆けつけたケラウェイに逮捕されそうになった。だが、スタンリーの活躍を評価した市長に免じて無罪放免となった。ティナという恋人を手に入れたスタンリーは、仮面を必要としなくなり、それを拾った川に戻すことにした。スタンリーはティナとチャーリーと一緒に橋の上に来ると、仮面を川に放り投げた。スタンリーとティナが橋の上でキスしている間、チャーリーは仮面を仮面を自分の物にしようと川へ飛び込んだのだった。



キャスト
スタンリー・イプキス
ジム・キャリー
Jim Carrey
ミッチ・ケラウェイ警部補
ピーター・リーガート
Peter Riegert
ドリアン・タイレル
ピーター・グリーン
Peter Greene
ペギー・ブラント
エイミー・ヤスベック
Amy Yasbeck
チャーリー・シューメイカー
リチャード・ジーニー
Richard Jeni
ニコ
オレステス・マタセーナ
Orestes Matacena
アーヴ・リプリー
ティモシー・バグレー
Tim Bagley
ピーンマン夫人
ナンシー・フィッシュ
Nancy Fish
バート・リプリー
ジョニー・ウィリアムズ
Johnny Williams
フリーズ
リジナルド・E・キャシー(レグ・E・キャシー)
Reginald E. Cathey (Reg E. Cathey)
ドイル刑事
ジム・ドゥーハン
Jim Doughan
スウィート・エディ
デニス・フォレスト
Denis Forest
ティナ・カーライル
キャメロン・ディアス
Cameron Diaz

スタッフ
キャスティング
Casting by
フェーン・シャンピオン,C.S.A.
Fern Champion, C.S.A.
マーク・パラディーニ
Mark Paladini
音楽監修
Music Supervisor
ボニー・グリーンバーグ
Bonnie Greenberg
振付
Choreographer
ジェリー・エヴァンス
Jerry Evans
特殊メイク
Special Make-up Created by
グレッグ・キャノン
Greg Cannom
視覚効果コンサルタント
Visual Effects Consultant
ケン・ラルストン
Ken Ralston
スコット・スクワイアーズ
Scott Squires
スティーヴ・“スパッツ”・ウィリアムズ
Steve "Spaz" Williams
衣装デザイン
Costume Designer
ハー・グエン
Ha Nguyen
音楽
Music by
ランディ・エデルマン
Randy Edelman
編集
Editor
アーサー・コバーン
Arthur Coburn
美術
Production Designer
クレイグ・スティアーンズ
Craig Stearns
撮影
Director of Phography
ジョン・R・レオネッティ
John R. Leonetti
製作補
Associate Producer
カーラ・フリー
Carla Fry
製作総指揮
Executive Producers
マイク・リチャードソン
Mike Richardson
チャールズ・ラッセル(チャック・ラッセル)
Charles Russell (Chuck Russell)
マイケル・デ・ルカ
Michael De Luca
原案
Story by
マイケル・ファーロン
Michael Fallon
マーク・ヴェルハイデン
Mark Verheiden
脚本
Screenplay by
マイク・ワード
Mike Werb
製作
Produced by
ボブ・エンゲルマン(ロバート・エンゲルマン)
Bob Engelman (Robert Engelman)
監督
Directed by
チャールズ・ラッセル(チャック・ラッセル)
Charles Russell (Chuck Russell)
特殊効果
インダストリル・ライト・アンド・マジック
ドリーム・クエスト・イメージズ

プロダクション
提供
Presents
ニュー・ライン・プロダクション
New Line Production
協力
in association with
ダーク・ホース・エンターテインメント
Dark Horse Entertainment