コルレオーネ・ファミリーは合法的な事業を始めようとするが、
ドン・マイケルの後継者候補が抗争の火種を持ち込み……。
老境のドンの最期を描くシリーズ完結編。
ゴッドファーザー PARTV
原題 | THE GODFATHER PART III |
製作年 | 1990
年
|
製作国 | アメリカ |
上映時間 | 162
分
|
色彩 | カラー |
ギャング/マフィア映画の代名詞「ゴッドファーザー」シリーズの第3弾。前作『パートU』より16年振りの続編となるが、前作で物語が一応の完結をみているので、続編というより後日談的な内容と言ったほうが近い。正編の熱心なファンにとっては、ありがた迷惑な作品とされていて、コッポラ監督自身にも、プーゾの原作を離れた本作は外伝的な作品と位置付けられている。シリーズの顔であるアル・パチーノの出演はもちろん、『アンタッチャブル』で注目された若手アンディ・ガルシア、コッポラの娘ソフィア(実は子役として前二作にも出ている)の出演も話題になった。
時代が遷り変わるに連れて個人主義が進み、家族の絆という価値観が崩壊しつつあるアメリカは、マフィアにとっては生きにくい場所となった。そこで、マイケルは犯罪組織であるところのマフィアを廃業し、ファミリーを合法的なビジネスに向けさせようとする。彼にとって、家族を守るためならば、マフィアであることは必ずしも前提ではないのだ。しかし、マイケルの計画は挫折し、一時、アメリカを離れることになる。イタリア移民である彼らの帰るところといえば、シチリアであり、カトリックである。ファミリーとバチカンとの関係を大きく扱っているのも、原点回帰や集大成という意味合いがあるのかもしれない。シリーズ共通の見せ場であるクライマックスの大量殺戮のくだりは、背景で上演されるオペラを重なり、シリーズの中で最高にドラマチックなシーンとなっている。
本作が前二作と決定的に異なるところは、ひたすらにマイケルの懺悔と断罪を描いていくことである。それは、ちょうど、『パートU』のラストシーンを発展させたようなもので、本作のラストシーンもマイケルが孤独に死していく姿につながっていく。最期まで父のように冷酷に徹せられず、“ゴッドファーザー”になりきれなかったマイケル。しかし、それでも家族を守るために戦い続ける姿は、深い感動を与える。ただ、“ゴッドファーザー”としてのマイケルを活躍を期待した観客にとっては、運命に苛めぬかれる老マイケルの姿は見るに忍びないものであったようだ。しかし、マイケルが報いを受けさせられることは、宗教的な暗示の多いシリーズにとっては、極めて必然的でもある。
前二作で文句がつけられないほど、きれいに完結してしまっているため、三作目がどんな内容であっても、屋上屋を架す行為になってしまう。しかし、そういった不利な立場にあり、また、望まれずに作られた作品であったとしても、本作が「ゴッドファーザー」シリーズを貶めるものでは決して無い。続編が作られたこと自体が冒涜だと感じる人がいるかもしれないが、前作までの世界観やらプロットやらを踏襲しつつも、それだけでお茶を濁すことなく、あえてマイケルの贖罪に挑んだことは、前二作への敬意が払われている証し。もし、三部作として計画的に作られていたならば、ファンにも正編の一部として受け入れられていたかもしれない。また、演出的も比較的こなれ、前二作ほど重苦しくないので、その見易さから「ゴッドファーザー」への入門編とするのも良いかもしれない。
コルレオーネ・ファミリーのドンに君臨するマイケルが兄のフレドーを始末してから何年も経ち、彼の子供たちの成人になっていた。マイケルはカトリック教会から勲章を受けることになった。叙勲を祝うパーティの席で、マイケルの最愛の娘メアリーと、マイケルの亡き兄ソニーの遺児ビンセントが出会い、二人は恋に落ちた。一方、マフィアである父に反発する長男アンソニーは、オペラ歌手になりたいと言い出し、マイケルを悩ませるのだった。
マイケルはバチカンの大司教ギルディの庇護を受けることで、ファミリーを完全に合法的な事業に向かわせようと考えていた。そこで、マイケルは後継者として、ファミリーに代わり街を仕切っているザザのもとから、彼らのもとで働いていたビンセントを引き抜いた。だが、そんな折りに、ビンセントとザザの間で抗争が起こり、ザザの手下が殺された。
バチカンの企業の買収の事業に乗り出そうととていたマイケルは、他のマフィアらと手を切ることを決意した。マイケルはマフィアのドンを集め、合法な事業をはじめることを宣言した。だが、その会議の席上でザザが反乱を起こし、ドンたちが皆殺しにされた。マイケルは運良く生き残るが、事件のショックで倒れてしまった。ビンセントは報復として、ザザを撃った。大抗争の危機が迫っいることを感じたマイケルは、アメリカを離れた。
アンソニーの初公演が迫った頃、ファミリーはシチリアへ帰ってきていた。その時、マイケルは、メアリーとビンセントの関係を知り、激しく反対。ビンセントを信頼するドン・トマシーノのもとで働かせることにした。マイケルは、バチカンのランベルト枢機卿に今までの罪をすべて懺悔し、もう殺人を犯さないことを誓った。シチリアに滞在中、トマシーノが暗殺された。ビンセントはマイケルに黒幕の存在を教えた。
大きな計画が動き出そうとしていた。マイケルはビンセントを新たにドンに任命した。アンソニーの公演の当日、ビンセントの指揮のもと、大司教や黒幕のドン・ルケーゼが次々と暗殺されていった。公演は成功のうちに終わるが、劇場の前の大階段でマイケルは狙撃された。撃たれたのはメアリーだった。マイケルは悲痛な叫びをあげた。数年後、年老いたマイケルは、誰にも見とられずに一人ひっそりと死んでいった。
キャスト
マイケル・コルレオーネ
| アル・パチーノ
|
ケイ・アダムス
| ダイアン・キートン
|
コニー・コルレオーネ・リッツィ
| タリア・シャイア
|
ビンセント・マンシーニ=コルレオーネ
| アンディ・ガルシア
|
ドン・アルトバッロ
| イーライ・ウォラック
|
ジョーイ・ザザ
| ジョー・マンテーニャ
|
B・J・ハリソン
| ジョージ・ハミルトン
|
グレース・ハミルトン
| ブリジット・フォンダ
|
メアリー・コルレオーネ
| ソフィア・コッポラ
|
ランベルト枢機卿
| ラフ・ヴァローネ
|
アンソニー・ビトー・コルレオーネ
| フランク・ダンブロージョ
|
ギルディ大司教
| ドナル・ドネリー
|
アル・ネリ
| リチャード・ブライト
|
フレデリック・カインシグ
| ヘルムート・バーガー
|
アンドリュー・ヘーゲン神父
| ジョン・サヴェージ
|
カロ
| フランコ・チッティ
|
ドン・トマシーノ
| ヴィットリオ・デューセ
|
ドン・リシオ・ルケーゼ
| エンゾ・ブロッティ
|
スパラ
| マイケル・ラッソ
|
ジョニー・フォンターネ
| アル・マルティーノ
|
スタッフ
監督/製作
| フランシス・フォード・コッポラ
|
製作総指揮
| フレッド・フックス
ニコラス・ゲイジ
|
共同製作
| フレッド・ルース
チャールズ・マルヴェヒル
ゲイリー・フレドリクソン
|
脚本
| フランシス・フォード・コッポラ
マリオ・プーゾ
|
撮影
| ゴードン・ウィリス
|
音楽
| カーマイン・コッポラ
|
追加音楽
| ニーノ・ロータ
|
美術
| アンジェロ・グラハム
|
編集
| バリー・マルキン
リサ・フラックマン
ウォルター・マーチ
|
キャスティング
| ジャネット・ハーシェンソン
ジェーン・ジェンキンス
ロジャー・マッセンデン
|