オレンジ色に発光するUFOの目撃が相次ぐ中、
その光に誘われた一人の幼児が行方をくらます。
地球外生命体とのファースト・コンタクトを描いたSFファンタジー。

未知との遭遇
ファイナル・カット版

原題CLOSE ENCOUNTERS OF THE THIRD KIND
COLLECTOR'S EDITION
別題(LD) 未知との遭遇
コレクターズ・エディション
別題(劇場公開) 未知との遭遇
ディレクターズ・カット 完全版
別題(NHK衛星第2放映時) 未知との遭遇
特別編
製作年1998 年
製作国アメリカ
上映時間137 分
色彩カラー



解説
これまであったSFの中では、異星人は侵略してくるものとして描かれるのが普通だったが、この映画は異星人とのファースト・コンタクトを感動的なものとして描くことで、異星人の持つ恐ろしいイメージを180度転換させてしまった。それは、後の『E.T.』で決定的なものとなり、後のSFにも善良な異星人との人類の交流を描く作品が出てくることになったが、世間に新しい異星人のイメージを印象付けたのは本作がはじまりと言ってもいいかもしれない。
ストーリーは世界各地を股にかけた壮大なもので、人類史上初の異星人との接触までのプロセスがサスペンス・タッチで展開していく。UFOに関する様々な情報を収集し、分析していく様がスリリングで、「次は何が出てくるのか」という興奮と緊張の連続で観客を引き込んでいく。
UFO調査チームの活動を描いた部分はSFとして申し分のない面白さなのだが、その一方で、作品のエモーションの部分を担うことになるのが、UFOの目撃者である電気技師である。ストーリーの中盤辺りはUFOがいっせい登場せず、代わりに、電気技師ら目撃者がUFOに取り付かれていく様を執拗に描いていく。ドレイファス扮する電気技師の狂気は、作品のテーマを否定するかのような凄まじさなのだが、ここで観客はUFOの登場を切望することになるのである。
電気技師らが苦難を乗り越えた末に、ついに目撃することになる異星人。光と音によって華やかに演出されたファースト・コンタクトは、さながら儀式かショウのようで圧巻だ。UFOや異星人の姿は、これまでに一般的に想像され、認知されてきたものから大きく逸脱していない。しかし、見かけに反する好印象を与えるから不思議。ここに、異文化との交流で友好的になれるかは自分次第なのだというメッセージが託されているようでもある。
最後には微笑みさえ送ってくる異星人だが、実のところ、彼らの目的はまったく不明であり、侵略の可能性も否定できない。しかし、すべてを失った電気技師とってみれば、彼らは待ち望まれた救い主なのである。その宗教的な暗示が、劇的なクライマックス・シーンをより感動的なものに高めている。
スピルーバーグは、作品を象徴するアイコンを観客の記憶に刻み付けるのが上手い。例えば、『ジュラシック・パーク』の琥珀、『シンドラーのリスト』の赤い服、そして、『E.T.』の指先の接触などそれである。本作はアイコンの使い方が特に秀逸である。ディズニーの「星に願いを」をモチーフにした五音音階と、それを翻訳した手話は強い印象を残し、作品をより忘れがたいものにしている。
『未知との遭遇』には1977年の劇場公開版をはじめ三つのジージョンが存在している。本バージョンは1998年にLD用に発表されたもっとも新しく、もっとも長いものであり、当時は「コレクターズ・エディション」と呼ばれていた。1980年の「特別篇」で加えられた母船内部を映したラストシーンはオリジナルのものに戻され、また、「特別篇」でカットされていた軍の説明会のシーンが復活している。「コレクターズ・エディション」は、翌年の1999年10月31日、「東京ファンタスティック映画祭」において、「ディレクターズ・カット 完全版」というタイトルで世界で初めて劇場公開された。そして、このバージョンは現在、「ファイナル・カット版」と呼ばれている。ちなみに、題名の「第三種接近遭遇」とはUFO研究の用語で、異星人との直接的接触のこと。



ストーリー
メキシコのソノラ砂漠。極秘プロジェクトの一団があるものを確認するためにやって来た。フランス人科学者ラーコム博士と通訳のローリンは砂嵐の中に数機の戦闘機を発見。それは、1945年にフロリダから飛び立ち、行方不明になったものだった。機は長い年月が経ってるにも関わらず、当時と変わらぬ状態だった。戦闘機の出現を目撃したという近所の商店の店主は、「太陽が歌った」と意味不明のことを言った。そして、彼の顔にはなぜか日焼けの跡が残っていた。
インディアナポリスの航空管制センター。その夜、民間航空機の航行状況を監視していた管制官は、複数のパイロットから同時にUFO(未確認飛行物体)の報告を受けた。飛行物体は高速で民間機すれ違うが、常識の範囲を超えたその現象について、パイロットも管制官も正式に報告することができなかった。
インディアナ州マンシー。ある家の子供部屋。上空に現れた不思議な光と共にオモチャがひとりでに動き出した。オモチャの騒ぎに目を覚ました幼い少年バリーは何かに誘われるように外に飛び出していった。母親のジリアンは窓から外で走り回っているバリーを見つけ、あわててその後を追った。
同じ町に家族と暮す電気技師のロイ・ニアリーは、電話で停電の報告を受けた。ロイはさっそく、現状を確認するために現地へ向けて車を走らせた。その途中、ロイの頭上に突然、まばゆい光が降り注いだ。光は周囲の物を激しく振動させると、しばらくして消えた。しばらく茫然としていたロイだったが、我に返ると光の後を追った。
光を追っていたロイの車の前にバリー少年とジリアンが飛び出してきた。ロイは車を急停車させ、二人の無事を確認。その時、二人の目の前を発光した物体がすり抜けていった。バリーは物体を指し、「アイスクリーム」と叫んだ。物体を追跡かるパトカーに、ロイも車で続いた。だが、オハイエ州境を越えた辺りで、アイスクリーム型のUFOは車道から崖に飛び出し、空の彼方へと消えていった。
午前四時。帰宅したロイは、寝ていた妻ロニーと三人の子供たちを起し、自分の見てきたことを興奮しながら話した。その時、ロイは、妻の指摘で顔半分が日焼けしていることに気付いた。だが、ロイは構わずに、眠そうにしている妻と子供たちを無理矢理、車に乗せ、UFOの消えた崖へ再び向かった。UFOに夢中になるあまり、そのまま会社をサボったロイは会社からクビを言い渡された。
モンゴルのゴビ砂漠。そこに例のプロジェクトの一団の姿があった。彼らが砂の上に見たものは、海洋で遭難したはずの客船コトパピ号の巨体だった。続いて、一行の向かった先は、インド北部ダルムサーラ。地元の住民が唱えている五音音階の旋律についての調査が目的だった。ラーコムの「音階がどこから来たのか」という問いに対し、地元民たちはいっせいに天を指差した。
国境付近の例の崖には、UFOの来訪を待ち望む人々が溢れ返っていた。もちろん、その中にはロイの姿もあった。彼がUFOを見に来たジリアンと再会したその時、二つの光が崖の向こうの空に現れた。だが、近づいてみるとそれは軍のヘリだった。ヘリはロイたちの期待を打ち砕くように通り過ぎていった。
ゴールドストーン電波観測局。宇宙より一定のパターンを持つ信号が受信された。それは地球外生命体からのメッセージに間違いなかった。報告を受けたローリンは、信号の最初二つのパルスが経緯度を示していると推測し、ワイオミングのある場所を特定した。
ある夜、ジリアンの家がオレンジ色の光に包まれた。あの日にも増して、建物は激しく振動した。ジリアンはバリーが連れて行かれないように捕まえていた。だが、バリーはジリアンの手を振り解き、外に出て行ってしまった。バリーはそれきり戻ってこなかった。
翌日、ジリアンがバリーの捜索願いを届け出たため、マスコミは大騒ぎになった。一方、軍はUFOの目撃者を参加させて説明会を開くが、UFOの存在する確証については全面的に否定したのだった。その頃、プロジェクト・チームはワイオミングで行なわれる実験の準備の最中だった。彼らは機材を積み込んだトレーラをそれとわからないようカモフラージュし、現場に人が寄り付かないようデマを流すことも計画した。
UFOを目撃してからというもの、ロイはなぜか、山のような形に取り付かれるようになっていた。家族が心配するのを尻目に、粘土の山を作りつづけるロイ。彼にもなぜその形が気になるのか理解できていなかった。一夜明けると、ロイはもうこれ以上、UFOのことは考えないことを決心し、粘土の切り崩しにかかった。だか、山の頂上を切り取った時、その形がロイの心を一瞬にして奪い去った。彼は、家族の声に耳も貸さず、庭の植木を引っこ抜き、花壇の土を家の中へ放り込んだ。ロニーは夫がついに狂気にとらわれたと思い、子供たちを連れて逃げてしまった。
ロイの家のリビングに天井まで届くほどの山が立った。その時、ロイは、たまたまつけていたテレビのニュース番組に映し出されたある映像に釘付けになった。ニュースは、列車事故の影響で積載されていた有毒ガスが撒かれたというものだったが、事故現場のデビルズ・タワーがまさにロイのイメージしていた山そのものだったのだ。
ロイは、避難勧告の出されている地元の町ムーアクロフトに向かい、同じく山のイメージに導かれてきたジリアンと駅で合流した。二人はレンタカーでデビルズ・タワーを目指した。だが、あと一歩というところで、防毒スーツに身を包んだ兵士たちに見つかってしまった。ロイはラーコムとローリンから事情聴取を受けることになった。ロイはラーコムの「何を求めて来た?」という質問に対し、「答えを」と叫んだ。
ラーコムは、ロイが何かを知ってる信じて実験に加えようするが、秘密主義の軍の責任者ウォルシュ少佐に断固反対された。ロイとジリアン、そして、彼らと同じような経緯でここへ導かれてきた一般市民たちは、軍によって強制退去させられようとしていた。有毒ガスがデマだと気付いたロイは、兵士の見ていない隙を突くと、ジリアンを連れて逃げ出した。彼らはデビルズ・タワーを目指して走った。軍のヘリの追跡をうまくかわし、山腹を登り続けたロイとジリアンは、夕暮れ時にタワーの反対側に到達した。タワーの向こう側には滑走路と実験設備が設けられており、今まさに人類初の試みが開始されようとしていたところだった。
ロイとジリアンの背後から、あの日、目撃したのと同じUFOが飛来してきた。UFOが滑走路の上に静かに停止すると、ラーコムらプロジェクト・チームは特殊なスピーカーを通して例の五音音階を発した。それに応え、UFOも同じ旋律を繰り返して人類に対して返した。こうして、人類と地球外生命体のファースト・コンタクトが実現したのだった。感動的な体験に歓声を上げるラーコムたち。山腹で一部始終も見ていたロイとジリアンも感激に打ち震えてキスを交わした。
いったん空に消えたUFOだったが、今度はUFOの母船が滑走路の上に降りてきた。その光輝く船体の美しさに、人類はしばし言葉を失い立ち尽くした。五音音階の合図を交し合った後、母船の下部が開き、その中から第二次大戦当時の空軍兵士ら、これまでに行方不明になっていた人々が現れた。山を降りてきたジリアンもバリーと再会を果たした。最後に手足の長い異星人に現れ、続いて、子供のような姿をした異星人たちが降りてきた。ラーコムはいつのまにか近くまで来ていたロイと感動を分かち合った。
人類と異星人の交換が行なわれることになり、人類側からの代表者にはロイも加わることにした。ロイたちが母船に乗り込んだ後、ラーコムは異星人のリーダーと五音階を現した手話で挨拶を交わした。異星人のリーダーは人類に優しく微笑みかけると、母船を出発させたのだった。



キャスト
ロイ・ニアリー
Roy Neary
リチャード・ドレイファス
Richard Dreyfuss
ロニー・ニアリー
Ronnie Neary
テリー・ガー
Teri Garr
ジリアン・ガイラー
Jillian Guiler
メリンダ・ディロン
Melinda DiLlon
バリー・ガイラー
Barry Guiler
ケリー・ギャフィ
Cary Guffey
デヴィッド・ローリン
David Laughlin
ボブ・バラバン
Bob Balaban
農夫
Farmer
ロバーツ・ブロッサム
Roberts Blossom
チーム・リーダー
Team Leader
メリル・コナリー
Merrill Connally
ベンチリー少佐
Major Benchley
ジョージ・ディセンゾ
George DiCenzo
ロバート
Robert
ランス・ヘンリクセン
Lance Henriksen
ワイルド・ビル
Wild Bill
ウォーレン・ケマーリング(ウォーレン・J・ケマーリング)
Warren Kemmerling (Warren J. Kemmerling)
プロジェクト・リーダー
Project Leader
J・パトリック・マクナマラ
J. Patrick McNamara
クロード・ラコーム
Claude Lacombe
フランソワ・トリュフォー(フランソワ・トリュフォー)
Francois Truffaut (François Truffaut)

スタッフ
撮影
director of photography
ヴィルモス・ジグモンド,A.S.C.
Vilmos Zsigmond, A.S.C.
監督/脚本
written & director by
スティーヴン・スピルバーグ
Steven Spielberg
製作
produced by
ジュリア・フィリップス
Julia Phillips
マイケル・フィリップス
Michael Phillips
撮影(追加アメリカ・シーン)
director of photography of additional American scenes
ウィリアム・A・フレイカー,A.S.C.
William A. Fraker, A.S.C.
撮影(インド・シーケンス)
director of photography of India sequence
ダグラス・スローカム,A.S.C.
Douglas Slocombe, A.S.C.
美術
production designer
ジョー・アルヴス
Joe Alves
特殊撮影効果
special photographic effects by
ダグラス・トランブル
Douglas Trumbull
音楽
music by
ジョン・ウィリアムズ
John Williams
編集
film editor
マイケル・カーン,A.C.E.
Michael Kahn, A.C.E.
制作補
associate producer
クラーク・ペイロウ(クラーク・L・ペイロウ)
Clark Paylow (Clark L. Paylow)

プロダクション
提供
presentation
コロムビア
Columbia
協力
in associationn with
EMI
EMI
製作
production
ジュリア・フィリップス
Julia Phillips
マイケル・フィリップス
Michael Phillips