今度の敵はコンピューター?
万能プログラムで世界を操ろうとする悪党一味とスーパーマンの闘いを描く。

スーパーマンV
電子の要塞

原題SUPERMAN III
製作年1983 年
製作国イギリス
上映時間125 分
色彩カラー



解説
「007」シリーズが『消されたライセンス』を最後にしばらく中断されたことには冷戦が関係していた……かどうかは定かではないが、“東側”という仮想敵を失って以降、ボンドの適役を探すのに苦労をしているようだ。それはスーパーマンでも同じこと。前作『冒険編』で宇宙で最悪の敵を倒してしまい、もはや宇宙でいちばん強い存在となってしまった今、いったい彼とわたり合える敵役なんてありえるのだろうか?
冒頭に登場する冴えない黒人の男ゴーマン。彼がストーリー全体の重要なキーパーソンである。何をやっても上手くいかず途方に暮れていた時、彼は突然、コンピュータ・プログラマーの才能を開花させる。しかし、彼の才能は悪党実業家ウェブスターの目にとまり、コンピューターによって世界を操るいう恐ろしい計画に利用されることに――悪賢こいがトボけたところが憎めないゴーマンが前作までの世界観をガラリと変える。社長の命令だからというので、意味もよく理解しないままに悪事に協力させられる様にはサラリーマンの悲哀があって良い感じなのだが、「スーパーマン」ではなく別の風刺コメディを観ているようでもある。
前半部分はゴーマンの物語に偏り気味だが、一方のクラークのほうはというと、こちらはこちらでロマンスが展開していく。故郷で再会した初恋の女性に頼まれ、息子の誕生会にスーパーマンが出席するというくだりは、ハメをはずし過ぎなようだか、ゴーマンのキャラクターを強調したところも合わせて考えると、第一作のリアリティを潔く切り捨て、コミックとして割り切っているようだ。コミック色は後半にかけてさらに濃くなっていく。ゴーマンに渡された物質の作用で意地悪になったスーパーマンが世界各地でイタズラし放題というくだりは、良く言えばサービス精紳のたまもの。さらに、昼間から酒をかっくらって大暴れするというギャグすれすれの場面はある意味必見だ。
邦題の『電子の要塞』を指すのは、ゴーマンの設計した万能コンピュータで、クライマックスではこのコンピュータとスーパーマンの闘いが描かれる。敵は人間ではなく機械だった、というところに意外性があり、さすがのスーパーマンも捉えどころのないものを相手にしては闘いにくく、思わぬ苦戦を強いられる。しかし、最大の敵が万能コンピュータではないことは、クライマックスを観るまでもなく明らかだろう。正義を失ったスーパーマンの心の葛藤は孤独なヒーローを描いたシリーズの面目躍如であり、スクラップ工場でのスーパーマン対クラークの壮絶な戦いは、中盤までのユルさを吹き飛ばすほど胸を熱くする名場面だ。そしてこれが、“スーパーマンとわたり合える敵は何か?”という問いに対する答えなのである。
『スーパーマン4 最強の敵』に続く。



ストーリー
どんな職業についても仕事が覚えられず、直ぐにクビにされてしまうガス・ゴーマンは目下失業中。なんのとりえのなかった彼だったが、コンピュータをひとたび学ぶと、隠されていた才能を開花させたのだった。
ゴーマンはコンピュータ企業ウェブスコウにプログラマとして晴れて入社。だが、給金が約束されていた額より低いことが不満だった。悪知恵を働かせたゴーマンはコンピュータを不正操作し、全社員から切り捨てられた給金の端数を集めて自分の口座に入金させた。
スーパーマンの正体を隠し、冴えない新聞記者として働くクラーク・ケント。ロイスがバミューダへ休暇に行っている間、クラークはカメラマンのジミーを連れて、故郷スモールビルへ取材に向かっていた。その道すがら、クラークたちは化学工場の火災に遭遇。工場内には熱で腐食することで爆発を起こす酸があり、予断を許さない危険な状態だった。クラークはスーパーマンに変身すると、近くの湖の水を冷たい息吹で凍らせ、工場の上に雨として降らせた。火災は沈下するが、スクープ目当で工場に飛び込んだジミーが怪我を負った。
ジミーが治療でメトロポリスに戻ってしまったため、クラークは一人で故郷に向かった。高校の同窓会に出席したクラークは、初恋の相手であるかつての学園の女王ラナ・ラングと再会した。すでに甲斐性なしの亭主と離婚していたラナはクラークと意気投合。後日、一緒出掛けたピクニックでは、ラナの一人息子のリッキーに懐かれたクラーク。まんざらでもない彼はリッキーにせがまれるまま、スーパーマンを誕生日に招待することを約束させられてしまうのだった。
ウェブスコウの社長ロス・ウェブスターは社員の横領に気付き、直ぐにその犯人ゴーマンを特定した。だが、ウェブスターの目的は犯人を追及することではなかった。彼はゴーマンの天才的な才能を買い、彼に特命を与えたのだ。ウェブスターはコーヒー価格の操作を企んでいて、それに従わないコロンビアのコーヒー市場へコンピュータの力で大打撃を与えようというのである。
コロンビアへの攻撃工作の役目を負ったゴーマンはスモールビルにあるウェブスコウの出張所を訪ねた。コンピュータの発信源の追跡を避けるためである。ゴーマンは所員のブラッドを酒で眠らせると、所内のコンピューターから気象衛星の地球探査プログラムを操作し、コロンビア一帯に大嵐を引き起こした。
ウェブスターは計画の成功を秘書のローレライと祝っていたが、スモールビルから戻って来たゴーマンから思わぬ報告を受けることになった。コロンビアの被害がスーパーマンの活躍によって最小限に食い止められたというのだ。ウェブスターは、次なるオイル市場独占計画にもスーパーマンが邪魔になると考えると、唯一の弱点であるクリプトンの隕石“クリプトナイト”と同じ成分の物質を合成することをゴーマンに命じた。クリプトンの隕石を取り寄せて分析したが、一部不明な物質が含まれていた。ゴーマンは思いつきで、不明な物質の代わりにタールを追加し物質を合成した。
スーパーマンは約束を守り、リッキーの招待を受けた。そこへ、ゴーマンが登場。スーパーマンはプレゼントとして差し出された“クリプトナイト”を受け取ってしまた。だが、ゴーマンの合成した“クリプトナイト”は不完全だったため、スーパーマンの肉体にダメージを与えない代わりに、彼の心に異変をもたらした。スーパーマンは正義のために活躍することに消極的になった。ピサの斜塔を真っ直ぐにするといった悪戯をするようになり、性格も次第に意地悪くなっていった。
一方、ウェブスターは世界中のタンカーを北大西洋に足止めさせ、オイル市場を操作するという計画を実行に移していた。その時、タンカーの異常な動きに気付いたスーパーマンが駆けつけた。当然、船長たちはスーパーマンが正しい進路に導いてくれることが期待した。だが、スーパーマンは船倉を破壊して石油を海へ流出させるという悪辣な行動に出たのだった。
スーパーマンの邪魔が入らなかったため、ウェブスターの作戦は一応の成功を納めた。ゴーマンは計画に協力したことに対する報酬は求めなかったが、代わりに密かに設計していた万能コンピュータの実現をウェブスターに頼んだ。ゴーマンの構想を気に入ったウェブスターはさっそく、グランドキャニオンにコンピュータの建造を開始した。
正義を忘れたスーパーマンはスモールビルの酒場で昼間から酒を飲んでいた。酒場の前を通りかかったビリーは、大暴れしているスーパーマンを目の当たりにしてしまった。だが、ビリーはそれでもスーパーマンを信じ、「スランプになっているだけだ」と言って彼を擁護した。そのビリーの言葉にスーパーマンは突き動かされ、スクラップ工場にやってきた。それと同時に、彼の体の中から彼の良心であるクラークが抜け出てきた。クラークは自分の中の邪心“スーパーマン”に立ち向かっていた。
自分自身との熾烈を極めた死闘に勝利したのはクラークだった。再びスーパーマンに変身したクラークはタンカーから流出した石油を元通りにすると、敵を倒すべくグランドキャニオンへ向かった。完成した万能コンピュータに陣取ったウェブスターたちは、防衛システムを駆使してスーパーマンを返り討ちにしようとしていた。だが、万能コンピュータを作りたかっただけのゴーマンは、スーパーマンを倒すことには乗り気ではなかった。
防衛システムのミサイル攻撃をかいくぐり、万能コンピュータの前に立ちはだかったスーパーマン。だが、本物の“クリプトナイト”をウェブスターに浴びせられ、みるみる力を奪われていった。ゴーマンは、ピンチに陥ったスーパーマンを目の当たりにすると、彼がかわいそうになり、ウェブスターを止めようとした。ウェブスターにオペレーションルームから追い出されたゴーマンだったが、心臓部のネジを一つ緩め、コンピュータの機能を低下させた。
ゴーマンはスーパーマンを救うことが出来たが、ネジをいじったことが原因でコンピュータが暴走を起こした。コンピュータ、ウェブスターの妹ベラを機械人間に変身させると、ウェブスターとローレライを身動き取れなくしてしまった。機械というつかみ所のない相手に苦戦を強いられたスーパーマンは機転を利かせ、この間の工場から借りてきた酸をコンピュータの内部に仕掛けた。酸は熱で大爆発を起こし、コンピュータを木っ端微塵にした。
スーパーマンは瓦礫の中から自分を助けてくれたゴーマンを救い出した。そして、ゴーマンを工場に連れて行くと、彼をここで雇ってくれるよう職員に頼んだ。こうして、スーパーマンは正義のヒーローとして完全復活を遂げた。もちろん、ピサの斜塔を元通り傾けることも忘れなかった。



キャスト
スーパーマン/クラーク・ケント
Superman/Clark Kent
クリストファー・リーヴ
Christopher Reeve
ガス・ゴーマン
Gus Gorman
リチャード・プライヤー
Richard Pryor
ペリー・ホワイト
Perry White
ジャッキー・クーパー
Jackie Cooper
ジミー・オルセン
Jimmy Olsen
マーク・マクルーア
Marc McClure
ラナ・ラング
Lana Lang
アネット・オトゥール
Annette O'Toole
ベラ
Vera
アニー・ロス
Annie Ross
ローレライ
Lorelei
パメラ・スティーヴンソン
Pamela Stephenson
ロス・ウェブスター
Ross Webster
ロバート・ヴォーン
Robert Vaughn
ロイス・レーン
Lois Lane
マーゴット・キダー
Margot Kidder

スタッフ
音楽
Music by
ケン・ソーン
Ken Thorne
オリジナル音楽作曲
Original Songs Composed by
ジョルジョ・モロダー
Giorgio Moroder
編集
Edited by
ジョン・ヴィクター・スミス(ジョン・ヴィクター=スミス)
John Victor Smith (John Victor-Smith)
製作補
Associate Producer
ロバート・シモンズ
Robert Simmonds
脚本
Screenplay by
デイヴィッド・ニューマン
David Newman
レスリー・ニューマン
Leslie Newman
製作総指揮
Executive Producer
イリヤ・サルキンド
Ilya Salkind
製作
Produced by
ピエール・スペングラー
Pierre Spengler
監督
Directed by
リチャード・レスター
Richard Lester
財政サービス
Financial Services
ハワード・R・シャスター
Howard R. Schuster
プロダクション・エグゼクティブ
Production Executive
ポウリーン・コウテレノ
Pauline Couteleno
撮影
Director of Photography
ロバート・ペインター
Robert Paynter
美術
Production Designer
ピーター・マートン
Peter Murton
特殊効果/ミニチュア監督
Director of Special Effects And Miniatures
コリン・チルヴァース
Colin Chilvers
オプチカル/視覚効果監修
Supervisor of Optical & Visual Effects
ロイ・フィールド,B.S.C.
Roy Field, B.S.C.
飛行/第二監督
Flying And 2nd Director
デイヴィッド・レイン
David Lane
助監督
1st Assistant Director
ダスティ・サイモンズ
Dusty Symonds
キャスティング
Casting by
デビー・マクウィリアムズ
Debbie McWilliams
マイク・フェントン
Mike Fenton
ジェーン・ファインバーク
Jane Feinberg
正面投射“ゾプティック・システム”顧問
Front Projection by the Zoptic System Consultant
ゾラン・ペリシック
Zoran Perisic
製作経理
Production Accountant
ジョン・トレイ
John Trehy
オリジナル“スーパーマン”テーマ曲
Original Superman Themes by
ジョン・ウィリアムズ
John Williams

提供
Presents
アレキサンダー・サルキンド
Alexander Salkind
製作
Production
アレクサンダー&イリヤ・サルキンド
Alexander and Ilya Salkind