死体を見るため、生まれ育った小さな町を飛び出した4人の12歳の少年。
彼らの2日間の冒険をノスタルジックに描く青春ドラマ。
スタンド・バイ・ミー
原題 | Stand by Me |
製作年 | 1986
年
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製作国 | アメリカ |
上映時間 | 89
分
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色彩 | カラー |
スティーブン・キングが連作『恐怖の四季』の一篇として発表した非ホラーの中編小説「スタンド・バイ・ミー 秋の目覚め」の映画化。小説家を主人公とした本作は、キングの自伝的作品とも言われている。小説の原題"The Body"はずばり死体のこと。「死体を見てみたい」という子供らしい肝試し的発想で、住みなれた町を一緒に出発した4人の少年の冒険を描く。アドベンチャー映画ではないので、彼らの冒険は、鉄橋の上で汽車に追いかけられたり、沼地でヒルにとりつかれたりと、実に他愛もないもの。しかし、それは、かつて少年だった者なら誰もが経験した覚えのあるありふれた冒険とそうかけ離れていない。また、不必要に少年を美化せず、憎たらしいところも含めて、子供を真に子供らしく描けているところも素晴らしい。さらに、オレゴン州(原作ではメイン州だが)の森の美しさや、ベン・E・キングのスタンダード・ナンバーも心地良さも相まり、世代を超えて共感を呼べる作品に仕上がっている。
誰もが人生でもっとも輝かしかったであろう思春期。そのすべてをノスタルジーで包んだというだけでも十分だが、さらにそれぞれにコンプレックスを抱えた少年たちの成長のドラマも丁寧に描かれている。特に映画的な面白さがあるのは、主人公の親友クリスを介して、小説家になった主人公の立場から少年時代の自分へ助言を与えるような台詞を吐かせているところである。つまりは、主人公を懸命に正しい道へ導こうとするクリスの姿に、小説家自身の理想が反映されているのである。クリスはいくつか大人びた台詞を吐いているが、小説家の才能を無駄にしようとする主人公に対し、それを思いとどまらせようとして言った「子供っいうのは大事なものを簡単に捨てたがる」という台詞が印象的だ。後に、クリス役のリバー・フェニックスがドラッグの乱用により二十三歳の若さでこの世を去ったことを思えば、さらに重い台詞と言える。
小説家のゴーディ・ラチャンスは、新聞で弁護士のクリス・チェンバースが刺殺されたという記事を見て、自分がはじめて死体を目にした時のことを思い出した。それは、1959年の夏のことだった。
オレゴン州の小さな町キャッスルロック。小説を書くことが得意な好きな12歳の少年ゴーディは、いつも三人の友達とつるんで遊んでいた。フランス系のテディ・デュチャンプは、向こう見ずな性格。彼の父親は酒ぐせが悪く、テディが赤ん坊の頃に耳をストーブで焼き潰した。それでも、テディはノルマンディの英雄である父親を尊敬していた。クリス・チェバースはリーダー格でゴーディの一番の親友。彼の家は近所でも評判が悪く、彼自身も札付きの不良として有名だった。バーンは仲間の中でいちばんののろま。いつもの他の皆にからかわれていた。
ある日、ゴーディとテディとクリスが木の上の秘密基地でカードをしていると、バーンが大きなニュースを持ってきた。彼は「死体を見たことがあるか」と切り出し、話し始めた。バーンは自宅の床下に埋めた貯金箱を探している時に、兄のビリーと友達のチャーリーの話を立ち聞きすることになった。二人の会話によると、彼らはここから48キロ離れたバック・ハーロウ・ロードで、列車にはねられた死体を偶然発見したのだという。それは行方不明になっているレイ・フロアー少年だった。だが、ビリーとチャーリーは、車を盗んだことがバレるのを怖れ、死体を見つけたことを二人だけの秘密にすることにしたのだった。
レイの死体を見つければヒーローになって、テレビや新聞に出られる。そう考えたクリスたち四人はキャンプを口実にして、バック・ハーロウ・ロードまで死体を確認しに行くことに決めた。だか、ゴーディは皆と一緒に騒ぐ気にはなれなかった。というのも、ゴーディはクォーターバック兄デニーを車の事故で亡くしたばかりだったのだ。ゴーディの両親は、デニーの死からまだ立ち直れないでいた。家の中で影の薄くなったゴーディは疎外感を感じていた。ゴーディはデニーの宝物だったヤンキースの帽子を被って家を出たが、不良たちのボスのエースとクリスの兄アイボールに取り上げられてしまった。一方、クリスは父親の机からピストルをくすねてきて、ゴーディをびっくりさせた。
ゴーディたちキャッスルロックを出たのは、もう昼近くだった。四人はロイヤル川に出るまで、線路の上を歩くいていくことにした。食べ物は誰も持ってきていなかったので、四人の持ち金をすべて合わせたが、2ドル37セントにしかならなかった。しばらく歩くと汽車がやってきた。ゴーディとクリスとバーンは列車をやり過ごすことにしたが、テディは線路の上から動こうとしなかった。列車を寸前でかわすと言って聞かないテディを、クリスは無理矢理に線路から下ろした。クリスとテディは喧嘩になりかけるが、クリスから握手を求め、二人は仲直りした。
くず鉄置き場に到着したゴーディたちは休憩することにした。ここには管理人のマイロと凶暴な番犬のチョッパーがいたはずだが、なぜか見当たらなかった。コイン・トスで負けたゴーディは皆から集めた金を持って、ひとりで食料の買出しに出かけた。ゴーディが商店からもどってみると、ちょうど他の皆がフェンスを越えてくず鉄置き場から出ていくところだった。ゴーディが振り返ると、マイロがチョッパーをけしかけるところだった。ゴーディは慌ててフェンスに飛びつくが、猛犬と噂されたチョッパーはどこにでもいそうな犬だった。マイロはチョッパーをからったクリスたちへの仕返しに、彼ら一人ひとりを侮辱した。クリスたちは不愉快になったが、特に、尊敬する父親を気違い扱いされたテディは口惜しそうに泣いていた。
ビリーとチャーリーの二人だけの秘密の約束は破られ、レイの死体のことはエースの知るところとなった。エースたちが死体を捜しに動き始めた頃、ゴーディはクリスと並んで歩きながら、中学へ行った後のことを話し合った。クリスはゴーディに中学では別々のコースになるだろうと言った。優秀なゴーディは進学コース、オチこぼれの自分は職業訓練コースへ進むものだと決めてかかっていたのだ。また、クリスは、ゴーディが自分たちのような低級の人間と付き合うことが彼にとって良くないことだとも思ってきた。クリスはゴーディに偉大な作家になるようすすめたが、ゴーディにはそのつもりはなかった。クリスは、ゴーディが小説を書く才能を持ちながらそれを捨てようとしていることが、自分に関心を持ってくれない親への反発であることを見抜いていた。
やがて、クリスたちは鉄橋に差し掛かった。四人は汽車が来ないうちに渡りきるつもりで、橋を歩き始めた。だが、クリスとテディが向こう岸についた時、四人の予想よりはやく次の汽車が来てしまった。全力疾走したゴーディとバーンは、汽車に追いつかれる寸前に、橋から飛び降りたのだった。
日が暮れると、一行は森の中で野宿することになった。焚き火を囲った夕食の後、ゴーディは皆にせがまれて、今書いている小説のストーリーを語って聞かせた。森には何が潜んでいるか分からないため、朝まで交代でクリスのピストルを持って見張りに立つことにした。ゴーディが見張りに立つ番になった時、まだ起きていたクリスと話をした。今度は、ゴーディがクリスの悩みを聞くことになった。クリスは不良のアイボールの弟であるために不良扱いされていたが、そのことで、とても傷ついていることを打ち明け、「どっか行きたい」と泣いた。
翌朝、クリスたちはロイヤル川に向かって再び線路の上を歩き始めた。死体に近づいているという事実が、自然と彼らの足を早くしていた。やがて、ロイヤル川にたどり着いたが、先はまだ残されてた。クリスたちは近道のために森の中を横切りことにした。だが、森の中の道はぬかるんでいて、思うように先に進まなかった。間もなくして、クリスたちの前に沼地が現われた。四人は意を決して沼に入るが、思いのほか深く、首まで浸かってしまった。その時、ゴーディはバーンの首筋にヒルついているのを発見した。慌てて沼を飛び出した四人は、裸になって体中にまとわりついてヒルを払い落とした。ゴーディはパンツの中から血だらけのヒル取り出すと、ショックのあまり気絶してしまった。
ゴーディが意識を取り戻した時、危険な目に懲りた他の皆は死体探しを諦めて引き返す相談をしていた。だが、ゴーディは一人だけでも進み、死体を確認するつもりだった。先に進むゴーディにクリスたちも従った。バック・ハーロウ・ロードに着いた四人は手分けをしてレイの死体を捜した。死体は直ぐに発見された。誰も息を飲んだ。クリスが口火を切って担架を作るよう皆に呼びかけた。だが、ゴーディは一人でデニーの死について考え、駄目な自分が代わりに死ねばよかった、などと思った。クリスは、自分が父親に憎まれているというゴーディの考えを否定した。そして、「いつか偉い作家になる。書くテーマがなければオレたちのことを書けば良いさ」と言って、ゴーディを励ました。
クリスとゴーディの前にエースたちが現われた。死体の発見者になるために車を飛ばしてきたのだ。エースはクリスたちに「死体を寄越せ」と凄んだ。だが、クリスは所有権を主張し、死体を引き渡すことを拒否し続けた。エースがナイフを取り出してクリスに迫った時、銃声が轟いた。音のした方を見ると、ゴーディが銃を構えていた。ゴーディはエースに銃を向けると、死体から手を引くよう啖呵を切った。ゴーディの気迫に押されたエースは、負け惜しみを言いながら不良仲間たちと一緒に引き返して行った。だが、この死体をめぐる争いがフェアでなかったことに気付いたゴーディは死体をそのままにして帰ることにした。結局、四人は匿名の電話で警察に死体のことを知らせたのだった。
冒険を終えたクリスたちは夜通し歩いてキャッスルロックに帰った。それぞれに思うことがあったのか帰路では誰もが無口だった。早朝、キャッスルロックに着いた時、なぜか町が小さく見知らぬものに見えた。四人はそれぞれの家に帰っていった。それから、四人はしだいに疎遠になっていった。クリスはゴーディと同じ進学コースに進み、一緒に町を出た。その後、クリスは大学を出て弁護士にまでなったが、ファーストフード店での喧嘩に巻き込まれて死んでしまった。時と共に友人は変わり、クリスとも十年以上合っていなかった。だが、12歳の時の友人に勝る友人を持ったことはなかったと、ゴーディは思うのだった。
キャスト
ゴーディ・ラチャンス
Gordie Lachance
| ウィル・ウィートン
Wil Wheaton
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クリス・チェンバース
Chris Chambers
| リヴァー・フェニックス
River Phoenix
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テディ・デュチャンプ
Teddy Duchamp
| コリー・フェルドマン
Corey Feldman
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バーン・テシオ
Vern Tessio
| ジェリー・オコンネル
Jerry O'Connell
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エース・メリル
| キーファー・サザーランド
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ビリー・テシオ
| ケイシー・シーマツコ
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チャーリー・ホーガン
| ゲイリー・ライリー
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アイボール・チェンバース
| ブラッドレー・グレッグ
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ラチャンス氏
| マーシャル・ベル
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ラチャンス夫人
| フランシス・リー・マッケイン
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マイロ・プレスマン
| ウィリアム・ブロンダー
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作家
| リチャード・ドレイファス
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ダニー・ラチャンス
| ジョン・キューザック
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スタッフ
監督
Directed by
| ロブ・ライナー
Rob Reiner
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脚本
Screenplay by
| レイノルド・ギデオン
Raynold Gideon
ブルース・A・エヴァンス
Bruce A. Evans
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原作小説
Based upon the novella by
| スティーヴン・キング「スタンド・バイ・ミー 秋の目覚め」
Stephen King
'The Body'
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製作
Produced by
| アンドリュー・シェインマン
Andrew Scheinman
ブルース・A・エヴァンス
Bruce A. Evans
レイノルド・ギデオン
Raynold Gideon
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撮影
Director of Phography
| トーマス・デル・ルース
Thomas Del Ruth
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美術
Production Designed by
| デニス・ワシントン(J・デニス・ワシントン)
Dennis Washington
(J. Dennis Washington)
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編集
Film Editor
| ロバート・レイトン
Robert Leighton
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音楽
Music by
| ジャック・ニッチェ
Jack Nitzsche
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キャスティング
Casting
| ジェーン・ジェンキンス,C.S.A.
Jane Jenkins,
C.S.A.
ジャネット・ハーシェンソン,C.S.A.
Janet Hirshenson,
C.S.A.
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プロダクション
製作
Presents
| コロムビア映画
Columbia Pictures
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