奴隷の身から開放された後、両親の仇を求めて旅に出た
英雄コナンとその仲間たちの冒険を描くファンタジー。
コナン・ザ・グレート
原題 | CONAN THE BARBARIAN |
製作年 | 1982
年
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製作国 | アメリカ |
上映時間 | 129
分
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色彩 | カラー |
ロバート・E・ハワードのファンタジー小説「英雄コナン」シリーズの映画化。ボディビルから映画の世界に飛び込んだシュワルツェネッガーの主演作としては、日本で初めて公開された作品である。
奴隷の立場から脱却し、冒険に飛び出した英雄の姿を神話的な世界観で描いた物語は、現在、映画化されたならば、それなりに端正なファンタジーとしてまとまりそうだ。しかし、製作のディノ・デ・ラウレンティス、脚本のオリヴァー・ストーン、監督のジョン・ミリアスというスタッフそれぞれのどぎつい個性がせめぎあい、80年代にしては、男臭く、泥臭い作品に仕上がっている。しかし、それが功を奏してか、ヒーローアクションの枠を越え、有史以前の人類の野生に近い姿が良く描かれている。ただ、本作の一番の魅力と思われるエロスとタナトスが混沌とした内容は、この手の作品にしては、ご家族揃っては観にくいかもしれない。実際、テレビでは、RPG感覚の続編『キング・オブ・デストロイヤー コンナPART2』の方が比較的よく放映された。
主役のコナンに扮した主演のシュワの、素で演っているとしか思えない朴訥さは、それはそれで楽しい。台詞も少なめで、はじめて喋るのが、上映開始から二十分というのには、愛嬌する感じられる。しかし、常軌を逸した筋肉を持ちながら、主役としてはキャラクターが薄く、悪役である邪教の教祖を演じたジェームズ・アール・ジョーンズのインパクトに食われてしまっている。教祖とコナンの間の復讐という名の依存関係がドラマ部分ではもっとも面白いところだが、教祖が常に優位に立ついう展開からも、シュワに分は無いようだ。また、怪しい魔法使い役の日系人俳優マコ・イワマツの好演も目を引き、主役であるはずのシュワの立場があまりない。彼が本格的に注目を集めるのは、2年後の『ターミネーター』を待たなければなくなくなった。
アクションシーンは、時代背景に則して、用いられる武器は剣や弓矢やハンマーといった原始的なもののみという拘りで、本作の見どころのひとつとなっている。剣を構えてポーズをキめるシュワの肉体美は、さすがその道を極めたものだけある。しかし、残念ながら、戦闘シーンではシュワは鎧を身にまとって戦うことが多いため、筋肉の躍動感はあまり楽しむことは出来ない。そのあたりは、漫画チックなヒーローアクションに徹した続編に委ねられるところとなる。シュワの筋肉があまり奮わなかった分、冒頭の騎馬が村を襲撃するシーンは、壮大な物語の幕開けに相応しい迫力がある。村人たちが果敢に立ち向かう様は、『七人の侍』の戦闘シーンを彷彿とさせるカタルシスがあるが、やはり、意識しているのだろうか。
1万2千年ほど前。アトランティス大陸が沈み、新たな文明が興るまでの間、世界は長い暗黒時代が続いた。後にアピロニアの王になるコナンは、暗黒のハイボリア時代に生まれ、苦難の生涯を生きた。
幼いコナンは、神々の残した“鋼の謎”について、剣職人の父に語り聞かされて育っていった。ある日、コナンの村に騎士の軍団が現われ、村人たちを虐殺していった。軍団のリーダーであるタルサは、コナンの父から剣を奪うと、父を犬に食い殺させ、母の首をはねた。タルサはコナンの命まで奪わなかったが、彼ら村の子供たちを連れて行き、奴隷として苦役につかせた。コナンは、騎士の紋章である双頭の蛇を記憶に焼き付けた。コナンと一緒に連れてこられてきた奴隷たちは苦役に耐えかねて次々と死んでいった。コナンだけは、復讐の執念により生き続け、やがて、逞しい青年に成長した。
ある日、コナンのもとに赤毛の商人が現われた。商人は、コナンの鍛えぬかれた肉体に惚れ込むと、彼を買い、闘技士として試合に出場させるようになった。コナンは無我夢中で戦った。生きようが死のうが関係なく、ただ、自分を迎える観客の熱狂が嬉しかった。彼は自分の価値を見出したのだ。数えきれないほどの勝利を収めたコナンは、その褒美として東部へ向かった。東部では、コナンは剣術の極意や読み書きを身に付けた。そんなある日、赤毛の商人がコナンを逃がした。逃がされた理由は分からなかったが、コナンは自由を手に入れた。
自由を謳歌し、荒野を駆け巡ったコナンは、勢いあまって遺跡の洞窟に転落した。コナンは、洞窟の奥に鎮座していた骸骨の手から、剣を手に入れた。両親の仇であるタルサを探し、旅を続けたコナンは、荒野の真ん中で女と出会った。コナンは、双頭の蛇のことについて尋ねる見返りに、女を抱いた。女はザモーラという町に行くようコナンに言うと、魔物に変身した。魔物を倒したコナンは、ザモーラを目指し、さらに、旅を続けた。途中、コナンは、鎖につながれた男と出会った。男はサボタイという名の盗賊で、弓の名手でもあった。コナンは、盗みの罪で狼の餌にされるところだったサボタイを助けた。
ザモーラにやってきたコナンとサボタイは、双頭の蛇ついて町民に尋ね、それが邪教の紋章であることを知った。また、教祖のタルサは、蛇の生まれ変われだと言い伝えられ、人々に恐れられていた。夜になり、コナンとサボタイは、邪教が儀式を行なう塔への侵入を試みた。塔の前には、同じ目的で来ていたバレリアという女盗賊がいて、コナンたちに協力することになった。塔に忍び込んだコナンたちは三人は、女を大蛇の生贄にする儀式を目にした。塔の地下に下りたコナンとサボタイは、“大蛇の眼”と呼ばれる宝石を奪うと共に、襲い掛かってきた大蛇を殺した。そして、怒り狂う僧侶たちを倒しながら、塔から脱出したのだった。
宝石を売って大金を手に入れたコナンとバレリアは、一緒に暮しながら、思いつく限りの贅沢をした。だが、贅沢が心の緩みを生み、コナンたち三人はオズリック王の前に引き出された。だが、予ねてよりタルサに腹を据えかねていた王は、コナンたちを許した。王は盗賊であるコナンたちを罰することが目的ではなく、切実な頼みごとがあった。それは、タルサに魔法をかけられ、彼の奴隷となった王女を、タルサの殿堂のある西部の魔の山から取り戻して欲しいということだった。まず、王は見返りとして、コナンたちに金を差し出した。バレリアはタルサの恐ろしさを語り、王女を救いに行かないようコナンを説得しようとした。彼女の望みは、コナンと二人で静かで幸せな生活を送ることだった。だが、翌朝、バレリアが目を覚ますと、そこにコナンの姿はなかった。
コナンは西へ向かって旅立ち、途中、かつて神々の住処だった地に差し掛かった。コナンは、その地で神々の霊を慰めている魔法使いと出会った。神殿に向かう信者たちの列に加わったコナンは、僧侶に化けると、魔の山の殿堂に潜入した。だが、すぐに盗賊であるということがばれ、タルサの前に引き出された。“大蛇の眼”を奪い、大蛇を殺したコナンに拷問を加えていたタルサだったが、相手があの時の少年だと知ると、“鋼の謎”に対する答えを教えた。すなわち、それは、「鋼は肉には勝てない」ということだった。そして、自分の肉の力を示すため、タルサは一人の女性に命じ、彼女を崖から飛び降りさせた。
コナンはタルサの命令で嘆きの木の上に磔にされた。飢えと疲労が頂点に達し、意識を失いかけたその時、バレリアとサボタイが救出にやってきた。バレリアは、瀕死のコナンを魔法使いのもとに連れて行くと、神々の力で直して欲しいと頼んだ。魔法使いは、神々への代償を恐れていたが、バレリアは代償を自分で払うと告げた。夜になると、天が不気味な雲と光で覆われ、コナンのもとに死神がやってきた。バレリアと魔法使いは死神と戦い、ついに追い払った。こうして、死の渕から蘇ったコナンの肉体には、さらなる力がみなぎっていた。
魔法使いの話では、魔の山は空洞になっていて、その中にタルサは住んでいるのだという。コナンたちは、復讐を後回しにし、まずは王女を救出に向かうことにした。魔の山の裏の谷から洞窟に入ったコナン、バレリア、サボタイは、タルサの住処に火を放つと、抵抗する僧侶たちを斬り倒しながら、王女を連れ出した。だが、魔の山から去ろうとした時、バレリアがタルサの放った毒矢に射抜かれた。バレリアは自らが望んだごとく、神々への代償として死んだ。コナンは深い悲しみの中で、バレリアを火葬にした。
コンナは自分のために命をかけてくれたバレリアのため、自分も命をかけて邪教集団と戦うことを決意した。王女を囮にしたコナンは、王女を取り返しにやってきたタロスとその騎士の軍勢に立ち向かった。サボタイ、魔法使い、そして、バレリアの霊の加勢を得たコナンは、騎士の軍勢を打破。敗退したタロスは去り際に弓矢で王女を殺そうとしたが、間一髪、サボタイが守った。
その夜、タロスは殿堂で多くの信者に向かい、裁きの時が来たことを告げた。と、その時、タロスの背後にコナンが現われた。タロスは怒りの表情を浮かべるコナンに対し、「私はお前に生きる意志を与えた、言わば父親。私が死ねば、お前の生きる意味もなくなる」と言い、コナンの戦意を失わせようとした。だが、次の瞬間、コナンはタロスの首に剣の一撃を与えた。さらに、コナンは剣を振り上げ、タロスの首を断った。タロスの首を高く掲げた時、信者たちにかけられた魔法が解けた。殿堂に火を放ったコナンの足元には、王女がひれ伏していた。
王女をオズリック王のもとに送り届けたコナンは、仲間と共に西へと旅立っていった。幾多の冒険で勝利をおさめたコナンは、人々に尊敬され、また、恐れられ、やがて、アピロニアの王となったのだった。
キャスト
コナン
| アーノルド・シュワルツェネッガー
Arnold Schwarzenegger
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サボタイ
| ジェリー・ロペス
Gerry Lopez
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バレリア
| サンダール・バーグマン
Sandahl Bergman
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タルサ・ドゥーム
| ジェイムズ・アール・ジョーンズ
James Earl Jones
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オズリック王
| マック・フォン・シドウ
Max von Sydow
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魔法使い
| マコ
Mako
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スタッフ
撮影
Director of Photography
| デューク・キャラハン
Duke Callaghan
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音楽作曲/指揮
Music Composed and Conducted by
| ベイジル・ポールドゥリス
Basil Poledouris
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製作総指揮
| D・コンスタンティン・コンテ
エドワード・R・プレスマン
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原案
| ロバート・E・ハワード
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脚本
Written by
| ジョン・ミリアス
John Milius
オリヴァー・ストーン
Oliver Stone
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製作
Produced by
| バズ・フェイトシャンズ
Buzz Feitshans
ラファエラ・デ・ラウレンティス
Raffaella De Laurentiis
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監督
Directed by
| ジョン・ミリアス
John Milius
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