瀬戸内海小豆島の小学校を舞台に、
女先生と十二人の生徒たちの触れ合いを戦前から終戦にかけて描く。
二十四の瞳
製作年 | 1954
年
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製作国 | 日本 |
上映時間 | 156
分
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色彩 | モノクロ |
木下監督の得意とする年代記ものの傑作。舞台は瀬戸内海の小豆島。島の小学校にやってきた新任の教師“小石先生”と、そこで彼女がはじめて教えた生徒たちの辿った18年間を、戦争の悲劇を交えながら描く。十二人の教え子には、成長に合わせてそれぞれ三人ずつ別の役者をあてられているが、主人公の“小石先生”は、高峰秀子が初々しい新任教師から逞しい母親までを一人で演じきっている。
木下監督の年代記の特徴は、時間の流れのすべて追うのではなく、大胆にかいつまんで語るところである。一つか二つのエピソードを語った後、いきなり数年後に話が飛ぶことも多々あるが、ここで、“五年”、“八年”と経過した時を明確にするのも木下流。あえて、経過した時を意識させることにより、観客に語られなかった行間を読むことを促し、その結果、観客がより深く物語に感情移入させる効果が得られるのである。本作から受ける感動は、作品が謳いあげた教師と生徒の関係の普遍性によるところももちろんあるが、大きな時の流れを身近な体験として感じられるところから得るものも大きいと思われる。
本作で印象的なのは、子供たちが歌う童謡や唱歌。ことあるたびに歌が歌われる様は、まるでミュージカルのようだ(和製『サウンド・オブ・ミュージック』?)。本作は時の流れが叙情と深い関係にあることを示しているだけでなく、歌を効果的に使うことで、歌が思い出を記憶に留めることを示しているかようである。実際、多くの人はこの映画を歌と共に記憶しているのである。最後も期待を裏切らず、「仰げば尊し」の合唱でおおいに盛り上がりながら物語は幕を閉じる。
昭和三年。瀬戸内海の小豆島の小学校の分教場に新任教師の大石久子が自転車に乗って颯爽とやって来た。彼女の担当することになったのは、一年生の十二人の生徒。十二人は、小さな久子のことを「小石先生」と呼んで親しんだ。ところが、ある日、久子は足を骨折してしまい、自転車で学校へ通えなくなってしまった。久子は十二人と別れて、本校へ転任したのだった。
五年後。久子が結婚したその年、六年生になった十二人が本校へ通うようになった。久子は再会した十二人の生徒を教えるつもりだったが、生徒の中の一人、松江が、母親が亡くなったために学校を辞めざるを得なくなった。修学旅行で生徒たちと金毘羅参りに行った時、久子は食堂で奉公をしている松枝を見かけた。だが、久子には何もしてやることができなかった。
それから八年後。アカ狩りの波が小豆島にまで押し寄せ、学校も軍国主義的な教育を推し進めるようになった。そんな学校に失望した大石は、教えていた六年生が卒業すると同時に学校を辞めた。だが、止むことのない戦争の勢いは、久子の教え子たちを巻き込み、男子たちは皆、兵隊に取られていった。やがて戦争が終結したが、教え子のある者は戦死し、ある者は病死したのだった。
終戦の翌年。久子は本校に教師として戻った。教え子の墓の前で泣く久子を見た生徒たちは、彼女のことを親しみを込めて「泣きみそ先生」と呼んだ。久子が新しい生徒たちを教え始めた頃、生き残った教え子たち、そして、松江が歓迎会を開いてくれた。七人の教え子たちは感謝を込めて、久子に自転車を贈ったのだった。
キャスト
マスノ
| 月丘夢路
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早苗
| 小林トシ子
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松江
| 井川邦子
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磯吉
| 田村高廣
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男先生
| 笠智衆
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大石先生の母
| 夏川靜江
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男先生の妻
| 浦辺粂子(大映)
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よろづや
| 清川虹子
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飯屋のかみさん
| 浪花千栄子
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校長
| 明石潮
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大石久子の夫
| 天本英世(俳優座研究生)
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ちりりんや
| 高原駿雄(青俳)
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松江の父
| 小林十九二(俳優座研究生)
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小林先生
| 高橋トヨ子(高橋豊子)
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ミサコ
| 篠原都代子(文学座研究生)
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小ツル
| 南眞由美
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田村先生
| 大塚君代
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松江の母
| 草香田鶴子
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マスノの母
| 本橋和子
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竹一
| 三浦礼
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吉次
| 戸井田康国
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正
| 大槻義一
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仁太
| 清水竜雄
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コトエ
| 永井美子
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教員
| 鬼笑介
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同
| 高木信夫
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同
| 上村勉
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看護婦
| 寺田佳代子
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大石先生の子大吉
| 八代敏行
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同幼年期
| 八代豊
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次男並木
| 木下尚爾
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同幼年期
| 浮田久之
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長女八津
| 郷古慶子
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大石先生
| 高峰秀子
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二十四の瞳 分教場時代
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岡田磯吉
| 郷古秀樹
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竹下竹一
| 渡辺五雄
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徳田吉次
| 宮川真
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森岡正
| 寺下雄朗
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相沢仁太
| 佐藤国男
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香川マスノ
| 石井裕子
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西口ミサ子
| 小池泰代
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川本松江
| 草野節子
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山石早苗
| 加瀬かをる
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加部小ツル
| 田辺由実子
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山下富士子
| 神原いく子
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片桐コトエ
| 上原博子
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二十四の瞳 本校時代
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岡田磯吉
| 郷古仁史
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竹下竹一
| 渡辺四郎
|
徳田吉次
| 宮川純一
|
森岡正
| 寺下雄章
|
相沢仁太
| 佐藤武志
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香川マスノ
| 石井シサ子
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西口ミサ子
| 小池章子
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川本松江
| 草野貞子
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山石早苗
| 加瀬香代子
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加部小ツル
| 田辺南穂子
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山下富士子
| 神原豊子
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片桐コトエ
| 上原雅子
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スタッフ
製作
| 桑田良太郎
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原作
| 壷井栄(光文社版)
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撮影
| 楠田浩之
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美術
| 中村公彦
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録音
| 大野久男
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照明
| 豊島良三
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音樂
| 木下忠司
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装置
| 佐須角三
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装飾
| 島田丒太郎
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衣裳
| 林栄吉
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現像
| 中原義雄
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編集
| 杉原よ志
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監督助手
| 川頭義郎
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撮影助手
| 荒野諒一
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録音助手
| 西崎英雄
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照明助手
| 須藤清治
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録音技術
| 堀川修造
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進行
| 小梶正治
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應援
| 小豆島苗羽公民館演劇グループ
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脚色/監督
| 木下惠介
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