無口な中年の殺し屋“レオン”と、家族を麻薬捜査官に殺された12歳の少女。
都会の片隅で出会った孤独な二人の愛を描く。
レオン
原題 | LEON |
製作年 | 1994
年
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製作国 | フランス/アメリカ |
上映時間 | 110
分
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色彩 | カラー |
「生涯に撮る映画は10本だけ」と宣言しているリュック・ベッソンの『アトランティス』に続く6作目。大々的にアメリカ資本を投入し、舞台もアメリカ・ニューヨークとしたはじめての作品。本作と同じく殺し屋と題材とした『ニキータ』で、“掃除屋”役として登場したジャン・レノが、その役を発展させたような主人公レオンを朴訥と演じる。本作のヒットが一躍、彼を人気者にした。レオンの“恋人”マチルダ役は、オーディションで選ばれたナタリー・ポートマン。レオンに向ける熱いまなざしが大人顔負けで、レノとも張り合える圧倒的な存在感を見せる。敵(かたき)役は、ゲイリー・オールドマン。エキセントリックなジャンキー麻薬捜査官を怪演、いや、狂演している。完全版は136分。
ベッソンは一作毎に作風を変えると言われ、その作風の触れ幅の大きさが批判の対象でもあり、また、彼の魅力ともなっている。繊細なドラマなら『グレート・ブルー(グラン・ブルー)』。漫画的なアクションなら『フィフスエレメント』。この二つがその両極端とも言えそうだが、本作は漫画とドラマのバランス感覚に優れているため、ベッソンのファン以外の多くの観客にもアピールする作品となった。そもそも、「心優しい殺し屋と少女の出会い」という設定からして漫画であるが、そのありえな設定の中にありながら、孤独な二人の心情を描くことに成功している。凄腕の殺し屋の私生活を描いた場面が特に秀逸で、レオンが背中をまるめて家事にいそしむ場面の侘しさは背筋が凍るほどだ。
本作の素晴らしさは、“静”と“動”のメリハリの利いた構成の他に、作品全体に覆う悲痛なまでのストイシズムにもある。都会の片隅で身を寄せ合う二人の姿を描くドラマは言わずもがなだが、凄惨なバイオレンスを見せるアクションにもそれは言え、だらだらと銃撃や爆発を見せるのではなく、不要なものを殺ぎ落としたような一撃必殺的なアクションを見せるのである。また、赤の他人の中年と少女というシチュエーションは、『ペーパー・ムーン』のように二人の関係をハートウォームな親子のようなものにしてしまいがちだが、むしろ、恋人関係にしてしまったところが挑戦的。しかし、ともすれば『ロリータ』のような作品になってしまうものを、ストイシズムによって、ギリギリのところで踏みとどまらせているのである。そして、その危うさこそが、本作の魅力の大きい部分を占めているのかもしれない。
標的を確実に仕留める凄腕の殺し屋レオン。彼はニューヨーク・リトル・イタリーのアパートに一人暮らし。好物はミルク。趣味はミュージカル映画鑑賞。そして、唯一の友達は鉢植え。子供の頃に暗殺仲介人のトニーに拾われ、殺し屋として育てられたレオンはまともな教育を受けておらず、読み書きが出来なかった。レオンの隣りの部屋に暮しているのは、彼と顔見知りの少女マチルダとその家族。父親は麻薬の売人で、母親は継母、義姉は体重を減らすことしか考えていない。4歳の弟だけは自分に懐いてくれたが、家族に愛されていないと感じているマチルダは、学校にも行かず、アパートでタバコを吸って日々を潰していた。
ある日、マチルダの家に“スタン”と呼ばれるスーツの男が部下を引き連れてやって来た。スタンはマチルダの父親に預けていたヘロインを出すよう迫っていた。父親が「くすねていない」と主張すると、スタンは不気味な威圧感で父親を圧倒。正午までに盗んだ犯人を調べるよう約束させ、部下と共にアパートを出て行った。
翌日、義姉に殴られ、アパートの廊下で鼻をすすっていたマチルダは、帰宅したレオンにハンカチを渡された。お礼にマチルダはレオンのミルクを買いに出掛けた。マチルダが買い物に行っている間、時刻は正午を指し、約束どおりスタンが部下たちと共にやってきた。スタンはいつも携帯しているカプセルを口に含むと、マチルダの家に押し込み、幼い弟を含む一家四人を次々と射殺した。紙袋を抱えてアパートに戻ってきたマチルダは、自宅の玄関に横たわる父親の死体を横目に見ると、そのまま真っ直ぐ進み、突き当たりのレオンの部屋のベルを押した。スタンの凶行の一部始終をドアののぞき穴から見ていたレオンは、「中に入れて」と泣きながらベルを押しつづけるマチルダを部屋に招き入れたのだった。
レオンはマチルダから事情を訊いていたが、彼が少し目を離した隙に、銃の入った鞄の中身を見られてしまった。レオンは仕方なく自分が“掃除屋”であることを打ち明けた。レオンの職業を知ったマチルダは、弟を殺した犯人の暗殺を依頼しようとするが、料金は5000ドルだという。そんな大金が払えないマチルダは、家事をする代わりに、レオンに殺し方を教えて欲しいと迫った。夜になり、秘密を知られてしまったレオンは、寝静まったマチルダに消音器付きの銃を向けた。だが、女と子供以外は殺さないというポリシーには背けず、銃を戻したのだった。
翌朝、レオンはマチルダを連れてホテルの部屋に移った。トニーから殺しの初心者が使うライフルを借りたレオンは、ビルの屋上にマチルダに連れて行き、狙撃の練習をさせた。マチルダは、レオンから銃の扱い方や体の鍛え方を教わる一方、約束どおり家事をこなし、ついでにレオンに読み書きを教えるようになった。レオンは身の回りのことを何でもマチルダにまかせたが、鉢植えの世話だけは彼女にやらせなかった。鉢植えの自分と同じで無口で根がないところが好きだったレオンだが、「大地に植えれば根を張る」とマチルダから教えられ、黙って頷いた。マチルダはレオンと一緒に暮すうち、彼に恋していることに気付いた。マチルダがそのことをレオンに話すと、彼は逃げるように仕事に出かけてしまった。
ある日、マチルダは家族が殺された自宅に侵入し、床板を外した。ヘロインを探していたスタンたちも、床下の金には気がつかなかったようだ。マチルダがお気に入りのぬいぐるみと金をもって部屋を出ようとすると、スタンが二人のスーツの男たちとやってきた。スタンはスーツの男たちと「捜査のやり方」について揉めているようだった。だが、そのうち、スタンは怒り出し、部屋を出て行った。マチルダがタクシーでスタンの後を追うと、行き着いた先は麻薬取締局のビルだった。男は麻薬取締局の捜査官スタンフィールドだったのだ。その時、マチルダは弟の復讐の計画を思いついた。
マチルダがレオンのそっけない態度への仕返しに、ホテルのフロントに「レオンは愛人」と告げため、二人はホテルから追い出されてしまった。こうして、レオンとマチルダは新しい部屋で生活をはじめることになった。その頃、レオンは仕事で肩に銃弾を受けてしまっていたが、それをマチルダにもトニーにも言えずにいた。後に残されるマチルダのことを心配したレオンは、トニーを訪ね、自分にもしものことがあった場合、これまで預けている金をすべてマチルダに渡して欲しいと頼んだ。
レオンがトニーを訪ねてている間、マチルダは復讐の計画を実行に移そうとしていた。スーパーの紙袋に銃をいっぱい詰めて、麻薬取締局に向かったのだ。受付の目を誤魔化して建物に潜入したマチルダは、スタンスフィールドを探して男子トイレへ入った。だが、そこで待ち伏せていたスタンスフィールドに追い詰められることに。マチルダがここへやって来た理由を知り、彼女に銃を向けるスタンスフィールド。その時、部下のブラッドがトイレに飛び込んできた。別の部下マルキーがイタリア系の殺し屋に殺されたのだ。その殺し屋は、マルキーを殺す直前、「女と子供以外は」と呟いたという。マチルダはオフィスで尋問を受けることになったが、彼女の書置きを読んで駆けつけたレオンに救出された。
マルキーに加えてブラッドまでも殺され、怒りに燃えるスタンスフィールドは、トニーのもとへ乗り込んだ。トニーはこれまでにもスタンスフィールドの依頼で数々の暗殺を請け負ってきたのだ。スタンスフィールドは、ここで使っているイタリア系の殺し屋に会わせろ、とトニーに迫った。
レオンのミルクを買ってホテルに戻ってきたマチルダは、廊下で防毒マスクを着けたSWAT隊に捕まってしまった。マチルダはSWATに脅され、ノックの合図を教えた。だが、SWATはレオンの部屋に乗り込むと、そこはもぬけの殻。ノックの合図の違いでマチルダの危機を知ったレオンは、部屋の天井に潜んでいたのだ。レオンはSWATの不意をつき、彼らを次々と射殺。マチルダを奪い返すと、逆にSWATを人質にとって部屋に潜伏。だが、スタンスフィールドの指揮する大勢のSWATによりホテルに完全包囲され、レオンとマチルダの逃げ場は残されていなかった。レオンは斧の振り上げ、換気扇を破壊。そして、マチルダに鉢植えを預けると、喚起口を伝って一人で逃げるよう彼女に言った。レオンは泣きじゃくるマチルダに、「君は俺に生きる望みをくれた」と告げ、彼女を送り出した。その瞬間、部屋にロケット弾が撃ち込まれた。
SWATはレオンの死体を確認することは出来なかったが、瀕死の重傷を負った仲間の一人を救出していた。現場の様子を見に来たスタンスフィールドは、救出れされSWATが防毒マスクを取ったとき、それがレオンであることに気付いた。レオンはホテルの出口を目指し、足を引き摺るようにゆっくりと歩いていった。だが、出口まで後数歩というところで、後をつけて来たスタンスフィールドから背中に銃弾を浴び、その場に倒れた。レオンは近寄ってきたスタンスフィールドに、「マチルダからの贈り物」を手渡した。スタンスフィールドが掌を開くと、そこにはピンがあった。レオンのジャケットを開くと、体に爆弾が巻かれていた。ホテルは轟音と共に吹き飛んだ。
ホテルを脱出したマチルダは、レオンと落ち合う約束をしていたトニーの店に向かった。だが、そこにレオンが現れることはなかった。トニーに100ドルだけ渡されたマチルダは、ここで殺し屋として雇ってくれるよう頼んだ。だが、トニーはマチルダを雇うことを拒否し、「レオンは死んだんだ」と言い、彼女を店から追い出した。学校に戻ったマチルダは、この四週間の出来事を正直に学長に話すが、信じてもらうことは出来なかった。学校を出たマチルダは、鉢植えを校庭の大木の横に植え、「もう安心よ、レオン」と語りかけたのだった。
キャスト
レオン
Leon
| ジャン・レノ
Jean Reno
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スタンスフィールド
Stansfield
| ゲイリー・オールドマン
Gary Oldman
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マチルダ
Mathilda
| ナタリー・ポートマン
Natalie Portman
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トニー
Tony
| ダニー・アイエロ
Danny Aiello
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マルキー
Malky
| ピーター・アペル
Peter Appel
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マチルダの父親
Mathilda's Father
| マイケル・バダルコ
Michael Badalucco
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マチルダの母親
Mathilda's Mother
| エレン・グリーン
Ellen Greene
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ファットマン
Fatman
| フランク・センジャー
Frank Senger
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スタッフ
音楽
Music by
| エリック・セラ
Eric Serra
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脚本/監督
Written and Directed by
| リュック・ベッソン
Luc Besson
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キャスティング
Casting by
| トッド・タラー
Todd Thaler
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撮影
Director of Photography
| ティエリー・アルボガスト
Thierry Arbogast
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美術
Production Designer
| ダン・ウェイル
Dan Weil
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衣装デザイン
Costume Designer
| マギャリー・ギダッチ
Magali Guidasci
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編集
Edited by
| シルヴィ・ランドラ
Sylvie Landra
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音響技術
Sound Engineer
| ピエール・エクスコフィエ
Pierre Excoffier
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音響編集
Sound Editor
| パトリス・グリソレ,U.S.C.
Patrice Grisolet,
U.S.C.
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リレコ・ミキサー
Re-recording Mixer
| ジェラール・ランプ,U.S.C.
Gérard Lamps,
U.S.C.
フランソワ・グロール,U.S.C.
François Groult,
U.S.C.
ブリュノ・タリエール,U.S.C.
Bruno Tarrière,
U.S.C.
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音楽ミキサー
Music Mixer
| ウィリアム・フラジョレ,U.S.C.
William Flageollet,
U.S.C.
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製作総指揮
Executive Producer
| クロード・ベッソン
Claude Besson
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ライン・プロデューサー
Line Producer
| ベルナール・グルネ
Bernard Grenet
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プロダクション
提供
Presents
| ゴーモン
Gaumont
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製作
Production
| ゴーモン
Gaumont
レ・フィルム・ドュ・ドーファン
Les Films Du Dauphin
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