元シークレットサービスと元アメフトのスター選手。
人生の敗北者二人がアメフト賭博に絡む陰謀に立ち向かって姿を描く。

ラスト・ボーイスカウト

原題THE LAST BOY SCOUT
製作年1991 年
製作国アメリカ
上映時間105 分
色彩カラー



解説
『ダイハード』で一躍スターに仲間入りしたブルース・ウィリスの主演作。人気者になって以降、ウィリスは似たようなアクション作にいくつも出ている。同種の作品の中にあって、本作は地味なタイトルも手伝って、埋もれがちではあるが、『ダイハード』に次ぐと言ってもいいほどの面白い作品に仕上がっている。
スターの出演作のメリットのひとつとして、各方面の才能を結集させることができるということがある。もちろん、結集した才能が上手く機能していなければ意味がないが、その点、本作はうまくいっているようだ。硬派なアクションを得意とする監督トニー・スコットと、「リーサル・ウェポン」シリーズの脚本家シェーン・ブラックが、ハードボイルド調の物語を見せ、観客の期待を裏切らなかった。
だだ、とにかく爆発シーンが多い作品ではある。このころのアクション作の特徴でもあるが、なにかにつけては爆発炎上である。当時はそういった作品ばかりがもてはやされたので、その派手さばかりが注目されていたが、だからこそ、これまで見過ごされてきたストーリーも楽しみたい作品の一つである。
プライドを捨てきり、自分のことを“負け犬”と呼ぶ主人公は、腐ったフィリップ・マーロウみたいな人物。過去に栄光を持ちながらも、今では、自分のことを嫌う妻と娘には罵声を浴びせ、恨みのある上院議員には込無言電話をかけるという最低男。『ダイハード』のマクレーン刑事は、悪態はついても人の良さがにじみ出ていたが、それとは一線を画す酷い性格だ。そんな彼と手を組むことになるのは、二度も恋人を失った元アメフト・スター。今では、怪我の傷みを抑えるために使いはじめた麻薬に溺れている、やはり負け犬だ。
落ちるところまで落ちた二人が、殺人事件をきっかけに陰謀に立ち向かっていく姿が力強く描かれていくのだが、捜査を通し、それぞれに失っていたものを次第に取り戻していく様には胸が熱くなる。それは、妻や娘の愛だったり、プロ・フットボーラーとしての誇りだったり……。そして、ラストには、冒頭の主人公から受けた不愉快な印象からは思いも寄らない感動につつんでくれる。
コミカルな役の多いウィリスが、ここで同情の余地のない男を演じても、ギャグに陥っていない。それは、彼自身の健闘と言えるかもしれないが、相棒に扮したウェイアンズ兄弟の一人デイモンが比較的コミカルなため、相対的にシリアスに見えるようだ。いずれにして、キャスティングの妙である。悪役の中では、主人公がかわいくに見えるほど冷徹非道な殺し屋を演じたテイラー・ネグロンにも注目したい。



ストーリー
アメフトチーム“スタリオン”の選手ビリー・コールがゲーム中にピストルで相手選手を撃ち、その場で自ら命を絶つという事件が起こった。コールにプレッシャーをかけていたのは、“スタリオン”オーナー、マーコン・シェリーであったが、その事実が明るみに出ることはなかった。
私立探偵ジョーが自らを“負け犬”と呼ぶには理由があった。彼は、かつてシークレットサービスに属していて、大統領を守ったこともあった。だが、彼の誇り高い経歴も、ベイナード上院議員の護衛にあたった時に途絶えてしまった。ジョーは、ベイナードがホテルの部屋で女性に虐待を加える現場を目撃してしまったのだ。ベイナードの命令でジョーは即刻クビになった。
ある朝、ベガスで大マケしたジョーが、仕事の相棒で親友のマイクから仕事の依頼を受けるため、妻と娘の待つ家に帰ってきた。ジョーと妻サラの間はすでに冷え切っていて、十三歳になる娘のダリアンもサラに倣ってジョーのことを憎んでいた。もはや家庭は崩壊寸前であった。いつものように、サラと悪態をつきあつていたジョーは、部屋の様子がおかしいことに気付き、探偵の経験と勘から部屋のどこかに男が隠れていることに見抜いた。ジョーがクローゼットに銃を向けて秒読みを開始すると、中から飛び出してきたのはマイクだった。サラが親友と浮気していることを知っても、すでに心の枯れたジョーに怒りになかった。ただ、自分の馬鹿さ加減にあきれていた。ジョーはマイクを家の前まで送った。マイクが車に乗ったその瞬間、ジョーの目前で車に仕掛けられていた爆弾が炸裂した。マイクは即死だった。
マイクが寄越した最後の仕事はストリッパーの護衛だった。マイクはスリップ小屋に向かい、依頼人のコリーの側についていたが、そんな彼にからんでくる黒人の男がいた。男は“スタリオン”の元クォーターで、麻薬で身を持ち崩し現役を退いたジミー・テックスだった。コリーの恋人であるジミーは、自分を差し置いて護衛についたジョーのことが気に入らなかったのだ。ジョーはジミーのことを軽くあしらうと、店の裏口から一人で外に出た。その途端、待ち伏せていた二人組みの男に頭を殴りつけられ、ジョーはその場に昏倒した。一方、ジョーはコリーを連れて夜のドライブに出ていたが、彼の車の行く手を別の車が塞いだ。意識を取り戻したジョーが駆けつけたときには、一歩遅く、コリーは不審な車から降りてきた男たに射殺されてしまった。
そのまま警官に連行されたジョーとジミーは、警察で一夜を明かすことになった。疑いが晴れて釈放されたジョーは、事件の真相を探るため、ジミーの案内でコリーのアパートを訪ねた。ジミーはアパートの秘密の隠し場所から封筒を発見した。封筒に入っていた写真にはマーコンとベイナードが写っていた。写真と一緒に入っていた盗聴テープを聴いたジミーは、コリーが生前、誕生プレゼントを用意していると話していたとこを思い出した。コリーは、ジミーをレギュラーに復帰されるため、マーコンとベイナードを脅迫していたのだった。ショックを受けたジミーはひとりでコリーの車で帰ろうとしたが、マイクの事件を思い出したジョーが止めに入った。ジョーの思ったとおり、コリーの車にはプラスチック爆弾が仕掛けられていた。と、その時、ジョーとジミーの前に不審な男たちが現れ、コリーの封筒を要求していた。なかなか封筒を渡さないジョーにしびれを切らした男は、トランクに銃をぶっぱなした。その瞬間、中のプラスチック爆弾が炸裂。ジョーとジミーは無事だったが、証拠の盗聴テープは車と一緒に焼失してしまった。
ジョーは、コリーの復讐を誓うジミーと引き続き手を組んで捜査を続けることにし、いったん自宅に戻った。居間はダリアンがいたが、パーティに行くことを禁じられたことを怒っていて、父ジョーには悪態をつくばかり。娘の発した「クズ」という言葉に反応したジョーも、むきになって反撃した。そんな親子の様子を見ていたジミーは、かつて自分には妻がいたが、臨月中に事故で失っていたことを打ち明けた。ジョーは、「人生はクソ」だと言うジミーが自分の同類であることを知るが、その直後、彼が台所で麻薬をやっているところを見てしまった。激しく憤ったジョーはジミーを家からたたき出した。ジミーはドアの前まで送ってくれたアマンダから、ジョーが自分の大ファンだということをこっそり教えられた。
翌日、ジミーは町で再び不審な男に襲われ、殺されかけた。一方のジョーも自宅を訪ねてきた殺し屋マイロに襲われて、気絶。車で連れ去られた。意識を取り戻したジョーの前に現れたのはマーコンだった。アメフト賭博の合法化をもとめていたマーコンは、法外なワイロを要求するベイナードが邪魔になり、彼を殺すことにしたのだという。そして、そのスケープゴートにジョーを選んだのだった。その頃、警察はマイク殺しをジョーの仕業と睨み、ジミーに居場所を聞き出そうと躍起になっていた。釈放されたジミーは女友達から聞き出したベイナードの家に向かった。だが、彼のあとをこっそりダリアンがつけていきていた。ジミーがダリアンを追い返そうとしていた時、ベイナードのボディガードが車で出発した。ジミーはやむを得ず、ダリアンと一緒にボディガードの車の後を追った。
マイロは、取引現場に現れたベイナードのボディガードに、600万ドルと見せかけて爆弾入りの鞄を渡した。受け渡しにはジョーを立会わせ、その証拠写真で彼に濡れ衣を着せる手はずだった。だが、ボディガードをつけてきたジミーとダリアンがマイロの手下に捕まったことで事態は急変した。手下に連れてこられた二人の姿を見て、焦るジョー。だが、ダリアンが差し出した人形の中に仕込まれた銃で手下たちを射殺し、窮地を脱した。ジョーはジミーとダリアンを車に乗せ、マイロたちの車とチェイスを展開。追っ手をまいたジョーはダリアンを近くの家に預けると、ジミーと一緒にベイナードのボディガードの車を追った。
どうにかベイナードのボディガードの車に追いつき、爆弾入りの鞄を取り戻したジョーだったが、その時、死んだと思われていたマイロから電話がかかってきた。ダリアンがマイロの人質にとらていた。スタジアムに向かったジョーとジミーは、オーナー室で待っていたマーコンに会った。マーコンの横にはダリアンがいた。マーコンがジミーを殺そうとしたため、ジョーは600万ドルと盗聴テープの存在を仄めかした。すぐに盗聴テープが存在しないことがマーコンに見抜かれるが、ジミーも咄嗟に判断で、金隠したロッカーの鍵を持っていると叫んだ。そして、鍵と見せかけ、プラスチック爆弾の破片を暖炉に投げ込んだ。爆弾が炸裂した瞬間、ジョーとジミーとダリアンはオーナー室を飛び出した。同時に部屋を飛び出していたマーコンはジョーたちの乗ってきた車に鞄を見つける、金が入っていると思い、持ち帰っていった。
観客席に向かったジョーは、ベイナードを狙撃しようとしているマイロを探した。一方、フィールドに飛び出したジミーは、選手から奪い取ったボールでベイナードの注意をひき、彼を凶弾から守った。ジョーは高台にいたマイロを発見して掴みかかった。だが、騒ぎを聞きつた警備によってマイロは射殺した。その様子を見ていたスタジアムの観客たちは衝撃的な出来事に静まり返えるが、ジョーが咄嗟に見せたおどけたダンスを見て、再び沸きかえったのだった。ジョーがスタジアムの外に出ると、彼が嫌がらせにきたと勘違いしたベイナードに食って掛かられた。ジョーは何も知らないベイナードを一発殴った。一方、マーコンは自宅で爆弾の入った鞄を開き、爆死していた。
ダリアンとサラは今回の事件での活躍でジョーを見直し、家庭にも平穏が訪れた。そして、ジョーはジミーを新しい仕事に相棒として迎えることにしたのだった。



キャスト
ジョー・ヘレンベック
Joe Hallenbeck
ブルース・ウィリス
Bruce Willis
ジミー・ディックス
Jimmy Dix
デイモン・ウェイアンズ
Damon Wayans
サラ・ヘレンベック
Sarah Hallenbeck
チェルシー・フィールド
Chelsea Field
シェルドン・マーコン
Sheldon Marcone
ノーブル・ウィリンガム
Noble Willingham
マイロ
Milo
テイラー・ネグロン
Taylor Negron
ダリアン・ヘレンベック
Darian Hallenbeck
ダニエル・ハリス
Danielle Harris
コリー
Cory
ハル・ベリー
Halle Berry
マイク・マシューズ
Mike Matthews
ブルース・マッギル
Bruce McGill
アリー・サグ
Alley Thug
バディア・ジョーラ
Badja Djola
チェット
Chet
キム・コーツ
Kim Coates
ベイナード上院議員
Senator Baynard
チェルシー・ロス
Chelcie Ross
ベッサロ
Bessalo
ジョー・サントス
Joe Santos
マッコスキー
McCoskey
クラレンス・フェルダー
Clarence Felder
ビッグ・レイ・ウォルストン
Big Ray Walston
トニー・ロンゴ
Tony Longo

スタッフ
キャスティング
Casting
マリオン・ドーティ
Marion Dougherty
衣装デザイン
Costume Designer
マリリン・ヴァンス=ストレイカー(マリリン・ヴァンス)
Marilyn Vance-Straker (Marilyn Vance)
音楽作曲/指揮
Music Composed and Conducted by
マイケル・ケイメン
Michael Kamen
共同製作
Co-Producer
スティーヴ・ペリー
Steve Perry
編集
Film Editors
スチュワート・ベアード,A.C.E.
Stuart Baird, A.C.E.
マーク・ゴールドブラット,A.C.E.
Mark Goldblatt, A.C.E.
マーク・ヘルフリッチ
Mark Helfrich
美術
Production Designer
ブライアン・モリス
Brian Morris
撮影
Director of Photography
ウォード・ラッセル
Ward Russell
製作総指揮
Executive Producers
シェーン・ブラック
Shane Black
バリー・ジョゼフソン
Barry Josephson
脚本
Screenplay by
シェーン・ブラック
Shane Black
原案
Story by
シェーン・ブラック
Shane Black
グレッグ・ヒックス
Greg Hicks
製作
Produced by
ジョエル・シルヴァー
Joel Silver
マイケル・レヴィ
Michael Levy
監督
Directed by
トニー・スコット
Tony Scott

プロダクション
提供
Presents
ゲフィン映画
Geffen Pictures
製作
Production
シルヴァー映画
Silver Pictures