天才音楽家モーツァルトの死は暗殺だった?
豪華絢爛なオペラを織り交ぜた異色の伝記映画。
アマデウス
原題 | AMADEUS |
製作年 | 1984
年
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製作国 | アメリカ |
上映時間 | 160
分
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色彩 | カラー |
人類を代表する十八世紀の天才作曲家モーツァルトの謎に包まれた生涯に、虚実を取り混ぜて迫った異色の伝記映画。もともと舞台用の脚本を原作者のP・シェイファーが脚色。「カッコーの巣の上で』のM・フォアマンが監督した。異色というだけあり、一般的な伝記映画のように、モーツァルトの人間性を掘り下げるようなことはしない。モーツァルトを底抜けに明るい変態的な奇人としてとらえられているところが画期的だ。それまでもモーツァルトは神がかった才能ゆえに奇人変人と評価されていたが、モーツァルト=奇人というイメージを決定付けたのは、本作の成功のおかげと言っても過言でない。
物語は、モーツァルトの才能に嫉妬する宮廷作曲家サリエリの回想という形をとり、モーツァルトとの屈折した愛憎と、彼が死に至るまでの顛末を、ユーモアとミステリーを織り交ぜて描いている。また、豪華絢爛なコスチュームや美術による宮廷世界の再現も大きな見どころで、特にオペラの場面は圧巻となっている。モーツァルトの姿を描くことよりも、まずは音楽の楽しさを存分に伝えることで、親しみやすい娯楽大作に仕上げた。これらの斬新な手法は、新たしい伝記映画の形を示し、後の作品への影響も少なくない。『不滅の恋 ベートーヴェン』などが好例だろう。
T・ハルスがエキセントリックに演じきったモーツァルトは強烈だが、F・M・エイブラハムが演じたサリエリも、狂い方ではまったく引けを取っていないのが面白い。ストーカーばりのアンビバレンツで、モーツァルト暗殺作戦をたくらむサリエリは、ある意味、モーツァルト以上の変人として描かれている。モーツァルトという個人についてだけでなく、天才と凡人の壁という人類の永遠の謎について考えされる壮大な内容だが、サリエリとモーツァルトの常人の理解を超えた対決が圧倒的で、「天才と凡人の壁」というより、「天才とキチガイは紙一重」という言葉が頭をよぎってしまうのである。
2002年に二十分の未公開シーンが復元された『ディレクターズ・カット』が公開された。
自殺を図った老人サリエリ。彼は神父のフォグラーに、自分がモーツァルトを殺したのだと告白した――ウィーンの宮廷作曲家アントニオ・サリエリは、ザルツブルグの若き天才作曲家ヴォルフガング・アマデウスに強いあこがれを抱いていた。ある日、宮廷にモーツァルトが招かれることになり、サリエリは本人と対面する機会を得た。だが、サリエリの前に現れたモーツァルトは、その高貴な才能からは想像もつかないような下品な青年だった。たいそう驚いたサリエリは、それ以来、神を呪うようになった。
サリエリの反対もむなしく、モーツァルトは宮廷に仕えることになった。モーツァルトの才能を激しく妬んだサリエリは、彼をどうにかして失墜させようと躍起になった。そして、モーツァルトのもとへスパイを送り込んだ結果、彼がウィーンでは禁制の「フィガロの結婚」のオペラ化に、密かに取り組んでいることを掴んだ。サリエリは、そのことを皇帝のヨゼフ二世に言いつけてほくそ笑んだ。だが、皇帝はモーツァルトの熱心な説明に引き込まれ、「フィガロの結婚」を公演することを許してしまうのだった。
モーツァルトが最も愛する彼の父レオポルドが死んだ。それを知ったサリエリは、モーツァルトの暗殺を思いた。サリエリは、レオポルドに扮装してモーツァルトの家を訪ね、レクイエムの作曲を依頼した。モーツァルトを殺した後、完成した作品を自分名義にしてしまおうという計画だっだ。だが、レオポルドの死以来、モーツァルトは酒浸りになっていて、作曲の仕事ははかどらなかった。さらに、モーツァルトのだらしない生活に嫌気をさした、彼の妻コンスタンツェは家を出ていってしまった。
その頃、自分の音楽を理解しない宮廷に背を向けたモーツァルトは、大衆劇の作曲で生計を立てていた。だが、日頃の不摂生と過労がたたって、オペラ「魔笛」の公演中に倒れてしまった。サリエリはモーツァルトの家に駆けつけると、衰弱した彼を急き立て、口述でレクイエムを書き留めていった。ついに、レクイエムはついに完成し、サリエリの手に楽譜が手に入るかに見えた。とろこが、楽譜は、ちょうど家に戻ってきたコンスタンツェに取り上げられてしまった。そして、その横で、モーツァルトは息絶えていたのだった。
キャスト
アントニオ・サリエリ
| F・マーレイ・エイブラハム
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ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
| トム・ハルス
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コンスタンツェ・モーツァルト
| エリザベス・ベリッジ
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レオポルド・モーツァルト
| ロイ・ドートリス
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エマヌエル・シカネイダー
| サイモン・キャロウ
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カテリナ・カヴァリエリ
| クリスティーン・エバーソール
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皇帝ヨーゼフ二世
| ジェフリー・ジョーンズ
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オルシニ=ローゼンバーグ伯爵
| チャールズ・ケイ
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パロディ・コマンダトーレ
| ケニー・ベイカー
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フォグラー神父
| リチャード・フランク
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ロール
| シンシア・ニクソン
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サリエリの従者
| ヴィンセント・スキャヴェリ
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アルコ伯爵
| ダグラス・シール
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スタッフ
監督
| ミロス・フォアマン
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製作
| ソウル・ゼインツ
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製作総指揮
| マイケル・ハウスマン
ベルティル・オルソン
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原作/脚本
| ピーター・シェイファー
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撮影
| ミロスラフ・オンドリチェク
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音楽指揮/音楽コーディネーター
| ジョン・ストラウス
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音楽指揮/音楽監修
| ネヴィル・マリナー
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振付/オペラ演出
| トゥイラ・サープ
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美術
| パトリツィア・フォン・ブランデンスタイン
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装飾
| カレル・サーニー
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メーキャップ
| ディック・スミス
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編集
| ネーナ・デーンヴィック
マイケル・チャンドラー
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衣装デザイン
| テオドール・ピステック
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キャスティング
| メアリー・ゴールドバーグ
マギー・カルティエ
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